ヒキコモリ兄!弟(勇者)・弟嫁(聖女)・女神様に困ってしまう!
28歳独身、子供の頃の夢は勇者になる事でした。
しかしいかんせん俺は内気な男だった。
冒険者として才能のある弟、内気な俺と違い陽気でコミュ力も抜群な弟。
順調に冒険者としての経験をあげていく弟を見ながら俺はいつしか家に引き籠るようになっていた・・・。
自室に閉じ籠もり部屋で表面を削り平にした自作の木の板に小説を書く日々。
もう10年くらい外にでていない気がする。
父と母はそんな俺をとても愛し続け面倒を見てくれている・・・ごめんよ、母さん、父さん、こんなどうしようもない息子を持って・・・本当に申し訳ない。
そんなどうしようもない俺が住む家がある日騒がしくなる。
固く閉じられた俺の部屋の外、そう居間から楽しい声が聞こえてくるのだ。
「・・・・なんか楽しそうな・・・・どれどれ」
少し興味が沸いた俺は静かに扉に近づくと耳を扉にくっつける。
(・・・・・そうですね~・・・なんですか~、知りませんでした~)
「・・・・・・・あれ?お客さんかな?母さん以外の女性の声が・・・・ま、いっか」
交友関係の広い母と父と弟だ、お客もそりゃ来るだろうと俺はベッドに寝転がりそのまま眠りについた。
・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・トントン・・・・・トントン・・・・・
・・・・・・・・・トントン・・・・・・・トントン・・・・・
扉を誰かノックしている、寝ていた俺はその音でベッドから起き上がった。
「・・・・・ん?母さんかな?晩飯か?」
視線を窓にやり外を確認すると夕焼け空が見えた、どうやら晩飯の時間らしい。
俺は少し大きめの声で扉に向かい声をかけた。
「は~い、すぐ行くから」
すると扉の向こうから聞き覚えの無い声が聞こえて来た。
「あ、はい、晩御飯とお義母様が」
(・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?)
俺は幻聴か?と耳を指でホジホジして確認の為に再び声をかける。
「・・・・・・・・・母さん?」
扉の向こうから再び聞き覚えの無い声が返事を返した。
「あ、いえ、あのグレンの・・・つま、あ、まだつまじゃないか、彼女です」
(・・・・・・・・・・・ん?・・・・・・・・んん?いま・・・・つまと?・・・つま?・・・・妻?・・・え?ちょっと、まて、グレンは弟の名前だ、いま扉の向こうの見知らぬ女性と思われる人物は弟の妻だと言った・・・・え?)
ベッドから起き上がり少しパニックになりながら俺は扉のまでウロウロする。
(グレンの妻が何の用だ?・・・・あ、飯か・・・いやいや、その前にグレンの妻はいつグレンの妻に?・・・・いや、まだ彼女だと言ってたな、という事は彼女はグレンの妻になる予定の彼女であってグレンはまだ独身だという事で彼女はまだ妻では・・・・・・うん、頭がこんがらがってきた!!)
俺は扉のまえで扉を開けようか否かを考える。
10年くらい家族以外の人間と会話していない俺にとって10年ぶりに会話する人物が弟の彼女(弟の妻予定)とは少し難易度が高すぎないか?せめてリハビリという意味で隣のおばちゃんから始めたい。
「あの~お義兄様?」
(あ・・・・・何か答えねば・・・・えと、えと、なんて答えれば・・・落ち着け俺、俺なら出来るはずだ、数多くの選択肢から最善を選ぶのだ、そうすれば自ずと道は開けるはず!)
