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二年目のベルフラワー  作者: 木苺
(3)湯気の地と・・・
201/206

第199話 朝のミーティング

ジョンを湯気の地に送り、こまごまとし仕事を終わらせたリンは

ベッドにバタンキュー。


翌朝、定刻に目覚めたリンは「起きたくないなぁ」と思いながらも

あきらめの心境で起き上がり、出勤。

職場(=修道院内の食堂)が目に入ると自動的に柔らかい表情を浮かべて

室内に入り、皆に挨拶。


空腹だったが食事をしたい気分ではなかったので、牛乳だけを飲むことにした。


食事時間の後半はいつも諸連絡に充てられている。

これは食べるのが遅い子供たちにも連絡事項をきかせるためでもあり

忙しい大人たちの時間節約術でもあった。


その諸連絡の時間に合わせるようにバクーが入室しテーブルの隅についた。


「パピルスのことが気になるジョンは、本人の希望通り、湯気の地に行きました。

 皆も知っての通り、ジョンには仕事や畑の割り振りをまとめる役がありました。

 そして何よりも大切なこと、ベルフラワーでは傷病人でない限り、肉体労働も公平に分担することになっています。


 そして 各自の能力に応じて分担する役目によって、肉体労働に携わる時間が変動することがあっても、だれかが過労に陥るような仕事の割り振りは速やかに修正されなくてはいけません。


さて、ジョンは収穫が終わってからのこの2か月余り、一度も荷運び作業を行っていません。

自分の個人的研究課題である「パピルス紙の生産について考える」「仕事や畑の割り振りを考えることで忙しい」と言って部屋にこもってばかり、現場に出ても、指示するだけで実際の作業には手を出していなかったという報告を受けていますが、その通りですか?」


リンの言葉に 皆はうなづいた。

「ジョンは最近いばりんぼになった」とはロジャ・ティティ・ディーの弁


「ジョンは仕事の割り振りにおいても 運搬する袋の数だけを問題にして

 大袋を運んでいるライトやフォークにも、小袋を運んでいた時と同数を運ぶように命じ、それができないならと日暮れてからも働くように圧力をかけていたと聞いてます。」


「正確には 俺は日が暮れてからの仕事はしていないが、俺が運びきれなかった袋を ライトが一人で運んでいた。

 彼には 袋担ぎ以外の日常の仕事があり、ライトはそれを済ませたうえで余分な荷運び労働まで協力していただけにもかかわらずだ」フォーク


「それで ライトは最近 動いていないときは居眠りしていたのか」レオン


「ライトはなぜ そのことに異議申し立てをしなかったの?

 ジョンなら話せばわかってくれたはずよ」ティティ


「言ったが、ジョンが激高したんだ。

 だから 運営会議に役割分担の見直し動議を提出する予定だった。

 昨夜の会議では そこまで議事が進まなかったけど」ライト


「予定とはどういう意味でだ?」ドーリ


「文書で提出していれば優先的に案件としてとりあげる

 口頭でもいいから会議で話すことを事前に詳しく説明すれば優先度を考慮すると言われたんだけど

 具体的なことは 会議の場の流れによると言ったら、前々から再三希望を出して気持ちを固めている様子のジョンの案件を先に取り上げざるを得ないと言われたんだ。」ライト


「たしかに ジョンの悪口にならないように気を使いながら話すには

 その場の流れを見ないとやりにくいよな」レオン


「ていうか、個人の感情に左右される流れがおかしいと思う」ライト


「はいはい そこまで!」リンが両手を挙げて 皆を制した。


「えーと、ベルフラワー発足当時は、人数も少なく、体力のある大人中心に労働を割り振っていました。

 そして 私も含めた肉体派、つまりライトとフォークさんと私は もう肉体的にへとへとだから、やる気はあるけど体力的には私たちについてこれないジョンには事務的な仕事を任せ、体格的にもっと鍛えればもっと仕事量が増やせると見込んだレオンを鍛えることにしたんだけど、その一方で 子供組には自分たちの体力に見合った作業をしながら農業について実践的に学んでもらおうという所からすべてが始まったのだけど、

ここまではOK?」


「はい」


「その後 人の数が増え、若者の数も増え、子供たちは年齢的に成長し

 大人の間にあった 様々な考え方の違いも折り合いがついてきたので

 ベルフラワーとしての役割の分担を見直す時期が来たのではないかと思います。


 で、一気に結論に飛ぶと、当面 畑や人手の割り振りは、バクーと、ドーリまたはドワーリンに任せたいと思う。

ドーリもドワーリンも全体をよく見ているし博識です。

修道院設立初期からのことも知っているので お二人のうちのどちらかがバクーについて彼を支えていただけたらと思う。

 バクーには 差配を行うにあたって必要な合理的思考力・判断力があり、 冷静さと公平な視点があると思うのですが、農業をはじめとするベルフラワーでの事業に関する知識については未知数なところがあるので。


 ジョンは 現在 思春期という人生の最初の転換期にあたり、いろいろ感情的にも知的にも悩み多き年ごろのように見受けられるので、本領の運営に特化した事務作業に専従するのは、過重負担なのではないかと思います。

 実際 最近は思い込みや感情的反応が目立つ対応をしているように感じます。」


「思い込みと感情に基づいた行動をしていると断言すべきだと思いますね。

 昨日の運営員会での彼の言動では」テレサ


「確かに 昨日のジョンの言動は かばいようがないわ。

 なんであんな風になっちゃったのか・・」ティティ


「なんで?と言い出すと 話が迷路化すると思うぞ」ライト


「そのあたりは ジョン個人の問題ではなく、『ベルフラワーにおける人材育成における課題(若年編)』として 昨日リン提出した動議3から考えていけばよいのではないか?


ちなみに バクーと一緒に当面 仕事などの割り振りに関する作業を行うのはドーリに任せる。

わしは相談役でいい」ドワーリン


というわけで 昨夜の荒れた会議の一応の区切りはついた。

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