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二年目のベルフラワー  作者: 木苺
第1章 8月:二つの商業林&植物繊維の利用
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第8話 排水からの塩分の除去と理科教室

袋を作ろう! 3/5

リンとライトが編み出した、「向かい合わせに置いた2脚のベンチの上を転がしながら海水まみれのミンダナの外皮を()ぐ」作業では、はぎ取る丸太の本数分だけ ベンチについた塩をふき取らねばならなかった。


といっても面倒くさがりのリン・ライトコンビであるから、分厚(ぶあつ)い布をベンチにかぶせ、1本の皮はぎが終わるたびに、その布を取り換えるという対応策を考え出した。


乾燥したベルフラワーの気候を利用して 布にくっついた(もと)海水今や塩が、

幅広い容器の上で はたき落とされ(のち)、布を洗濯するのである。


こうすることによって 洗濯後の排水に含まれる塩分をかなり減らすことに成功。



極薄(ごくうす)の塩水となった洗濯排水は 専用のバイオタンクに集められ、レイラが浸透膜を利用して濃い塩水と塩分を含まない水に分離した。


 塩分を含まない水は バイオ君達の手によって 農業用水へと処理された。


濃い塩水は 天日にさらして 塩の結晶を取り出した。


このとき 様々な形の塩の結晶ができたことが、子供達の興味を誘った。


そこで ミンダナから繊維を取り出す作業が全て終わったあと、リンと化学者であるレイラの二人で

いくつかの実験観察を中心とした理科教室を開いた。


(1)質量保存の法則と水溶液の濃度


①水に溶かした塩の重さ=その塩水の水分を蒸発させた後に残った塩の結晶すべての重さは同じ


②同じ濃度の塩水を同じ分量に分ける。

  同じ分量の塩水を 深い容器に入れたり 浅い大皿に入れたりと異なる容器に入れることにより

  水分が完全に蒸発するまでの時間は異なり、できた結晶の形や粒の大きさはそれぞれ違うが

  容器の中の塩の総重量は同じ


③塩水の濃さにより 卵が浮いたり沈んだりする



(2)温度による飽和溶解度の変化


①ミョウバンと 塩について 溶かす水の温度による 溶けるミョウバンや塩の重さの違いを比べる


②ミョウバンの飽和溶液・塩の飽和溶液の中に種となる小さな結晶を釣るして静置する

 溶液の中で結晶が育つ様子を観察する


 比較のために それぞれの飽和溶液の中に糸だけたらして静置した者も用意する


  塩水の中に垂らした糸に塩の結晶がたくさんくっついてきたり

  ミョウバン溶液の中で 正八面体の結晶が大きく育ったのは 感動ものであった。


「水が蒸発したら塩が出てくる」というのは なんとなく受け入れられても

「溶液の中で結晶ができる・育つ」といいうのは なんとなく分かったつもりの概念を揺さぶってくる。


(3)潮解ちょうかい(物質が空気中の水(水蒸気)をとりこんで自発的に水溶液となる現象)&

   塩の吸湿と放湿


 塩の結晶・水酸化ナトリウム・塩化カルシウムの粒を、風呂の脱衣場・館の調理場の湯気のかかる場所・館の裁縫室に、一粒づつ置いて観察


  →乾燥剤としての利用について知る


  →塩が湿っぽくなったあとくっつく現象の考察と説明


  →部屋の湿度について考える

     ティティとロジャは 「リンの防湿結界の働きがやっとわかった!」と叫んだ。


     乾燥地帯のベルフラワーでは たとえ防湿結界がはってあっても、

     結露を見ることはなかったので、防湿結界についての口頭での説明が

     これまでどうしても理解できなかったのである。


というわけで 結露を目で見る為の実験を追加した。


(4) 湯気をガラスの箱に集めて冷ますと ガラスの箱の中に水滴が生じた!



 

実験を含めた指導案はリンがたて、実際の授業はレイラが行なった。


大人も子供も わくわくしながら この授業に参加した。


☆ ☆ ☆


・・・塩水を天日にあてて塩の結晶を取り出す作業を見ていたライト達の会話・・・


「なあ 剥がしたミンダナの外皮についていた塩もはたいて集めるか?」ライト


「外皮や敷布をはたいて集めた不純物交じりの塩は 一度水に溶かして結晶化して食用にしても大丈夫かなぁ。

 理論はともかく 気分的になぁ」ジョン


「塩削りよりも 体力がいらないならそれもありかも・・」レオン


「ベルフラワー産のミンダナは 伐採するときに「海にプカプカ」ならないように植えたから、次からは 普通に 外皮はがしができるように願っています」リン


というわけで海水まみれだった外皮は空間倉庫に収納し、

敷物から叩き落とした塩は、ジョンとレオンが塩の結晶を分別する魔法練習の素材として使われることになった。


ジョンとレオンの塩の結晶分別術が習熟したら、海水にまみれたミンダナの外皮から直接 塩の結晶を分離するか それともまずははたいて塩の結晶その他を落としてから分別するかに挑戦することとなった。


しかしながら・・・


「塩の結晶部分は純度100%だけど 結晶の吸湿と放湿作用で結晶同士がくっつくときに、

 不純物まではさみこんでいるから、魔法で分別できない!」ジョン・レオン


「しょうがない まとめて海にもどしてしまえ!」ライト

ということになった。


「化学的知識ってのは 魔法を使った無駄な努力をしないためにも役立つということがよくわかりました」ジョン


「リンのいじわる この結果を半分予想してたんだろう!」レオン


「私は ジョンの最初の案、水に溶かして再結晶化が理想だと思ってたけど そうやって抽出した塩を食用に使うのも気分的に嫌だなぁと思ったの。

それにそこまで手間をかける価値があるかどうか思案するところで思考はいきずまっていました。

 

 その先に進むことを考えて決めたのは君たちでしょ」リン


「魔力だろうと体力だろうと技術だろうと それを使う価値があるかどうかの思案ねぇ」ライト


「そこが実用化の(かなめ)なんですよ。すぐには答がでない。じっくり考える必要がある」

「だから 最初から しょうがない・めんどくさいで片づけちゃだめよ」リンが笑ってライトに言った。


「念のために言うけど 海に戻すのは はたき落とした塩の粒だけよ

 塩まみれの外皮については まだ何も決めてないから」リン


「叩き落とした塩は 水に溶かして 水溶液をろ過して天日にあてて結晶にすれば 回収は簡単だ。

 ただ 乾燥地帯のベルフラワーで 水をそういう風につかっていいのかどうか・・」ジョン


「私も それが心配なのよ。

 塵も積もれば山となる。こまごまとした水の節約は 重要よね」リン


「それで 思案できないものは ポンポン空間倉庫に放りこむんだなリンは」ライトが言い返した。


「そこまで 大きな空間収納を持ってない僕達は 頭が痛いよ」ジョン


「前言撤回。空間収納を使って僕達の頭痛の種を預かってくれるリンは やっぱり いじわるではない」

レオンが修正した。


※明日8日は土曜日なので 朝8時と夜8時の2回 投稿です


 土日は 朝8時夜8時の2回投稿

 平日は 朝7時の1回の投稿です



(参考)

 塩の結晶の写真 https://www.shiojigyo.com/siohyakka/about/data/shape.html


 結晶づくりの動画

   https://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005300676_00000&p=box


 塩の吸水 http://www.siojoho.com/s08/07.html


 塩百科 https://www.shiojigyo.com/siohyakka/select/quality-shape-shokuyoen.html


 種結晶のつるし方 http://www.edu.city.kyoto.jp/science/online/labo/44/index.html


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