俺はスーと息を吸い深呼吸をする、そして落ち着いて扉の向こうの弟の彼女(弟の妻予定)に返事を返す。
「・・・・・グ、グレンの兄のガイと申します、は、初めまして」
(よし、まずは挨拶だ、基本だからな、挨拶から始めれば大抵の対人問題は解決できるはず)
だが、扉の向こうの彼女から発せられた言葉に俺は完全に意表を突かれた。
「お義兄様?挨拶の前にまずは扉を開けてくれませんか?」
(なるほど、的を得た指摘ですね)
俺は勇気を出して扉を開けるとそこには栗色の髪をもつ綺麗な女性が笑顔で立っていた。
「・・・・・・・・」
「お義兄様、サーシャと申します、お義兄様と呼ばせて貰っても宜しいでしょうか?」
「・・・・・・はい」
「グレンからお義兄様は寡黙な方だと言われましたが」
「・・・・・・はい」
「13年間も家から一歩も出ていないとも聞いておりますが」
「・・・・・・はい」
「食事の後でお散歩しませんか?」
「・・・・・はい?」
「良かった、じゃあ食事のあと」
「いやいや、「はい」じゃなく「はい?」ね?」
「ああ、食事の前が良いですか?」
「・・・・・サーシャさんは疑問文って聞いた事ないかな?」
サーシャさんは首をコテっと横に倒した後に
「・・・・・つまりは食事はいらないから散歩にいこうと?」
「・・・・・・えぇ」
(あれ?なんだろこの子?なんか・・・・なんか噛み合わない!)
「お義兄様?食事はどうなさるのですか?」
「食べます・・・・」
「はい!」
サーシャが元気に返事をし体を半身にして「どうぞお先に」というジェスチャーを示す。
俺はなんか納得できないという感覚に襲われつつ居間に向かった。
ちなみに居間を見ると父はニヤニヤし、母と弟は机に顔を伏せ肩を震わせ声を押し殺し笑っていた。
「やあ兄さん久しぶり、兄さんの顔を見るのは数か月ぶりだね元気そうで良かったよ、どうだいサーシャは良い子だろ?」
「お、おう、お前も元気そうでなによりだ・・・えと、良い子と巡り合えて良かったな、結婚おめでとう」
「ありがとう兄さん」
そこから食事が始まりサーシャさんと弟の馴れ初めを聞いた。
なんでもサーシャさんと弟は冒険者PTの仲間らしくどこぞの貴族様のお嬢様で、このたび弟がなんか知らんが物凄く強い魔物を倒した功績で爵位を貰ってようやく結婚の許可が下りたのだとか。
「へ~すげえな、爵位ってことは貴族様か~やっぱグレンは凄いやつだよ、自慢の弟だな」
「ははは、何言ってるんだ兄さん、兄さんは俺より才能も強さも上だろ?」
「お前それ俺とお前が10代の時の話だろ?今はもう・・・ほら、俺は外に出てないし、修行も何もしてないし剣の振り方も忘れちゃったよ」
確かに俺は自分で言うのも何だけど剣はそこそこ扱えた。
魔法もそこそこ使えた。
しかしあくまでもそれは10代の時で10数年自宅に引き籠った今ではそんなの忘れてるし完全に腕も錆ついている。
「兄さんもう一度修行とかすれば?兄さんならきっと2年もあれば昔のように・・・いや、昔以上の使い手になれると思うよ?」
さすがにそれは俺を買い被り過ぎだ。
俺は中途半端な才能に中途半端なヤル気しかない中途半端な男なんだよ。
・・・・うん、話が変な方向に行く前に話題を変えるか。
「グレン、魔物って何倒したんだ?物凄く強い魔物だろ?」
「ああ、北に住んでるドラゴンだよ、凄く強くてかなり苦労したんだ」
「へ~ドラゴン倒したんだ、それはすげ、え!?ドラゴン倒したの!?マジかお前!すげえ所の話じゃないぞ!勇者じゃんそれ!お前勇者になったの!?」
弟が「えへへ~」と鼻を指でポリポリと掻く。
いやエヘヘ~じゃねえよ、ドラゴンってこの世界に6頭くらいしかいない超大物じゃん!そりゃ爵位貰えるわ!
