四話 大森林の異変
新年初投稿!
遅くなり申し訳ありません
本年もよろしくお願いします
次の日、バルたちはギルドでのクエスト受注・装備の点検、携行品の確認を終え、アノンバート南門から目的地のリハマ沼へ向かっている。その道中、バルとシャミイは警戒をアッシュに任せ、地図を広げながら注意点を確認していた。森の異変を知らせるように、いつもは騒がしい小動物もなりを潜め、不気味な静寂が大森林とバルたちを包んでいる。
「つまり、このラインに警戒線が引いてあって、その周りを正規兵が守っているってことでいいの?」
「ああ、そうらしい。超えようとしたら警告一回で攻撃されるらしいから注意せよだとさ。その割には毒で変異したモンスターやら、住処を追われたモンスターやらが出てるらしけどな」
「ふむ.....その毒霧はリハマ沼からでてるんですよね?」
バツ印の入った池を指で刺しバルに目を向ける。
「いや、正確にはリハマ沼の周りからだそうだ。調査に出た魔術師がそういったらしい」
シャミイの視線を感じながら地図を開かず答える。
「魔術師...ねえ」
その答えは不満だったらしく、含みを持たせた声で返事を復唱するが何かが変わるわけでもない。腹立たし気に路傍の石を蹴り飛ばし吐息を漏らす。
「バルはどう見てるの?」
一般論は信用できないのかシャミイに尋ねられる。よもや正規軍がまやかしで動く事はないだろう。それはおそらくシャミイも分かっている。じゃあリハマ沼の周りで毒霧が発生しているのはなぜか。
「魔術的効果であれば人災、自然現象であれば腐食性の金属鉱床でも掘り当てたか....誰かがモンスターの死骸を埋めなかったせいでヴェノムハザードが連鎖したか....だろうな。こんなとこで魔術で毒を発生させる意味が分からないし、人災の可能性は除いていいと思うけど」
「じゃあ......錬金術師としての答えは?」
「それ答えなきゃいけないか.....?」
「いやなら...いいんだけど」
「.......毒による..いや、やめておく。すまん、あまり気持ちのいい予想じゃないんだ。ただ、普通の剣じゃ恐らく対応できない」
「強化種が出るかもしれないってこと?」
「強化種じゃない、変異種だ。はなから子孫繁栄を放棄したいかれた進化だよ。この話はやめにしよう。これからだってのに悪い未来ばかり見ててもな」
「それもそうだけど、対策するに越したことはないわ」
「そう思って、ほい」
バックパックから短剣を取り出しシャミイに手渡す。
「アッシュと同じ青銅製だ。一応持っといてくれ」
短剣を受け取ったシャミイはいつでも抜けるよう留め金を外してベルトの空きに鞘ごと差す。
それを期にバルは索敵をはじめ、シャミイも続いて口を閉ざした。
そのまま沈黙を貫き、時折地図で場所を照らし合わせながら大森林奥地へとバルたちは歩みを進めるのだった。