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二年目のベルフラワー  作者: 木苺
プロローグ
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第2話 刺繍で親睦会

アドベントカレンダーに刺繍するために 昼食後多くの者が館の手芸室=食堂の隣に集まるようになった。


全員が集まった日には手芸室に入りきらないので、ドアをあけて食堂まで使って刺繍の会だ。


特に7日までは盛況だった。

8日の創立記念日&8日を自分の誕生日に選んだ人たちが自分の名前の横に貼るワッペンを製作するために集まったから。


カレンダ―の日付は、毎日1人づつ順番に刺すのだが、だれが刺繍するかは以下のように決まった。

あわせて各自の感想や近況もしるしておこう。


1日ドワーリン

 「ドワーフは力仕事だけでなく手先が器用なところも披露しなくてはな」

2日ドーリ 「同じく」

3日オルフ

4日ノーリ

5日レモン

6日ライザ

7日カノン

8日リン「針目の大きさをそろえて刺繍するのは肩が凝るわ」


9日サイラス

 「まさか創立記念日だからと 放牧地を狼に任せて留守にすることになるとは」


10日ミル―

 「お祝いは楽しかったけど ヨーグルトの発酵状態が気になるから早く放牧地に帰りたい」


11日ムギ

 「同じく。餌はたっぷりやってきたが、狼どもは見張りしかできないだろうから心配だ」


 「なんかあれば 念話で連絡が来るとわかっていてそれを言うとは強心臓だな」スコリーがうなった。


 「親心だと思って許してくれ」ムギ


 「その年で何人の子持ちだ?」ドスコイ


 「30頭の乳牛に30頭の小牛。150羽のにわとり」ムギ


 「出産ラッシュでたいへんだったのではないか?」ライト


 「すこやかな分娩と健やかな子供達だから そうでもなかったよ。

  最初に 一部の雌鶏めんどりたちが有精卵を産み出した時はさすがに驚いたが」ムギ


 「あれ きじの雄が夜のうちに忍び込んでたんだよねぇ

  責任とって雄雉たちに抱卵と給餌をしてもらったけど

  一時はどうなることかと思ったわ」リンが思い出して笑った。


 「ノームの自然に帰れ作戦が こんなところで実現するとはな」


 「とにかく 最初の鶏カップルに比べたらましだったが、有精卵を産んだ雌鶏が10羽もいてなぁ、

  やっぱり大騒ぎだったよ。」ムギ


 「そこまで家畜を愛していて、冬前の間引きはだいじょうぶか?」フォークが心配そうに尋ねた。


 「それはだいじょうぶだ。俺 牧童頭ぼくどうがしらだぜ。それくらいのわきまえはある」


・ムギとミル―とサイラスは 7日の夜に修道院に来て、12日の早朝には月光の地に戻ってしまった。


 ムギ達の交代要員として月光の地に出向いていた狼も含めて 送迎はもちろんドラちゃん。


 (最近 めっきり体が大きくなって燃費の悪くなったドラゴンの為に、小牛を1匹進呈することになった。運賃がわりに。

  もちろん全員同意の上でだ。


  月光の地の妖精・精霊達からも その地で家畜をさばく事の許可も得た。


  ムギが速やかに声もあげさせずに小牛にとどめを刺して、血抜きを行い、

  その血はたらいに入れてドラが飲む。

  牛の皮と骨とレンネットの取れる胃を空間倉庫に入れて、残りはドラちゃんの食事。

  脂身の部分も ドラは空間倉庫に送った。)  


 ムギ達は 自分達の名前の横にはりつける年数ワッペンに 三日月マークを刺繍をした。

 「月光の地」に居ることを記念してだそうだ。


 それを見たサローヤン達も自分のマークをワッペンに付けたいと思いデザインをアレコレ考え出した。


12日 バクー

13日 A 「たまには出張所を離れて過ごすのもいいもんだな」

   

  「ずっとあそこに住まなくても バクーみたいにかよってもいいのよ?」リン

   