「まあでも僕1人の力じゃなくサーシャとか他の仲間も居たしさ」
ああ、なるほど仲間と力を合わせてね、まあそりゃそうか。
とその時、サーシャが再び首をコテっと横に倒し。
「え?でもグレンは後半は聖剣もって1人で戦ってましたよ?ビックリしましたよね、急に空から光った剣が降りてくるんですもの」
・・・・・・・・・・・・・??????????
え~と、この子は何言ってるの?聖剣って御伽噺で聞くあの聖剣かい?いやいやいやいやいや!!俺の弟が称号的な意味の勇者じゃなく本物の勇者だと?それは流石に盛ってるわ、話盛ってるわ。
俺は弟に向けて「この子って面白い子だね」的な顔をすると。
「あの時は本当に驚いたよね、僕もまさか聖剣が降って来るとは思わなかったよ、あ、兄さん聖剣持ってみるかい?これ」
・・・・・・・・・?????????????????????
弟が俺に仄かに光る剣を差し出してますが・・・・・え?これ聖剣なの?さっきからなんとなくキラキラしてる剣を持ってるな~カッケーと思ってたけど聖剣なのそれ?聖剣って俺も持てるの?選ばれし者だけが持てるとかじゃないの?え?持って良いんですか?
「・・・・・・それ聖剣なの?」
「そうだよ、神託も受けたし、がんばれ~みたいな感じの神託」
「頑張れ~って神託きたの?」
「うん、女性みたいな声だったよ、女神様かもね?」
「女神様が頑張れ~って?」
「うん、期待してますとも言われた」
「そうなんだ・・・・頑張れ~って・・・・そうなんだ、ふ~ん・・・・聖剣って俺も持てる物なの?」
「たぶん兄さんもいける気がするんだよね、僕の兄さんだし」
「それ俺が資格なかったら何か危険な事にならない?俺になんか死が訪れる予感がバリバリするんだけど、聖剣ってなんかそんな感じしない?選ばれし者だけがって」
弟が少しン~と考えて自信満々な感じで断言する。
「大丈夫だと思うんだ、僕の兄さんだし!」
「いや、あの、その僕の兄さんだしって根拠は横に置こう、なんか根拠がそれだと果てしなく不安で失敗の道しか見えない」
「そうかな?僕は大丈夫だと思うんだけど、ちょっとだけ指先で触れて試す?」
「・・・・・・・・・・ダメだった場合のペナルティによっては指先でも大変な事にならない?」
「そんなに不安なのかい兄さん?」
「逆に聞くけど不安にならないのかい弟よ」
「じゃあ女神さまに聞いてみる?」
「え?そんな簡単に女神様と会話できるの?」
「うん、僕は神託を受けた時にしか声を聴いてないけどサーシャが女神様と話せるし」
「・・・・・・・・・・・・・・・・?????????????」
弟だけじゃなく弟嫁(予定)もなんか凄い事になってるの?
俺はチラリとサーシャさんを見る。
「お義兄様、女神様に聞いてみましょうか?」
「・・・・・お願いします」
サーシャが天井を見る。
「女神様いますか~?」
「そんなフランクな感じの呼びかけで良いんだ・・・・・」
【はい、呼びましたか?】
「おう!?なんか頭の中で声が響いてる!?これ女神様なの!?」
「はい、女神様ですお義兄様、あ、女神様、聖剣って選ばれし者以外が触れたらどうなるんですか?」
【消し飛びますね】
「お義兄様、消し飛ぶそうです」
「笑顔で消し飛ぶって・・・え、やだ怖いこの子」
満面の笑みで消し飛ぶって、てか俺も聞こえてるしいちいち言わなくても・・・・。
「ほら、やっぱし兄さんは大丈夫だよ、似合うよ、本気だせば光る鎧も出るんだよ、ブワ~って体に」
「ブワ~の前に今の消し飛ぶってのを聞いて兄さんは大丈夫ってお前の中での兄さんって単語は無敵人間って意味なのかい?俺の中での兄さんは兄弟の中での産まれ順で呼称される意味なんだけど?」
「だって女神様の声が聞こえてるんだろ?僕は聞こえないよ?」
「・・・・・・・・・・・・・え?聞こえないの?女神様聞こえますでしょうか?」
【はい、聞こえます】
「なぜ私に貴女様の声が聞こえるのでしょうか?」
【さあ?】
「さあ?って・・・・・サーシャさん?何故聞こえるのでしょうか?」
「さあ?」
「えぇ・・・・・」
う~ん、少しイラっとしたけどサーシャさんの困った顔が可愛いから許す。
しかし女神様の声が聞こえるから資格有りと判断してもいいのか?
