1-1(1)いつもの日常
この小説は練習みたいなものです。急にやめるかもしれないです。投稿不定期、投稿後に編集するかもしれません。その上で辻褄が合わなかったりすることもあるかもしれませんが、読んでアドバイスや感想いただけると幸いです。
「あれかな?」
漆黒の宇宙。キラキラと星が光るこの空間は、生身の人間が一瞬で死ねる過酷な世界だ。その中を二隻の艦が漂っている。
片方は輸送艦だったのだろう。荷物カーゴや積み下ろし用ハッチの特徴的な形が見える。コンテナ曳航用の金具も付いているが、肝心のコンテナは見当たらない。その代わりに、右カーゴに小惑星が突き刺さっているのが見える。
この輸送艦は輸送任務のための四次元航行中、誤って「エーテル霧」に進入、小惑星帯にワープアウトしてしまったのだ。
密度の高い小惑星帯を抜けるための四次元航行中だったため、周辺には大量の小惑星があった。そのうちの一つがバイタルパートを直撃。近接防御タレットは、ワープアウト直後のラグにより作動しなかったことが確認されている。ともかく動力を失った輸送艦は、非常電力を用いて艦橋を射出。遭難信号を発信しながら漂流していたのであった。
そして今、輸送艦と共に漂うもう一隻は事故を起こしたわけではない。かといって宙賊や軍の類でもない。これは漂流艦などを回収する「サルベージ艦」である。
「そして僕はサルベージ艦『雪風』の艦長だ、ってね」
「雪風」は今、防衛ラインの外側を漂流艦(輸送艦)と同速で航行している。あまり近づかないのは、衝突コースと認識されて迎撃されるのを防ぐためだ。もっともバイタルパートを損傷した漂流艦に、迎撃できる余力があるかどうかは不明だが。
「宇宙局の識別番号まだかよ。こっちはもうついてるんだけど」
デブリや宙賊とAIに認識されないようにするため、「雪風」は宇宙局が設定する識別番号を待っている。これを待たずに肉薄して、防御タレットに撃破されてデブリにでもなったら洒落にならない。ミイラ取りがミイラになる訳にはいかないのだ。
「あーきたきた。設定…完了!」
やっと宇宙局から送られてきた番号を設定して、「雪風」は回頭する。防衛ラインを割り肉薄しても、輸送船からの攻撃はなかった。
「思ったより損傷が大きい。修理は無理だな。曳航するか…傷つけたくないんだがな…」
カメラドローンを使った漂流艦のスキャンデータを見て、運搬の手順を決める。曳航を嫌がっているのは、ロープ固定用の金具を漂流艦に設置する必要があるからだ。依頼にもよるが、艦はなるべく傷がない方がいい。たとえそれがバイタル抜かれている大破した艦であっても、だ。
金具を溶接し、「雪風」と漂流艦を繋ぐ。事故艦の信号を出しながら、「雪風」は四次元空間へ進入した。
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投稿 2023/03/05