2.スミ1
初回に先制の1点をあげ、そのまま逃げ切る。
主導権をにぎりながらも、緊迫感のある試合ですが、それだけではなく⁈
スミ1。
1回表、あるいは裏に1点がはいって。2回以降はおたがい無得点で、1対0のまま試合終了をむかえることです。
このスミ1で勝つのが、理想的な試合だとの考えもあります。
最少得点で勝つ。
無失点に抑える。
先制点をあげて、常にリードして試合を終える。
スミ1を理想たらしめる要素は、いくつもあげられましょう。
では、私にとってのスミ1の美学とは?
それは、打順とのからみにこそあります。
なぜならば、打順というものをシンプルに考えれば。1回の表・裏こそ、もっとも得点・失点しやすくなるからです。
投手にとって、たちあがりが難しいから、とか。そんな理由ではありません。
試合のはいりならいつも好調なのに、打順の2・3まわりめで、つかまってしまう投手も多いでしょう。
それではなぜ、1回の表・裏が得点・失点しやすいのか?どう打順と関係するというのでしょうか?
それは、1回が他のイニングとは、決定的に異なる点があるからです。それも、打順において。
打順ですので、試合開始には1番からはじまります。
つまり、1回の表・裏は両チームとも、かならず1番からの打順で攻撃なのです。
2回以降は、前のイニングでの最終打者の次打順より、攻撃がスタート。ということは、何番からはじまるのかわからない。
だからこそ、ふたたび1番からの打順を、好打順と評するのでしょう。
だからこそ?
なんで1番からはじまるのが、いいの?
そもそも、そこを確認することが必要かと。
じつは、さきほどからのべている、1回の表・裏にポイントがあるのです。
1番からの打順で開始することを、約束されたイニング、1回。対して、ほかのイニングは、1〜9番の9とおりのどこからはじまるかわからない。
確率でいうと
1回の表・裏 → 1番から 必ず
2〜9回の表・裏 → 1〜9番から 各1/9ずつ
となります。
さらに1試合、全9回の期待値でいうと…。
って、まず期待値についての補足が必要かも。
よく期待「度」と期待「値」が、混同されてる感があるんですよ。
ざっくばらんにいうと
期待度 → あいつなら、やってくれる。あいつにまかせれば、安心だ
期待値 → おこりえる各場合における、その確率と、それに対応する値の積の合計
例をあげると
ダイスをころがして、もらえるリンゴの数を決めよう ♪
1・2・3 → 0個
4・5 → 1個
6 → 2個
このとき、各場合の確率はそれぞれ
1・2・3 → 3/6
4・5 → 2/6
6 → 1/6
となり、対応する値をかけると
1・2・3 → 3/6 × 0個 = 0
4・5 → 2/6 × 1個 = 2/6
6 → 1/6 × 2個 = 2/6
これを足して
2/6 + 2/6 = 4/6 = 2/3 個
これが、期待値です。
それでは、次のお題。
1試合、全9回において。
1〜9番の打者からはじまる、各打順がそれぞれ、何機会あるかの期待値を求めちゃおう ♪
※ イニングの「回」とややこしいので、「機会」なんて単位を設定してみました
さきほど計算した確率をもとに、イニング数をかけてやると
1回の表・裏
→1番から 1×1回 =1
2〜9回の表・裏
→ 1〜9番から 各1/9ずつ × 8回 = 8/9
最後にこれを足すと
1番から → 1+ 8/9 =17/9 機会
2〜9番から → 8/9 機会
なのです!
わかりますね。
1試合につき、まるまる1機会ぶん。1番からの打順が多いのです。
だったら、単純に考えて、
1番からはじまるのが、いちばん点のとりやすいオーダーを組むのがベスト
となりましょう。
それを、たがいのチームが実践すれば
両チームとも、かならず1番から攻撃がはじまる、1回の表・裏こそ、もっとも得点・失点しやすい
はずです。
つまり、試合開始前のまっさらな状態から考えれば。初回の攻防を制することが、最大のチャンスを活かし、最大のピンチをしのぐことになるでしょう。
実際の試合の局面では、どんな大きな。チャンスやピンチが、いくつあるかはわかりませんが。
初回を制するチームが、試合を制す。
それが、スミ1なのです。
打順のはなし、つづきます。