2 始まりの街サニーロ
うーん、どうも調子が悪い。流石に転生して未開の地に足を踏み入れたばかりとはいえ、コレジャナイ感がすごい。
見渡す限りの広い草原に俺達は立っていた。草の香りや花の香しさが伝わってくる。元々いた世界ではありえなかった光景だ。
「おーい、何ぼーっとしてるのよ?」
紗夜が話しかけてきた。
「いや、ちょっと感動してた」
「ふーん、まぁいいけど」
思えば、こんな気兼ねない会話をしたのも今となっては久しいことだった。
「ところで、これからどうするの?」
「うーん、街を探してみないか?」
やっぱり、街を見つけないことには異世界生活は始まらない。今後の方針を決めた。
「こうやって、ただ歩いているのも悪くないな」
勿論、ただ歩いているだけでは街に辿り着けないのは知っている。しかし、無駄な時間と思われるようなことをしているのもまた悪くない。
暫くして、漸く街に着いた。兎に角、街の中へ進んでいく。冒険者ギルドを探そう。
「街に着いたな」
「これから何するの?」
「冒険者ギルドへ行こうと思う。」
「そっか、いいんじゃない?」
会話を楽しみながら、俺達はギルドを目指して歩いている。異世界転生してから初めて着いた街だ。少し回り道しながらでもいいだろう。この街のことをよく知り、この街の人のことをよく知ることもまた大切なことである。
「お、あれが冒険者ギルドか」
「なんか、テンプレ感がすごいね」
「早速、入ってみよう」
冒険者には少し荒いイメージがあるから少し怖い。
「す、すいません……」
何故か弱腰な感じになってしまった。
「冒険者ギルドであってますよね?冒険者として登録したいのですが」
紗夜ナイス!俺が言いたかったことを代弁してくれたのでよしとしよう。ギルド側のファーストコンタクトは…
「君達2人?やめといた方がいいよ?冒険者っていうのは危険な職業。君たちみたいな華奢な人がやるものじゃないの」
そう言って出てきたのが、このギルドの受付であるサラであった。
「大体なんで冒険者になりたいの?」
全くもってその通りである。しかし、冒険者の危険性は承知の上だ。元の世界では、異世界転生ものの小説は山ほど読んでいた。勿論、空想と現実が違うのも分かっている。しかし、なりたいものはなりたいのだからしょうがない。だから敢えて言おう。
「この世界を深く知る為です。勿論大変だということは分かっているつもりです。しかし、私は冒険者にどうしてもなりたい、というよりも冒険者しかないのです。」
「ええ、私も同じです。」
紗夜からの援護射撃。
「覚悟は揺るがない……か…………分かったわ、良いでしょう。君達を冒険者ギルドに歓迎するわ」
なんとかなった。けどこれからが本番だ。
「ごめんなさいね。君達みたいな若い冒険者も勿論毎年新人として出てくるのだけど、その殆どが大怪我を負ったりしているから」
「そうだったんですか…」
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俺達は改めてギルドについての説明を受けることになった。大まかな内容は想定通りであった。
このギルドがある街はサニーロの街というらしい。簡単に言うと、冒険者の新人が多く集まる街らしい。という訳で、この街にいる最高ランクの冒険者は高くてCランクということだ。とは言っても、街の周辺の魔物達もあまり強くなく住みやすい地方都市という扱いだ。その所以もあり、人も多く住んでいて、この街があるエラルド王国の中では10番目くらいに大きい街だそうだ。正直微妙だと思ったのは言わないでおこう。ギルドのランクは、ポイントを集めれば昇級試験を受けることが出来、合格すれば上がるらしい。勿論例外も存在するのだが……因みに、2人とも最初ということでFランクである。ギルドは依頼の発注や受注、素材の買取等、幅広いことが出来る冒険者の味方だ。上手く活用していくほかないだろう。最初の餞別として、新人装備一式をくれた。ありがたい。
さて、取り敢えず依頼を受けよう。お金を稼がねば暮らしていけない。
「すいません〜早速依頼を受けたいのですが」
「クエストボードにある依頼書を持ってきてください!」
「分かりました!」
これから初依頼。見事に達成しなければ。
「薬草の採取で宜しいですか?」
「「はい!」」
序盤の依頼の定番、薬草採取。しかし、侮ることなかれ。薬草の摘み方から見分け方等に気を遣うので、中々に骨が折れる依頼だ。早速近くの森へ向かう。