2-4(21) 海軍基地にて
雪風の火器管制にロックをかけ、船体を蹴る。修理に来たわけじゃ無いから、酸素濃度は大丈夫でも無重力状態だ。手すりを目指して壁をければ、その方向にスーッと飛ぶ。
ドックのドアに辿り着きドアを開けようとしたその時、向こう側に誰かいたのかドアが勢いよく開いた。
「…いてぇ」
「おっと、ごめんなさいっす」
声に聞き覚えがある。入港する時に話した管制官だ。
「もうちょっと気を付けてくれ」
「いやぁ〜自称手動航行の艦を早く見てみたくて」
自称も何も事実なんだが。それにこっちは到着の確認しなきゃならんのだよ。
「遊んでる暇はない。見せるものでもない」
「いーじゃないっすか、けちー」
「とにかく仕事が先だ。103警備の艦隊司令はどこにいらっしゃる?宛先がそこなんだ」
「べシーちゃんっすか?後でその艦を見せてくれる、っていうなら案内してあげてもいいっすよ?」
普段はダラダラとしているべシーさんのことだ。聞いても答えなど返ってこないと思っていたが、こいつは居場所を知っているらしい。ちゃん呼びとは驚いた。
面倒ごとが嫌いなあの人のことだ。自分で見つけようとすると、きっととんでもなく時間がかかるだろう。艦隊司令部にいないってことしか予想がつかない。なんか癪だが、こいつと取引する方が賢いか。
「わかった、出港前でいいなら中を見せてやる。案内してくれ」
「やった!こっちっす!」
案内された先は、ベイスヘ中央の方角が見える、展望デッキだった。なんで海軍基地にそんなものが、と思うかもしれないが、職員の息抜きのためだったり、異常が発生した時の目視での確認、通信手段が限られた時の発光信号の送受信など、意外にも役割は多い。しかし、人工物の灯りのせいで星が見えない、ベイスヘ中央の方角が見える展望デッキには、先客は1人しかいなかった。
「ベシーちゃーん!」
「あれぇ?クロちゃんだ!わーい」
「クロちゃん言うなっす!」
べシーさんは観測ドームの中を漂っていた。このドームは天井が透明だから、宇宙を見るために上を向くのは首が疲れる。だから無重力で漂っていることは悪くない。でもスカートタイプの制服で浮かぶのはどうかと思う…
クロちゃんと呼ばれた管制官はリラックスしているべシーさんに飛びついた。勢いそのまま、空中でクルクル回っている。その姿を目で追いかけようとして、スカートを着ている人がいる事を思い出した。慌てて目を逸らし携帯端末の画面を眺める。はぁ、心臓に悪い…
2人はしばらくクルクルじゃれあい、その間に僕は培養肉についての知識を得た。
また間隔長くなっていくかもです…
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2024/02/03 投稿
 




