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二年目のベルフラワー  作者: 木苺
第1章 8月:二つの商業林&植物繊維の利用
13/206

第13話 精麻を作ろう

(麻から繊維をとる3/4)

・乾燥しているキソを床ぶせするには もう一度しっかりとらさなければいけない。


 この作業を「床回(とこまわ)し」という。


 この床回し、ただ濡らすわけではなく、発酵菌の入った水を麻全体に回しかけるという意味を持つ


 といってもベルフラワーはタダの水から始めざるを得ないわけだが・・

 同じ水を浸かって床回しを続けていれば そのうち この水の中で発酵菌が繁殖して黒ずんで来るかな?


床ぶせの期間は2~3日であるが、この期間は 毎日朝夕計2回 床回しを行う。


その作業のためにこの部屋には 熱泉の湯を配管し、排水設備も整えた。


 発酵の為に濡らすならば、最初から菌の活動しやすい温度に調節した温湯に浸したらどうだろうかという発想からである。


 このあたりは 水漬けと湯漬けの比較実験で確かめる予定だ。


 ちなみに ㋐葛の時に使った藁束を浸して枯草菌を繁殖させた水 

 ㋑普通の藁を煮だしてさましたものも用意してみた。


もし 葛の外皮を発酵させてとる時に作用する枯草菌と 麻の外皮を発酵させる菌とを共用できるならば

この麻床場おとこばを発酵ルームとして 葛・麻共用の作業場とすることができる。


もし 葛と麻とでは作用する菌が違うならば・・・

 この2階全体を麻繊維専用作業場として、葛の発酵と繊維とり作業は屋上と分離せざるを得ない。

 その場合 ゆでた麻はどこに干せばいいのだろう??

  今後の検討課題だ・・・


(目下のところ 葛と麻の共用ルームとして この部屋を設計した(;'∀'))



なぜ床回し作業の場所を「麻床場おとこば」とは別室にしたかと言えば

床回し作業に伴う水気によって雑菌が繁殖するリスクから 麻床場を守るためである。


それゆえ 作業場の通気・乾燥には気を配った。




・床回しの時に キソを浸す容器(「麻舟(おぶね))は 木製である。


最初は 麻をゆでたときの横長の釜を流用しようかとも思ったのだが、釜の上げ下ろしが大変なのに加え、発酵菌を培養した水をためておかなければいけないので 板で新調した。


もしかしたら 適した木材があるのかもしれないが、よくわからないので、とりあえずリンの空間収納の中からヒノキを出して麻舟を作った。



「作業用の桶にヒノキを使うとはぜいたくだなぁ」カックン


「せっかく作るのだから 雑菌が繁殖しにくく 水濡れに強いヒノキを使って 長く使用しようかなと思って」リン


「そして いずれ ヒノキの植林も始めるのだな」ニヤニヤ笑いながらダンカンが言った


「ヒノキの植林に適した土地が見つかればね」リン


「雑菌が繁殖しにくいのはいいけど お目当て発酵菌まで繁殖しなくなると困るよ」ジョン


「うーん そうならないことを祈るわ」リン


リンは心中では(その可能性もあるのよねぇ どうかバイオ君よろしく♡ )と

困った時のバイオ君頼みをしていた。



麻床場おとこばの麻は2・3日で発酵がすすみ 繊維の剥ぎ取りができるようになる。


⑨麻はぎ:(麻はぎ前にもう一度 発酵菌入りの水をくぐらせておく)


之にはコツがいる


まず根本から5センチくらいのところで 下向きにぽきりと折って下側の皮を15センチほどはぐ

次に 先ほど折ったところから5センチほど中に入ったところを上向きに折って上側の皮をはぐ


そして上下の皮を重ねて持って 一気に先まで皮をはいでいくのだが・・・


ポイントは

・左手でしっかりと麻を押さえて 上下の皮の端を順に剥いでそろえるまでずれないようにしっかりと握っておくこと


・端を折る時は 思い切りよくぽきっと折ることだ。


とわいえ 最初はおっかなびっくり折り曲げて ぐにゃけて、ずれたり、皮がバラバラさけてしまって先がもつぼれたり(こうなると 先まで剥ぐことができずに途中でからまってしまう)


