1.無死 走者ニ&三塁
私が野球でもっとも好きなシーン。
たまにあるんですよ、こんな場面。
それは、あたかも銃と刀。西部のガンマンと、東洋の侍。
それぞれにボールとバットを携えた、投手と打者とのぶつかりあい。野球というスポーツは、チーム戦にもかかわらず。その局面を切りとって、一対一の決闘のように見立てることが多いでしょう。
そこには、そこだけでも、さまざまな花形プレイがくりひろげられます。
天空に、勝利へと渡すアーチを描くホームラン。
豪快なスイングをひらりとかわすさまは、フラメンコに舞う闘牛士のよう。キャッチャー・ミットにおさまる変化球。
ですが、走塁や守備など、脇役のようにあつかわれることがしばしばあるプレイにこそ。そのチームの強さが問われるもの。って、よく言われますけど。なんだかんだで、投手対打者で見ちゃいますよね。
では、私が野球でもっとも好きなシーンはというと。
無死 走者ニ&三塁
↓
二者連続犠牲フライで2点
タイムリー・ヒットやホームランが、御都合よく出てくれればいいんですが。好打者でも3割打つのは難しいうえに。打率の計算から外されている四死球や、犠牲フライを加えた打席数を分母にすれば、さらに
確率は低くなります。
だからこそ「最低限」と呼ばれる仕事、進塁打をここぞというときに、きっちり打てるチームに魅力を感じるってわけです。
ゴロによる進塁打より、犠牲フライがってのは。バントといっしょで、打率がさがらないのもありますね。あ、知ってるひとも多いとは思いますが、念のため。打率の分母は打数。打席数から四死球、バント、犠牲フライの数をひいたもの。ゴロによる進塁打は、打数にふくまれるので、打率はさがっちゃうんです。
じゃあ、バントでもいいじゃん?
打って。走って。捕って。投げて。
ゴロの進塁打もそうですけど。それって、どっちが早かったか、のプレイじゃないですか。
私が好きなのは、浅い外野フライに、俊足ランナーが間一髪、生還する犠牲フライではなく。
ランナーがゆうゆう還られる、深い外野フライ。
フェンスを越えはしない。スタンドまでは無理でも。打った瞬間、捕球されてからだって、ランナーが還ってこられるとわかるような。打者がいい仕事をしたと讃えられる、そんな一打です。
まにあうか、まにあわないのか。一連のプレイに満ちる緊張感もいいですけど。バッター・ボックス の打者が、「最低限」の仕事をきっちりこなし。還ってくるランナーを、チーム・メイトが笑顔で迎える。つづいて、犠牲フライに倒れたかたちではあるものの。打点をあげた打者は、うなだれることなく、むしろ誇らしげに。チーム・メイトとハイ・タッチを交わす。そんな場面が好きなんですよ。
そして、無死 走者ニ&三塁という、ランナーふたりを還したい大チャンスに。ヒットが出なくても、きっちり2点をもぎとる。
派手さには欠けるかもしれませんが、チームの強さを感じられる、お気に入りのシーンです。
やる側は、いいですけど。
やられる側は、ずしりときますね。
点差に余裕があれば、2アウトもらえるのと交換で、2点くれてやるのもありかもしれませんが。
逆にやる側も。2点もらえても、2アウトとられたくない場面もあるよなぁ。