1-13(13)パトロール艦隊
警報と共に空間が歪み、巡洋艦と駆逐艦2隻、輸送艦が出てくる。パトロール艦隊、警備艦隊と呼ばれる、治安維持用の機動艦隊だ。
「壮観。これで到着が早ければ文句はないが」
【それを承知でこんな辺境で活動してるんだろ?】
「ぐうの音も出ない」
小さな要望を正論でぶっ潰したのは、もうほとんどの機能が復活している、元・囮巡洋艦の艦長だ。元、というのは今は僕と護衛艦隊の橋渡し役となっているからである。
【情報伝達は?】
「もう済ませてある。それにこの隊は顔馴染みなんだ」
輸送艦がカーゴハッチを開けるのを待ち、脱出ポッドを丁寧に投げ込んでいく。扱いが雑?どっちも頑丈だから問題はない。
【じゃ俺らはここでお別れか。またいつか】
「次は事故現場以外で会えるといいな」
護衛艦隊の傭兵たちは、律儀に護衛任務を続けるようだ。護衛対象はもちろん、脱出ポッドを積み込んだ輸送艦だ。
一方の僕は、サルベージ作業が残っている。ポッドとかを守らせていたタレットも回収すれば再利用できるし。
さてさて、顔馴染みとはいえ挨拶はしておいた方がいいよな。こんな辺境まで出張ってくれたんだし。
「こんなとこまで、ありがとうございます。べシーさん」
【まぁねぇ〜こっちも仕事だからくるけど〜、あんまり遠出したくないんだけど〜】
「ベイスヘに配属された時点で諦めてください。あそこの管轄広いんで」
ベイスへ海軍基地所属第103警備艦隊。その司令官のべシーさん。面倒くさがりなこの人が軍に入る経緯に、僕は若干関わっていた。
【警備艦隊は滅多に出動しないし、戦闘の主力にさせることも少ないから輸送艦より安全って言ってたのはどこの誰だっけ〜?】
「ダレデショウネー」
【君なんだけどー】
拾った脱出ポッドをベイスへまで持って行く途中、暇だから雑談しただけなんですけど。まさかそれだけで軍に志願して、しかも警備艦隊とはいえ艦隊司令になるとは思わなかった。
【まぁ、私らが来なかったら君はここで立ち往生だったんだからね〜少しは感謝してよ〜】
「それに関しては本気で感謝してます」
【ほんと!?じゃ頼み事聞いて】
「いやです」
どうせ碌なことじゃない。
【おっと、もう時間だ。本部から急かされちゃった】
「副官さんは優秀ですね。よく貴女をコントロールできている」
【そんなこと言わないでよ〜今度ベイスへ来たら食事でもしよ!じゃあ!】
一方的に約束して無線切って行っちゃった…あの人はほんとマイペースだから、でも仕事はできるんだよな。名前も知らない副官さん。頑張って手綱握ってください。
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2024/01/13 投稿