  「あそこで 妖精達がキラキラしているのを見ているのも楽しいんだ」A


   Aはメリーの誕生日を祝った翌日に、ブロン君に乗って出張所に帰って行った。

  「俺 ここには 刺繍とブロン君騎乗の練習に来たみたいだ」と言いながら。


  ちなみに修道院に来るときは、バクーがブロン君が引っ張る2輪車で迎えに行き連れてきたのだった。


14日 サローヤン  「俺のマークはシャベルだ。」


15日 メリー「今日は私の誕生日♫ 私のマークは糸と針」


 メリーはカレンダーの15の字の下に、自分の名前を刺繍するように求められたが、

 名前の代わりに細かい針目で 糸をとおした針を描いた。

 皆は その腕前の素晴らしさにため息をついた。


 「ねえねえ 8日の所は 私、数字の8しか刺繍できなかったかったから、創立記念日だとわかるように

  館の絵を刺繍してよ」リンが頼んだ。


  メリーのワッペンそのものは「21」と数字だけが刺繍されたシンプルなものだった。


16日 トントン 「俺のマークは斧」


 「トントン刺繍がうまいな

  俺は今年のワッペンには箪笥の絵をかいておく。

  2年目を意味する「Ⅱ」って刺繍するので精一杯だから

  カレンダーの日付の刺繍もパス」カックン


 「森で一人で過ごすことが長いと つくろい物で裁縫さいほうの腕も身につくさ」トントン


 「手先の器用さには自信があるが 裁縫経験のない俺もカレンダーへの刺繍はパス。

  ついでに言うと だれかノミの絵が描ける奴いないか?」アロウ


  ジョンが アロウの仕事道具であるノミを見ながらその絵を描いた。

  それをお手本にアロウはがんばって自分のワッペンにノミを描いた。

  「来年はもうちょっと絵が上達しているといいんだが」アロウ


というわけで17日以後は女性陣に日付の刺繍バトンがわたったので以下略。


めいめいのワッペンの絵柄は

萌:若葉 

ミルタン:「今年はリンゴの気分」

レイラ:「今年は試験管。この分で行くと何年で実験セットの刺繍がそろうかしら?」

ミソノ:「私は大豆ね」コロンとしたお豆の絵だが 妙に愛嬌がある


自分の年齢をワッペンに刺繍しなければいけない人達は模様を刺繍する余裕もなく 飾り文字の優美な線を刺繍で表そうと一生懸命だった。


刺繍経験の豊富なテレサとアレクシアは アラン達の手ほどきに汗だくだ。


 彼らは ワッペンに自分の年齢をローマ数字で刺繍するので精一杯だった。


「ローマ数字ってシンプルで刺繍しやすいけど かっこいいな♪」タッキー


「同感の意」リンは15才の誕生日に備えて「15」のワッペンを刺繍しながらうなった。

(リンはローマ数字は直線縫いだが線の数が多いので算用数字を選んだのだ)


一方エレン達は カリグラフィーの数字でワッペンを仕上げた後は

交代で カレンダーの下欄の 自分の誕生日と名前の刺繍もし上げていった。


カリグラフィーの書き方はメリーが教えた。


「ねえ リンって なんでもできそうに見えるのに 刺繍は苦手なの?」ロジャ


「苦手なことは多いよ。

 練習するときは 一番(やわ)しそうなやり方を選んで練習しているの。

 刺繍は 文化刺繍といって 針で特別な糸を突き刺していく刺繍が得意よ

 運針うんしん苦手にがて。必要にせまられない限りやらないw」リン


「今 スイッチを切ってるんだろ。

 必需品を作る時は メリーと同じ速さで同じように仕立てていたんだから」


レオンは、今の年齢の18才はすでにカレンダーに記入されているから、来年の誕生日用の「19」のワッペンを刺繍しながら言った。


「意地悪言わないの。仕立物は直線縫い。刺繍みたいに斜めや曲線ではない」リン


「なるほど 目標に向かって一直線が得意なんだな」ライトはリンをからかった

そういう彼も今年の11月の誕生日に使う「20」のワッペンをしかめっ面で刺繍している。


「ひど ライトがいじめるぅ」リンが泣きまねをした。


「繊細な人をからかうんじゃありません」マリアがライトとレオンをたしなめた。


(マリアは年齢不詳で良かったぁと心の中で思いながら、シンプルな「Ⅱ」のワッペンの刺繍を終えていた。)


「ねえ このカレンダーの右下に、『ベルフラワー歴2年』て書き込むとかっこいいと思わない?」ロジャが言った。


「そうするとますます記念品ぽくなるな」ジョン


「じゃあ 祈りの言葉も書き添えよう」レオン


「平和と繁栄」全員一致で決まった。


「さらに 労働と親睦」も付け加えて欲しい」バクー


「えーそれって教訓っぽい」リン


「だけどさ 今年の目標みたいでかっこいい」リック


「なんでも かっこいいで決めるなよ」アロウ


「でも 毎年の目標を(かか)げるのは良いと思うの」レイラ


「じゃそれもワッペンにして毎年張り替える?」リン


「刺繍するのは言い出しっぺな」ライトがニヤニヤして言った。


「え~ 俺達自分の分で手がいっぱ~い」と言い騒ぐタッキー達に手を振って静め、

「全員目標は全員で協力!」 リンは軽くライトをにらんだ。


今年の目標は、メリーが布に下書きしてバクーが刺繍することに決まった。


「私は 刺繍はきらいではないから」バクー

「私も1字手伝わせて。刺繍の練習をしたいから」フローラ

「有志で1文字づつ刺繍するのも親睦になるからいいわね」レイラ


「意外だ。でも刺繍の得意な人・挑戦したい人が多くて良かった。

 これで安心して 来年以後も 年度目標を決められる」ライト


「なんだ 自分ができないから あんな意地悪言ったのか。(きたな)いぞ!」リック


「すまん。ちょっと調子に乗りすぎた。」ライト


※5月5日までは 連休なので朝8時と夜8時の2回投稿です


 5月6日からの平日は 朝7時の1回投稿です


 土日は 朝8時と夜8時の2回投稿します



(参考)

カリグラフィーの数字 https://www.nozomistudio.com/callipara/n-bs04.htm


カリグラフィーの書体 http://lacycalligraphy.g3.xrea.com/shotai.html

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