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好きだったあの子からラブレターを貰ったのに、彼女はもう死んでいた。

作者: 西都 徹也

思い付きの小説。良かったら感想下さい。

 放課後の校舎裏に、好きな子の死体があった。


 人間だったころの名前は神崎美咲(かんざきみさき)。オランダ人のクォーターで二重瞼で高い鼻を持つ、ハリウッド俳優のような美貌を持っている女の子だった。あまり男子とは話さず、女子とばかりしゃべり、男子の間ではミステリアスなイメージを持つ高嶺の花だった。

 彼女名義のラブレターが俺の下駄箱に入っていた。

 クラスメイトの誰かがいたずらで仕込んだものだと思った。何故なら修学旅行の夜に好きな子を公表しようというベッタベタな話題で、俺はついつい彼女の名前を出してしまったからだ。 

 神崎美咲の何に特別魅かれた———とかそういう話はない。

 ただ、単純に彼女の顔が良かった。好みの顔立ちをしていた。それだけだ。

 シャクだったのが、その後に他の男子たちも「俺も神崎が好き」「俺も!」と乗っかりだして、彼女のことを好きだと思っていたのが自分だけではないという現実に向き合わざるを得なくなったことだ。予想はしていた。あれだけの美貌を持っているのだ。顔のいいアイドルには誰だって魅かれるだろう。ただ、その秘めた思いが自分だけのものではなくなった瞬間と言うのは気持ちが悪く、気が滅入る。彼女に好意を抱いている自分は特別でも何でもなかったのだという現実に向き合うのは、夢がかなわない現実に向き合わざるを得なくなった瞬間と似ている。自分が特別な存在ではい一般人で、他の一般人と言う名の目くそ鼻くそが、大きな光に向けて吸い寄せられていただけなのだから。確率で単純に考えると、2%の人間しか光を手にすることはできない。自分は残りの98%の羽虫なのだと思い知らされる。

 そんな羽虫だと思い込んでいた俺。

 ————その前に光である彼女の死体が転がっている。

 首から血を流し、動向が開いて、地面の上に横たわっている。

 生気は、ない。

 完全に、死んでいる。


 どうすればいい?


 俺はいったいどうすればいい?

 好きな子が、唐突にこの世から消えてしまって俺はいったいどうすればいい?

 感情は悲鳴を上げてはくれなかった。

 ポロポロ涙がこぼれるわけではなかった。悲しい気持ちも湧き上がって来なかった。ただただ、驚愕と誰かに見られたら困ると言う焦りだけがこみ上げてきた。

 凡人。

 凡夫の思考だ。

 俺は彼女のことを心の底から愛していたわけではないのだと思い知らされる。

 それが———たまらなく嫌だった。


 グシャリ……!


「……ぁ」

 悔しかったのか。俺はラブレターを握りしめていた。

 くしゃくしゃになったラブレター……そもそもこれが原因だ。

 コレに呼び出されて、俺はここにきて、神崎美咲の第一発見者になってしまったのだから……。


 つまり———このラブレターを送った奴が、神崎美咲を殺した真犯人ってことか?


 これを送った奴が、俺を神崎美咲殺しの犯人に仕立て上げようとしている……そういうことか? いや、そういうことだ。

 人の気配が全くない校舎裏。

 神崎美咲を目撃しているのは俺だけ———つまり、俺しか彼女を殺した犯人を突き止めることはできない。

 俺はハンカチを彼女の首元に当て、止血を行い———そのまま彼女の死体を家に持ち帰ることにした。


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