1-12(12)敵対国家
あの前書きを毎回やるのはくどいと思った。
【にしても被害が大きすぎねぇか?】
巡洋艦の艦長は、情報共有という名の自慢を終えて、雪風と通信を繋いできた。のんびりしていていいのか聞いたら、今後を決めるのは上の仕事とのこと。それより僕と話して認識のすり合わせをしたいらしい。
「結局全く攻撃してこなかったフリゲートに索敵外からの実弾狙撃、まだ到着しないパトロール艦隊。異常なことが多すぎる」
【まだ救難信号流してんのか?】
「ああ。この脱出ポッドを運ぶには輸送艦が必要だ」
残骸を避け、弱い信号を頼りに小さな脱出ポッドを探す。
1、2個ならともかく、16個もの脱出ポッドを運ぶには輸送艦は絶対に必要だ。牽引装置があるとはいえ、雪風には荷が重すぎる。
【輸送艦なんてどこに…】
「パトロール艦隊に編成されているはず。無事なら、な」
【縁起でもねぇこと言うなよ…】
輸送艦の影に1個隠れてる。ほらほら〜怖くないよ〜。
怯えて出て来ないから、アトラクターで掴んで引っこ抜く。
【っていうかあいつら絶対、宙賊のふりした正規軍だろ。撃つだけ撃って追撃しないとか、どうあがいても赤字だし】
「ログ見た感じ、普通の輸送艦にも貫通弾使ってんだよ。マニュアルにこだわってる感じがする」
【…宙賊のマネが下手だな】
「ほんとそれ」
こっちが壊滅してるとはいえ、生存者がいて、しかも宙賊の「ふり」だってバレてるところが残念と言うかなんと言うか…
「でもフリゲートからの観測射撃ってことは、実弾やミサイルを撃ってきたやつは見せたくなかったんだな」
【フリゲートの母艦機能とか狙撃の精度・火力を見るに、海軍仕様の巡洋艦だと睨んでるぜ】
「ここと敵対ってことは共和国か?」
こういう時に情報に強い傭兵は頼もしい。
「でもそっちが運んでたのは燃料なんだろ?相手は何がしたかったんだ?」
【それはこっちが聞きたい。ただ沈められた、ってことは何かを鹵獲したいって感じでもねーし】
「…本当に燃料だけを運んでたのか?」
【それは思った。まぁこう言った積荷詐称は割とよくあるからなぁ】
まじか。なに運んでたんだよ。
【燃料持ちを片っ端から狩って、真綿で軍を絞めにかかってるって線は?】
「だったら災難だったな。割と情報収集してるけど、そう言った前例は聞いたことがない。つまりこの艦隊が最初の犠牲かもしれん」
脱出ポッドは集め終わった。大破したりしてるのはないから、犠牲者はいないだろう。艦の損害は酷そうだが。
【上がまとまったそうだ。残骸は所有権を放棄、そのサルベージ代で護衛分はチャラにしてほしいってさ】
「元は取れそうだから問題ない」
【じゃ成立な。待ってろデータ送ってやる】
本当は元が取れるかなんてわからないけれど、パトロールと護衛はこっちが勝手にやったことだ。それで代金を請求するのは間違っている、と僕は思う。それに重輸3隻の残骸(1隻は跡形残らず吹き飛んだ)でも多分元が取れる。十分だ。
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