上下の皮がそろわず ずれたまま皮を()くと やっぱり途中でからまって・・・


・太いのは力がいるかなと細い茎を選ぶと かえってぐにゃけるorz


・名人は リズミカルに 

  (下に)ポキツ (上に)ポキッ ぽい(皮のはがれた先端を捨てる) 


   しゅー しゅー しゅー と剥ぎながら「の」の字に剥いだ皮を置いていく。


 この「ポキッ ポキッ ぽい、しゅー しゅー しゅー ぽい(剥ぎ終わった茎=麻殻を捨てる)」の繰り返しで次々と はがれた皮が積みあがっていく


・名人は 一度に剥ぐ量が均一になるように考えて 太いの細いのを組み合わせて2・3本つかみ取る


・はがれた皮は見た目 ひものようにべちゃっとしている

  (一掴み分の麻の繊維というか皮というかそれが一体化している)

  (剥ぎ取られているのは 靭皮を中心とした麻の繊維だ)


・この作業をするとき 麻の茎は表面がぬるっとしていて、作業中に手に 何とも言えない香りがつく

 (発酵した表皮の臭いですね)



(9.5)「の」の字に積みあがった 紐状の麻の皮は 乾燥しないようにシートを(かぶ)せて待機させる

    麻はぎの時に発酵が不十分だったものは、再び発酵菌の入った水をかけて寝かせる


 麻繊維の出来ばえには この発酵の度合いが重要らしい

  このあたりになってくると ベルフラワーの面々には未知の領域です

  今は とにかく 繊維が欲しい!の一心なので(;'∀') (-_-;) 



