1−1 げぇむ実況者?
皆様、こんにちは!
可愛い女の子の全力の魔法バトルを書きたい!
この一心でできた作品です!
是非、楽しんでいただければと!
「ミスティ様。私と一緒にゲーム実況者になっていただけませんか?」
「は?」
それは突然の誘いだった。
あまりにも突拍子もない……というのもそうだけど、わたしから漏れた「は?」はどちらかといえば、「何言ってんだコイツ」という意味合いの方が強い。
「なに? げぇむ、実況者……? それってなんのこと?」
「失礼。元の世界の言葉に当てはめ過ぎました。簡単に言えば、私と一緒に『マジアス』に参加して、その姿を映像魔法で放送しましょうと提案しています」
「???」
なるほど、わからん。
こいつが意味わからんことを言うのは今に始まったことじゃないが、今回のこれは普段の妄言に輪をかけて意味不明だ。
「わたしと一緒に『マジアス』に出たいってのはわかったけど、映像魔法うんぬんがさっぱりだ。もう少しわかりやすく説明してくれ」
「……はぁ」
「なんだその『こんなこともわからないの?』みたいなため息はっ!? こっちは別にお前の誘いを断ってもいいんだぞ!」
わたしがムキになって怒鳴ると、リンファは「それはいけませんね」と小さく頷きながら姿勢を正した。
ちくしょう。こいつ無表情だから何考えてるかわかんないんだよな。
「映像魔法ってあれだろ。魔晶レンズで捉えた風景を投影水晶に映し出すってやつ。それで何をどこに映し出すって言うんだ?」
「私たちの『マジアス』での活躍をリアルタイム……つまり大会中にその様子を観戦したい皆さんに提供します」
「……やっぱりよくわからないんだが何でそんなことをするんだ?」
「お金になります」
「えっ!?」
お金になる。
その言葉にわたしは目を輝かせた。
お金は大事だ。大切だ。
この世にあるほとんどのものはお金で買うことができる。
お金で買えないものに価値があるなんて綺麗事は、わたしの汚れた辞書にはない。
「リンファ、その話もうちょっと詳しく――」
と、わたしがリンファに詳細を聞こうとした――その瞬間。
キェエエエエエエエエエッッ!! と。
耳を聾するほどの甲高い鳴き声が鼓膜に暴れ、質問が中断される。
あまりの暴音に耳を押さえて硬直するのも数秒。
わたしとリンファは立ち上がりながら、同時に叫んだ。
「「来たっ!!」」
わたしたちは隠れていた茂みから出て、開いた視界に映るソイツの姿を確認する。
一言で言えば化け物。
二言で言えば鳥の化け物。
三言で言えば巨大な鳥の化け物。
黒い翼を広げたそうした存在が、わたしたちの仕掛けた足止め用の魔術罠に引っかかって悲鳴を上げている。
「リンファ! どうする!?」
「速攻です。あの魔術罠は1分ほどしかもちませんので」
「わかった!」
平野を駆けながら、わたしは手にしていた魔銃杖に魔力を込める。
ギルド『ケイティ』製。対巨大魔法生物用魔銃杖『クレイズパレット』。
射程を犠牲にして、一撃の威力を極大まで高めた大砲みたいな魔銃杖だ。
「ミスティ様! 攻撃が来ます!」
後ろからのリンファの声。
見上げると、鳥の化け物が翼をこちらに振って何かを飛ばして来た。
羽根だ!
鋭いナイフみたいな黒い羽根がわたしに向かってたくさん飛んで来ている!
「うひゃぁああああああっ!?」
みっともなく悲鳴を上げながら、それでもスピードをあげて羽根の雨を置き去りにする。
わたしが通った地面に、ズザザザザッ! と刺さる黒い羽根。
ちらりと振り返って見えたその光景に、わたしはたらりと冷や汗を垂らした。
「いいですよ、ミスティ様! 視聴者が求めているのはそういう反応です!」
「なんだ、視聴者って!?」
相変わらず意味のわからん後輩の声にツッコミを入れながら、わたしは鳥の化け物に突っ込んだ。
飛んでくる羽根の多くはリンファの支援魔法が撃ち落とし、それでも残ったいくつかの羽根はどうにか自力で避ける。
そうして前進を繰り返し、ついにわたしは辿り着いた。
見上げるほどに巨大な鳥の化け物、その足元に。
「やっちまってくだせェ、ミスティ様!」
「急に小物っぽい喋り方をするな!」
言いながらわたしは魔銃杖の先端を化け物へと向けた。
既に魔力補充は終えている。
あとは呪文を唱えるだけ――!
「――『発射』ぁあああああああああああああああああああッッッ!!」
ドゥウウウウウウウンッ! と。
竜の咆哮にも劣らない轟音が響き、魔銃杖から凄まじい熱量が発射される。
魔力光が弾け、わたしの視界は白く埋め尽くされた。
「ぐぅうう……!?」
近距離で弾けたその威力に、自分自身で呻きを上げながら――。
やがて開いた瞼の先。
映し出されたのは、放たれた極大な魔弾の結果。
胴体に大きな穴を開けた魔鳥の姿だった。
『キェ……キェエ……』
それは断末魔だったのか。
鳥の怪物は掠れた声を発してから、その巨体を地面に横倒す。
やがてその身体はサラサラと細やかな光の粒子となって消えていき――。
そしてすぐに、わたしたちの耳にそれは届いた。
【――『スティルパリズム』の撃破を確認。『ミスティ=ゴールド』、『リンファ=フーミン』ペアに30ポイントを進呈します】
拡声魔法でフィールドに響く、魔法人形みたいな感情のない声。
それを聞きながら、わたしは後方にいたリンファの元へと戻る。
「やりましたね、ミスティ様」
「ああ、そっちもいい援護だったぞ!」
そう言って、わたしたちはお互いの杖の先端をぶつけ合う。
コンっ、と乾いた音が光の粒子の散る平野に響いた。
ひとまずの成果に満足な笑みを共有しながら、そこでわたしは話を戦いの前に戻す。
「リンファ。さっきの話について聞かせてくれ」
「さっきの話?」
なんでお前が不思議そうな顔するんだよ。
コイツの記憶力は鶏並みか?
わたしは呆れながら、それについての詳細をリンファに詰め寄った。
「お金になるってんなら話は別だ。げぇむ実況者について教えてくれ」