第84話 ダレンのロマンvsリンの堅実
(素材としての腸2)
ダレンに 素材となる腸のストックがあることを話した。
素材化するための工程は リンが知っている方法とダレンが考えていた方法に大差はなかった。
ただ ダレンは 工芸材料として考えていたので、食品としての加工ほど不純物の除去やに注意を払っていなかったが、保存性を上げると言う観点から リンの知っている方法も取り入れてみたいと言った。
「それに 俺だって 将来は ソーセージってものを食べてみたい!」
ダレンの欲望にも火がついたようだ。
「私は 赤身肉のお料理がいいけど」リン
「おじょうさん 肉というのは 骨からこそげとったりすると けっこうくず肉が出るもんなんです。
そういうくず肉と本来捨てるはずだった腸を使った料理、
節約精神のようでいて 実は多大な手間のかかった贅沢料理
そういうものに ロマンを感じませんか?」とダレン
「骨についた肉は スープを作る時に剥がれ落ちるから それをすくってたべれば簡単よ。」リンは あっさりとかわす。
「貴族のお嬢様とは思えない 無駄のない質素な調理法ですな」ダレン
「王位継承順位が高くて教育水準だけは高かったけど 生活水準は質素以下のレベルでしたから」リン
(事実 リンとライトの共通点の一つは 生き延びる為の食料を確保するために
幼い頃から自分で狩りをしていたということだ。ライトは このことをまだ知らないようだけど。
子供ころのリンは 自分の母を養うために換金用の獲物まで狩っていたから、もしかしたらライトよりも狩りの経験が豊富であるかもしれない。リンは気付いていないようだが。)
そこで二人は 現実の問題にむきあうことにした。
問題は 水の確保と排水・廃棄物の処理問題。
この点に関しては バイオ君代表とも相談してみた。
その結果 盆地の入植地に行き、川の水を利用することになった。
さらに、鞣し革の原料となる塩漬け皮から出てくる塩を腸の保存に再利用し、
腸の中身は バイオ君が処理して 工芸林の肥料となることが決まった。
盆地の入植地は リンとバイオ君が力を入れて 循環的資源の活用を基本にした工芸活動を行うためにデザインした土地なので 排水・廃棄物問題も対応しやすいのである。
今回、腸のケーシングを行うにあたり、
盆地のバイオ君達に加え、本領周辺にいた妖精赤ちゃんのうち興味を持った者達が応援のためにひっこして 取り組むことになった。
「もし ソーセージを作ることになったら そこにも発酵の過程が加わるかな?」
「ケーシング作業にも 発酵による不純物の除去過程があるんだよねー」
「僕達 発酵 だーいすき♡」
「新しい土地で 新しい樹木の為に 新しい肥料を作るにも 発酵が必要だよ、きっと♬」