麻挽(おび)き: 麻はぎをした繊維から不純物を取り除く作業


・麻挽には 手挽きと機械挽きの2種類がある。

 手挽きの場合


細長い板(おびき台)の上に剥ぎたての紐状の皮を置く

 板の端には突起があって そこに板からはみ出した部分をひっかける


 この板は 作業をしやすいように手前が少し高くなるよう足と台座がついている。


麻挽台おびきだいの上に乗った紐状の麻繊維を、竹を半分~3分の一に割った「ひきご」で なでるように手前から奥へとすりおろす。


この「ひきご」は 生竹製ならば1日単位の使い捨て、乾燥させたものなら繰り返して使える、鉄製ならば長く使うことができる。


というわけで 最初は 竹で使いやすい形状を見定めてから、鉄製のものを作った。

ドーリとドワーリンが竹の加工もやすやすと行うのを見て、アロウはすっかり二人のファンになってしまった。

 細工師であるアロウは、あらゆる素材を使いこなして 大型器具も小さな道具もやすやすと作り出す二人に尊敬の念を抱くとともに 惚れ込んでしまったのだ。


この麻挽きを行うことにより、紐状だった麻繊維の束は ペタッとした1枚の皮になってしまう。


名人が麻挽を行うと、透明感のある艶のある切片が 麻挽台の上にはりついて

それはそれは美しい。


ひきごの縁には、黄色い泥上の「麻垢おあか」と呼ばれるものがこびりつくので これを麻挽台おびきだいの縁を使ってこすり落としながら作業を続ける。


台にはりついた 麻挽き後の麻繊維は、台からはがしても ばらけることなく しっかりと1枚の皮のようにくっつきあったままだ。


「これを 縦横に重ね合わせてプレスしたら パピルス紙のように これも紙にならないかなぁ」ジョンは渇望の籠った声で言った。


「だめよだめ 今年は全部 糸と布にするの!」

休憩かたがた様子を見に来ていたメリーがあわてて言った。


残念そうな声でジョンはこたえた

「うん 服地問題の重要性はわかっているよ。

 麻から紙をつくることができても パピルスから布ができるかどうかはわからないからね」


「よかった。ちゃんとわかってくれていて」ほっとした声でメリー 


・麻挽き作業はまだまだ続く

  板の長さの分だけ 汚れをこすり下としたら

  麻挽き済みの部分を手前にひいて、まだ紐状の部分を台の上にもってきて

  また 挽きおろす。


 麻を曳くときに、一本調子に汚れをこすりとっていくと、当然の如く終点部分に汚れがたまってしまう。


 結果的に 麻挽き部分をずらすと、板の長さごとに横縞ができてしまう

 手で触っても 別にそこだけ汚れが残っている感触はないのに・・


名人のコツは 手前から奥へと「ひきご」を押すときに、徐々にひきごを浮かし気味にすることにより 汚れを横に逃がして 奥にたまらないようにするのだ。

そうすることにより 麻挽き台の長さと同じ縞模様がつかなくなる


なお 麻の繊維そのものに 青みがついていることがある。

これは 自然の色なので 繊維にしたあと洗うと消えていくそうだ。


端まで麻挽をしてしまったら 今度は、最初に手前側で会った部分を端までていねいに麻挽きする。


尚 麻挽きの時は 根元から先へとひく

逆向きに引いてしまうと けば立ってしまう。


こうしてきれいに細長い切片(まるで板状のこんぶのよう)になった精麻を干す。


この手挽き作業は 片膝を丸めた布団の上に載せて 手元に体重をのせるようにして作業するのだが・・


「足が痛い」タッキー達が悲鳴をあげた。

 日ごろ とることのない姿勢ゆえに辛いのだ。


というわけで あとで述べるようにドワーリンが 麻挽き機械を作った。


麻掛(おか)け:

  麻挽きしたあと、3~4日竿に欠けて干す

  これは室内干しが良いそうなので 風通しの良いクリーンルームを用意した。


精麻は 薄い金色をしている。

 これを漂白して白さ自慢をする商売人もいるようだが、

 そういうものは残留漂白剤により どんどん繊維が弱くなって切れやすくなるから要注意だ。


⑫この精麻を適度に裂いて、1本取り あるいは2本取りのより糸にする

 (もちろん手作業で)


 あるいは 経糸をより糸 横糸を撚りをかけない糸に紡いで機織りをする


 精麻の状態で保存して 適宜 用途にあわせて加工していくのだ。


 もちろん 麻農家は 客の要望に応じて 栽培する時 茎の太さを加減するために植える間隔を調整したり、精麻にするときに 3本をひとまとめにするか5本をひとまとめにするかなど調整しているようだが・・


このあたりは おいおいに ベルフラワーでも工夫していくことではある。


今現在は とにかく 糸と布ができれば それ以上のことは要求できませんの状態だが(;'∀')


・麻はぎ後に残った軸の部分(麻殻)は、再び屋上で乾燥させてから 

 2階の真ん中の物入(葛などと書いてある部分)に収納することになった。


 豆のツルの支えになったあとは、農業用として ティティの管理下である 南棟の「子供作業班の集会所」に置かれることになるであろう。


 しかし 未加工の麻殻は ここで保管して クラフト素材やその他加工品原料として提供していくことにした。


(参考)


野州麻紙工房・野州麻炭製炭所 野州麻〔公式〕https://yashuasa.com/free/3

  作業に関して 細やかに教えて下さった大森氏に心から御礼申し上げます。

   もし 内容にまちがいがあれば それは筆者である私の責任です

   それと この作品は あくまでもSFファンタジーなので リアルをもとに改変した創作部分と

   まぜあわさっていることを ご了承下さい。 m(__)m

 


群馬県 岩島麻保存会 http://jimoto-b.com/1942 


一般社団法人「伊勢麻」振興協会 https://www.iseasa.com/hemp

 


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