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ただそれだけでよかったんだ  作者: モモコル
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 来週の月曜日から定期考査が始まる土曜日

 今日は定期考査前ということで部活も休みになり、則之、谷口、加奈、美穂と街の図書館でテスト対策をしている。

 あかねは目のこともあり僕意外とはそこまで親しくなく、元来の人見知りも合いまってこのメンバーと集まるときは基本的には来ない。

 勉強しているといっても谷口以外は日ごろから宿題をきちんとやっているため今更焦ることもないが、谷口は二日前にもかかわらずノートを写させてくれと言ってくることからもわかる通り、赤点ぎりぎりを低空飛行している。

 加奈は少し派手な見た目とは裏腹に成績はよく僕とあまり変わらない、志望校は東京の大学だと言っていた。

 そのために今から学費をバイトしながら貯めているのだから加奈のことは尊敬している。

 「別に東京いかんでも大阪近辺にもいっぱい大学あるやん」と浮かんだ疑問を聞いてみたこともあったが。

 「実家にいたくないねんな」と伏し目がちに母親とうまくいっていないことを教えてくれた。

 「内緒やで」と最後は明るく締めくくる加奈に「そっか、一緒に勉強頑張ろな」と他人が家のことに関わるのも良くないので、さらっと返しておいた。

 

図書館の長机の対面で「教えたろか?」と則之が美穂の問題集をのぞき込みながら言っているが、お前ら文理別やからやってる科目別やろと心の中で突っ込む、「うん教えて」と美穂が数学Ⅱの問題集を見せていた。

 「そこの学生さん、いちゃいちゃ禁止ですよ」と教科書をメガホン代わりに谷口がおちょくるということなどがあり時間は過ぎ、ふと壁にかかった時計に視線を向けると3時を少し過ぎたくらいであった。

 あと2時間ぐらいかと閉館までの時間を計算して、気分転換に違う教科に替えようかと問題集を閉じると、

 「たけってあかねちゃんと付き合ってんの?」と加奈が手を止め勉強に飽きたから話題を探すように唐突に聞いてきた。

 「付き合ってないよ」事実だけを伝えると

 「たけまで裏切らんよな」と谷口が鋭い目線でくぎを刺してきた、則之と美穂がが付き合ったときは裏切り者だとさんざん則之を罵っていたが、次の日の放課後ラーメン大盛りをおごってもらい持つべきものは友だと言っていたのが4ヶ月ほど前である。

 「裏切りってなんやねん」と口を開きかけた時には、

 「谷口は黙っといて」と加奈が図書館なので声は小さめに一喝した。

 「でも好意はあんねやろ、じゃないとあそこまでいくら幼馴染やからってやらんやろ」と加奈が詰めてきた。

 「好きって気持ちもなくはないけど、正直あかねとそういう関係になるのが想像できひんというか、、」とはっきりしない僕に少しいらだったのか、

 「でも一生こんなん続けていかれへんやろ、同じ大学行ってまた同じことしていくん?」加奈の口調が強くなる

 「そんなん分らんけど、とりあえず今はこのままでいいねん、それに加奈には関係ないやん」そんな加奈に触発され僕も少し熱くなり、突き放すように告げる。

 加奈が何か言い返そうと目を開くがその一瞬後には少し悲しそうな眼をして「そうやな」とつぶやき、視線を問題集に写しまた手を動かし始める。

それ以降誰も口を開くことは図書館の閉館を告げるアナウンスが流れるまでまでなかった。


 みんなと別れて誰もいない家に「ただいま」と誰かいても聞こえないような声量でつぶやき、汗をかいたためシャワーを浴びた後自分の部屋のベッドに濡れた頭のまま寝転がる。

 今日加奈に言われたことをシャワーを浴びている間もずっと考えていたが、正直答えが出ない。 

 あかねはどう思っているのか電話して聞いてみようかと、短パンのポケットをまさぐりスマートフォンを出すがなんて聞けばいいかもわからず、メッセージアプリを起動し加奈に「今日はごめんな、言い過ぎた」とだけ送り

 気分を変えようと音楽のストリーミングアプリを開き最新のヒットチャートを流す、様々なラブソングが流れてくるがそのどれもがあなたと一生そばにいたい、あなたがいるだけでいいといった歌詞ばかりだ。

 いうのは簡単だよなこれに共感できる人は未来を鮮明に想像せずにファンタジーと混同させているんだろと冷めた気持ちでいると、スマートフォンが震え画面の上部に加奈から「大丈夫、こっちこそごめん」と簡素な文がメッセージアプリの通知として表示された。

 視線だけをその文に走らせその後通知をスワイプで閉じ、目もゆっくりと閉じる。


 

 

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