だって当の女神様本人の回答が【さあ?】だぜ?不安を通り越して嫌な予感しかしない!
「女神様?私は興味本位で聖剣を持たない方が良いですよね?」
【そんな事を私に聞かれても知りません】
「ですよね~」
【どうしても持ちたいなら試してみてはどうでしょうか?】
「消し飛ばない様にできるんですか!?」
【え?資格がなければ消し飛びますよ?】
馬鹿だろこの女神、会話のキャッチボールが出来てねえぞ。
こっちが優しく投げた球を全力ストレートで投げ返してくるぞ。
「あの・・・・・僕に資格の有無があるとか分かります?」
【聖剣を持てば分かりますよ】
いや、だから全力で投げ返すなよ!優しく投げろよ!
「あの、消し飛びたくないので消し飛ばずに済む方法で確認がしたいのです」
【メンドクサイ】
え?なんて?
「メンドクサイんですか?」
【はい】
「・・・・・・・・・あ、はい、じゃあ・・・ありがとうございました、聖剣を持つのは諦めますね」
【え?なんで?】
「え!?なんで!?」
うん分かった、本物の馬鹿だコイツ。
「なんでって・・・・・消し飛びたくないから?」
【男は度胸】
「お前マジでぶん殴るぞ、あ、すいません、つい本音が」
やべ、つい本音が口から洩れた。
【冗談です、場を和まそうとする女神の粋な心意気です】
「和むというか殺伐としてますけどね、しかし女神様に暴言を吐いたことは心から謝罪します、申し訳ありませんでした」
【いえ、こちらも少し度が過ぎました】
よかった流石は女神様、心が広い。
【・・・・・・・あれ?試さないの?】
「え?今の流れで試すと思ったんですか?」
【そんな流れになってましたよね?】
「・・・・・・恐らくですけど、女神様と矮小な僕達人間とは理解している会話の流れが違うのでしょうか?そうなら謝罪します」
【消し飛ぶか消し飛ばないかですよね?】
「はい、ありがとうございました、サーシャさん?もう女神様は帰られるそうです、お見送りしてあげてください」
【ええ~】
「後で何か果物を貢物として置いておくので帰ってください!サーシャさん早く!早く女神を天界か地獄に送り返して!」
「分かりましたお義兄様、女神様?もう必要無いので帰ってください」
「他人の事は言えないけど君も大概失礼な子だね・・・・・」
【ええ~楽しめると思ったのに】
教会の本部に女神は馬鹿ってチクるぞ・・・・
「お義兄様、女神様は帰られたようです」
「そう、ありがとうサーシャさん」
「兄さん、女神様はなんて言ってたの?なんか仲良さそうに話してたけど」
「うん、まあ、俺には聖剣は持てないみたいだな」
「え~女神様と話せるし僕の兄さんだし大丈夫と思うんだけどな~」
「まあ、勇者はお前だし、やっぱり聖剣は勇者の物って昔からのお決まりだしな、仕方ないよ」
「そっか・・・・あ、女神様って綺麗な声してたでしょ?」
「うん、声は綺麗な声色だったな」
「声を聴くだけで神々しい波動が伝わってくるよね!」
「う~ん、そうかな?まあ、そう・・・・なんだろうなきっと・・・・」
ここで父が口を開く。
「そうだガイ、引っ越しの準備をしておけよ」
「・・・・・・・・・・へ?引っ越し?」
「ああ、言うのを忘れていたよ兄さん、僕ね領地も貰ったからそこに引っ越そうよ」
「え?お前領地も貰ったの!?あ、そっか伝説の存在のドラゴン討伐だもんな、そりゃ貰えるか、って事は貴族でも領地持ちの貴族か~、はえ~」
「うん、いま兄さんの家は妻達が作ってるからさ、僕の家の隣だよ!父さん母さんの家も僕の隣だよ!皆これからは家族で力を合わせて領地を」
「待て待て、少しまて弟よ」
「ん?どうしたんだい兄さん?」
・・・・・・・・・・・・あれ?いま会話の中に「妻達」って言葉が聞こえた気がしたが。
俺はサーシャさんをチラリと見る。
サーシャさんが弟の妻では?あ、そうか貴族だから妾的な感じで妻を複数か、うん、聞いた事あるな。
とすると弟には既に妻が複数居ると・・・・・う、羨ましくなんてないんだからね!
