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ただそれだけでよかったんだ  作者: モモコル
6/6

 今日は週明けの月曜日、さらには定期考査という憂鬱なのに加え土曜日にメッセージのやり取りを一度だけした加奈と顔を合わせなければならない。

 そのせいもあってか普段より20分も遅くに目が覚めた。寝坊はしたが急いで支度すれば遅刻するほどの時間でもなかったため、欠かせないシャワーだけは浴び制服に着替えネクタイを締めつつ階段を降りる

 「今日も乗せてもらうんやったら、遅れずいきや」

 「うん分かってる」と母親に返し、今日はコーヒーも飲まずに家を出る。

 雨の日はあかねのお母さんに一緒に車に乗せてもらえることになっているので、寝坊した日が雨なのはラッキーであった。

 「いつでも乗せてあげるよ」とあかねのお母さんは言ってくれるのだが、部活も入っていないので少しは体を動かす理由が欲しいのと、「さすがにそこまで甘えたらあかんで」と母親にくぎを刺されたためロードバイクで通っている。

 「行ってきます」とリビングに向け声をかけ返事を受け取る前にコンビニで買ったビニール傘を差して玄関を閉める。

 カバーをかぶせられたロードバイクを横目に学校とは反対方向のあかねの家に向かう。

 母からはビニール傘はすぐ壊れるんからちゃんとしたやつ買いなさいとよく言われるが、何となくビニール傘にぶっきらぼうなかっこよさを感じる。

 ほとんどの男子生徒がビニール傘を使っているため僕だけの気持ちではないだろう。

 冬になると同じような理由で防寒のために軍手を使っている、ただし彼女からのプレゼントのおしゃれな手袋をしている生徒もいるため、軍手をしていない方が一種のステータスなところはある。

 則之は付き合ったのが冬も終わりかけだったので去年は軍手を使っていたが、順調にいけば今年の冬は軍手を卒業するだろう。


 あかねの家の前にはすでに車にエンジンがかかった状態で止まっていた、遅れたかなと思いスマートフォンの画面を確認すると8時10分、自転車では30分はかかる距離ではあるが車だと10分ぐらいでつくのでだいたい出発の時間かなと思い少し小走りで近づいていく、運転席には誰もおらず後部座席に人影が見える。

 ちょうど車の前についたときにあかねのお母さんも家から出てきた。

 「いいタイミングね、健史君も乗っちゃって」と家の鍵を閉めつつ言われたので、後部座席のスライドドアを開けながら「おはよ」とあかねに声をかける。

 「おはよ、テスト勉強した」と学生にとってはテスト当日の決まり文句のような挨拶をあかねが返してきたので、

 「まぁまぁ」とこちらも決まり文句の二つの内の一つで返しておく。


 雨なので少し道も混んでいたが、ホームルーム開始の5分前には学校についた。

普段はあかねのお母さんが、あかねを教室まで連れて行くのだが今日は僕がいるため、

 「健史君あかねをよろしくね、二人ともテスト頑張って」と声をかけ校門の前でUターンして帰っていった。


 あかねを一組の教室に送った後二組の教室に入る。

 テストのため普段とは違い出席番号順に並んで座る。

 そのため高木、橘、谷口の順に並ぶので、則之が僕の前にすでに座って最終確認なのか教科書に目を通していた。

 加奈は名字が岡田のため少し離れた席で最前列に座っており、一組によってから来て後ろのドアから入った僕にはまだ気づいていない。

 かばんを机の上に置き「則之おはよ」と則之に声をかける。

 「おう、たけおはよ」と答える則之の声を背に受けながらそのまま通り過ぎ、最前列の加奈の横に行き 「おはよ加奈、勉強したか」となるべくいつも通りのテンションで声をかける。

 「全然してない」と決まり文句のもう一つで返してきたので

 「うそつけ」と続ける。見た感じ土曜日のことなどみじんも感じない笑顔を見せてくれたので、ほっとした気持ちで席に着く。

 席に戻るときに則之が笑顔を向けてきた。こうゆうときに何も言ってこないのが則之の良さである。

すると廊下から誰かの走る音が近づいてきて後ろのドアから「あぶなー、間に合った」と谷口が駆け込んできた。

 8時29分である。

 「谷口勉強したか」と一番ドアの近くにいた井上という丸坊主で眼鏡の野球部員が聞くと、

 「全然、勉強する前に部屋片づけようとしたらそのままマンガ読んで土日終わった」とあっけらかんと答える。

 谷口は加奈と違い本当にしていないのだろう、谷口の成績を知っている生徒はみんな心で思う。

 「まぁ何とかなるやろ」と誰に向けるでもなく声に出しながら谷口が僕の後ろの席に着くと。

 鐘の音とともに須藤先生が「座れー」と言いつつ教室に入ってきて、学生にとっての戦いが始まる。


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