第3話 第1回創立記念祭
「創立して2年目だけど、初めて迎える創立記念日だから、今日が第1回創立記念祭であってる?」エレンが心配そうにテレサに尋ねた。
「そうね 今日から2年目。創立記念日のお祝いは今日が初めてですもの。第1回ですよ。」テレサ。
第1回創立記念祭のメニューは 数種類のパンとカボチャのスープ ・コールドチキンサラダ・くずの水菓子だった。
パンは干し果物や木の実・野菜などが入っており、味も形も色合いもさまざまだった。
コールドチキンは月光の地で育った鶏を何羽か持ってきて、釜で蒸して冷やしたもの。
多人数のパーティでは作り置きして冷めていてもおいしくいただけるお助け料理である。
リンはドワーリンと一緒に「反射式加熱器」を作った。
これは ぴかぴか光る反射率の良い薄い金属を大きな椀上に貼り付け、
その中心にぶら下げた鍋やフライパンを加熱して調理する器具だ。
椀上の金属により反射された反射光が集中する場所に調理器具を置くので
湯を沸騰させることも肉を焼くこともできる。
もともと熱泉の100度近い湯を使って蒸し始めるので、追い炊き程度なら薪を使わずとも この「反射式加熱器」で十分だった。
使い終わった後は、柔らかい布で鏡面を傷つけないように汚れをきちんとふき取る必要があるが
手入れさえ怠らなければ、1000年でも安心して使える仕様である。
飲み物はリンが火山の近くで汲んできた炭酸水にレモンで味付けしたもの。
皆は ベルフラワーの自然の恵みと 自分達の労働の成果である野菜類を堪能した。
そして マリア・テレサ・アレクシアの料理の腕をほめたたえ、
リンのレシピに賛辞を送った。
料理の最後をしめくくるデザートの葛の冷菓子は ちょっとしたサプライズだった。
「冷たい!」
「つるんとしたのどごし♡」
「ほんのりとした甘さ♫」
「ちょっぴりそこはかとない塩けと桜の香りのこちらも絶品!」
2種類のくず饅頭にみんな大騒ぎ。
「はぁー がんばって 掘り出して さらして 粉にしたかいがあった」ライト
「おつかれさま」リン
二人は 忙しい合間を縫って作ったくず粉のデザートが皆に受け入れられてよかったと 互いの健闘をたたえあった。
「しかし あの にっくき葛繊維の根っこが こんなにうまいとはなぁ」
「8月にも葛の採取にいくんですよね」
ちょっぴり現実面に引っ張られながらも 葛のおいしさに 仕事の厳しさもまっいいかと思えた一同であった。
フォーンの庭に招待されていたので、夕方 みんなで牛車にのって赴いた。
フォーンの庭は葛がおいしげっていた
「ここに来るのはお月見以来だから 約8か月ぶり?」
「つき・ほし・あかり・たいも大きくなったね」
「今日は 月じゃなくて 夕日が沈むのを見て行ってね」フワが言った。
フォーンの庭の裏手は高台のハーブ園になっている。
そこに上ると 確かに夕日が沈むのが見えた。
「リンドとスレインに日が沈む」バクー
「あまり良い思い出の無い国の名前なんて言わないでよ」ミソノ
「でも 先祖が眠る土地ですもの 恋しいわ」アレクシア
「僕は ここの生活が好きだから それにアレクおばさんも来てくれたから
あっちのことは気にならない」ロジャ
「僕達は ここに来るまで孤児院の外に出たことなかったからなぁ」ジョン
「そうね ここまで歩いてくるのは大変だったけど みんなといっしょだったから まるで 全員で引っ越ししてきたような感じね」ティティ
「えー お前達 ここまで歩いてきたの?」アラン
「そうよ」エレン「何日も何日も砂漠の中を歩いたの」
「えらかったな。俺達 馬車に載せられて 半分寝てる間に運ばれたのに」
アラン達は口々にそういいながら エレンやロジャ達をいたわるように言った。
「何の目印もないのに リンがすたすた先頭に立ってさ そのあとを2列になって俺達歩いたんだよな」レオンが思い出を語った。
「今から思うと 良くついてきてくれたと思う。
みんな ありがとう」リンは 皆の方を見て言った。
※5月5日までは 連休なので朝8時と夜8時の2回投稿です
5月6日からの平日は 朝7時の1回投稿です
土日は 朝8時と夜8時の2回投稿します