「・・・・・・・・弟よ、妻達なのかい?ここにサーシャさん居るでしょ?妻達って事はその領地に複数人まだ妻が居ると?」
「うん、サーシャにドラゴンのリサでしょ、あとは天空人のアロ、獣人族のロルも居る」
「あの、ちょっと待ってね、1人づつ消化していこうか?あの~、ね?なんていうかお兄さんの処理が追い付いてないからさ?1人づついこう、まずドラゴンのリサっていうパワーワードはなんだい?」
「僕が倒したドラゴンのリサだよ」
んんんんんんん~~~~~~~~~勇者になるってのは知能指数が女神様と同化するって事なのか?
質問した内容の答えが謎のまま1mmくらいしか解かされないまま返って来たんだが・・・・・。
「うん、弟よ、それ答えになってない、謎が謎のままで完結しちゃってるからね?お兄さんに答えをくれないかい?君が倒したドラゴンのリサがなぜ嫁になってるんだい?」
「ドラゴンを倒したら僕が強くて惚れたんだって」
「あ、そう・・・・・うん、いや、言わんとしている事は分かるんだ弟よ、だがどうしてもドラゴンが女性になってお前の嫁になる・・・・・いや、まあ分かった!それは良い!だがあれだ、ドラゴン倒してお前は勇者の称号貰って領地貰ったんでしょ?・・・・・ドラゴン倒して無いけど良いのかいそれは?」
「え?」
「え?ってお前・・・・王様とか知ってるんだろ?」
「え~と、サーシャ、僕って王様に言ったっけ?リサがドラゴンだって」
サーシャが顔をコテっと横に倒して言った。
「言ってないですね」
「そっか、兄さん言って無いですね」
・・・・・・・・・・・・・・・あれ?我が自慢の弟にもバカ疑惑が出て来たぞ?
ちょっと待て、だがこれは・・・・アウトな案件ぽいが当人が黙ってればセーフになるのでは?
限りなくアウトだがセーフになり得る案件では?
俺はチラリと不思議そうに俺を見つめる弟とサーシャを見た。
うん、大丈夫だ、たぶんこの二人は分かってない。
そのドラゴンのリサさんに他言しないように言っておけば多分大丈夫だ。
父さんと母さんはどうかな?理解してるかな?たぶんこれダメなやつだと。
俺はチラリと父さんと母さんを見る、すると父さんと母さんはフイっと俺から目を逸らした。
あ、うん、そうだよね、理解してるよねダメなやつだって。
領地とか狩人業の僕らからしたら凄い事だもんね。
バレないようにどうにかして弟と妻達に理解させるしかないな。
「そうか、弟よ、なあ弟?真の英雄とは己の武勇伝をひけらかさない事だとかつて聞いた事がある」
「へ~そうなんだ、兄さんは博識だね」
「うむ、だからな弟よ、そのドラゴンのリサさんがドラゴンだと言うのは秘密にしておこう」
「なんで?」
「弟よ疑問を持つ前にまずは俺の言った事を脳内で消化してからにしようか」
「え~と、英雄だから自慢してはいけない、だからリサがドラゴンだと言っちゃダメだね」
「そうだ弟よ、それにリサさんが元ドラゴンだと知れると一般の人が怖がるかもしれない、ドラゴンとは本来は畏怖と畏敬の念をもたれている伝説の存在だ、分かるな弟よ」
「なるほど!そうだね!うん、確かにそのとおりだ!わざわざリサがドラゴンだと言いふらす必要もないしね、分かったよ兄さん!」
よし、これで大丈夫なはずだ。
たぶんサーシャさんも・・・・サーシャさん?なぜ顔を横にして困った顔を?理解できてないの?
