第25話 妖精達の報告
月末に ジョンがパピルス紙の試作品を持って 湯気の地から戻ってきた。
パピルスの発酵に関わった妖精達もついてきた。
そこで 葛や麻の発酵にも関与した妖精達と一緒になって報告がなされた。
妖精達からの報告:
パピルス・葛・麻に関わる発酵菌は 似ているけどちょっと違う!
「え~!」化学者達は頭を抱えた。
「それで 実際面では どう取り組めばいい?」リン
「それぞれに専用の部屋を用意してくれれば あとは僕達が最適になるように調整してあげる♡」妖精達
「それは ありがたいお話だけど 建築の概要とルームの諸要件は?」リンは慎重な口調で尋ねた。
・・
とりあえず 麻は北棟で 葛は共同宿舎の作業部屋で パピルスは 南棟にある子供達のミーティングルームで発酵などの管理を行うことになった。
麻と パピルス用の専用部屋の設置は、湯気の地で新たな建築資材を確保してからである。
ジョンは、「パピルス紙は 裂けやすいから、麻挽き前の紐状になった麻の繊維を綾織のように並べてローラーにかけて水で余分な部分を流した方が 良質の紙ができそうな気がする」
「もちろん 布用の需要を超える麻の収穫ができたらの話だけど」メリーの顔を見てあわってジョンは付け加えた。
「確かに 紙らしきものはできても そこに墨やインクでちゃんと記載できるかどうかを確かめないとね」リン
「そうなんだ。パピルス紙にしても 専用の筆記具とインクの調整がまだなんだよな」
「パピルス紙の作り方そのものは 麻繊維の取り出し作業を参考に 少し改良したんだけど」ジョン
「材料確保さえできれば 紙漉きで製紙するほうが 紙の質はいいのではないかな」リン
「少なくとも この先2年くらいは パピルス紙かな?
「そのつもりで ペンとインクの問題も考えないと」ジョン
「油煙 灰 炭 油 etc それぞれの素材集めと調合レシピ探しね」リン
「インクになる汁の取れる植物があればいいのに」ディー
「その植物が自生してくれて 栽培の手間がいらないことを願うよ」フォーク
「俺達は 発酵菌の特定に向けて」バクーが言いかけると
「顕微鏡の増産要求には応じない!」ドワーリンがきっぱりと言った。
「おっさん 最近疲れているのか?」ライト
「器具を一つ二つ作るだけならともかく 次から次へとキリがない。
素材集め パーツの加工 どれをとっても限度というのものがあるんじゃよ」ドーリ&ドワーリン
「ごめんなさい。 お願いする前にちゃんと優先順位をつけます。
それに みんなも 要望が全て通って当たり前とは思わないように」リンがライトや共同宿舎の面々に向かって言った。
「体力と違って モノづくりに必要な精神力は一晩眠れば回復するわけではないのだから」リン・レオン・ジョン
「技術と違って 精神力が重要なのか?」不思議そうにライトが言った。
「技術を支えるのが精神力なんだよ。ですよね?」レオンがライトに向けて言った後ドワーリンにお伺いを立てた。
「確かに そうともいえるな。」ドワーリン
「人間は 弁がたつだけでなく うまい言い回しも思いつくな」ドーリ
「ところで ドワーフさんの回復に役立つ場所とかモノとか料理とか なにかありませんか?」メリー
「エール! エールが飲みたい!!」ドーリとドワーリンが声をそろえて力説した。
どうやら 今冬の種まきでは エール用の大麦増産に励まなくてはならないようだ。
(二人の空間バックに残っているエールがいかほどかはわからないが
祝いの席でもちびちびとしか 飲んでいないことからしても 残量に不安があるのだろう)
妖精達は 「エールづくり楽しみ~~~」と無邪気に発光しはじめた。
発酵大好きバイオ一族にとって 酒造りは夢の世界なんだろうなぁー。
リンは会議のあと こっそりと 梅を砂糖でつけて発酵させた「特製梅酒」をドワーリン達に差し入れに行った。
ちなみに 塩削り大会の商品である「梅シロップ」は 温度管理に失敗して「特製梅酒」に化けてしまったのは ライト達にはないしょ。
ドーリ達にはあっさりと見破られたのだがww
その頃 男子宿舎では ライトを中心に、ドワーフ達は 彼らがベルフラワーに引っ越してくるときに持ち込んだエールの在庫がなくなったら、エール用大麦増産要求を掲げてサボタージュをやるかどうかの賭けをしよう、いや不謹慎だ 失礼だと会話が盛り上がっていた。