「サーシャさん?理解できました?」
「・・・・・・・・・はい」
「本当に?」
「・・・・・・・・・・・・・・・はい」
「そう、良かった」
少し不安だが今はとりあえずこれで良しとしよう。
父さんの方を見ると父さんが親指を立てて笑顔でウンウンと頷き俺を見ていた。
「よし、さっきの続きをしよう、え~と天空人のロアさんだっけ?天空人ってなに?」
「天空都市に住んでいた人達で邪神ラノバークによって滅ぼされようとした時に神聖樹グラマーノによって守護され長い年月眠り続けていたんだって、僕がその場所に行った時にそこに安置されている聖典を手に入れようと怨嗟のガイラが来てたんだ、怨嗟のガイラは邪神ラノバークの配下の四天王の内の1人で聖典は全ての神を滅ぼす方法が記されおり」
「待て弟よ!情報量を加減しろ!俺の脳内での咀嚼が間に合わん!」
「え?あ、ロアは1万5000年くらい眠ってたらしいよ?」
「待てと言っとるだろうが!」
え~と、天空都市・邪神・神聖樹?・・・・あとなんだっけ?四天王か、それと1万5000年。
うん、全く分らん。
どんな冒険してるだコイツ、邪神って魔王を飛び越してるやん、地道にいこうぜ弟、魔王さん居るんでしょ?居るかどうかは知らないけど魔王さん居たらどうするの?自分の所来ないで上司の所に先に行かれるって魔王さん泣くんじゃない?いや、邪神が魔王の上司かどうかは知らないけどね?
あとロアさんだっけ?1万5000年眠ってたの?
って事はその天空都市って古代遺跡かい?現役なの?昔話でも聞いた事無いけど?
ん~そこら辺の事を聞いてみるか・・・・。
「弟よ、その天空都市とか邪神とか神聖樹とかさ、聞いた事ないけどどこら辺にあるの?」
「幻影台地って所にあって地下都市デルヘイムで見つけた石板に書いてた、地下都市にはナイアって古代デルヘイム人の姫が居てその姫はアンデッド化していたけどどうにか倒して、いま僕の右手に宿ってる」
「僕の右手に宿ってる!?」
「うん、会うかい?」
「ちょ、ちょっと待て、理解中なのに更に謎が増えて俺の脳がオバーフローを起こしかけている」
え?右手にアインドッデの古代人の姫を宿してるのか弟よ・・・・。
マジかコイツ、勇者ってそんな事もできるの?
右手に姫・・・・まさか左手にも何か宿してねえだろうな・・・・。
「弟よ・・・・左手にも誰か住んでるのかい?」
「怨嗟のガイラが居る」
「・・・・・・・・・・・・・・・・そのガイラさんって四天王がどうとか言って無かった?」
「うん、彼女との戦闘で僕の左手が吹き飛んでさ、彼女を倒したら邪神にかけられた呪いが解けて善なる心に目覚めた彼女は完全に魔素体を回復するまで僕の左手になっててくれてるんだ」
「僕の左手が吹き飛ん・・・・・・OK、また明日話そう、なんか頭が痛くなってきた」
こうして俺の1日が終わった。
明日からどうしよう、部屋から出たくない、引き籠っていたい・・・・・つ、疲れた。




