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青銅の鍛冶師  作者: 藍沢霧耀
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青銅は鉄より強し クエストに行こう

続きを書きました!

「で、だ。次はどこに行くんだ?正直青銅の材料は足りてるし、火種にする材木も今は近場に残ってるからわざわざクエストに出て取りに行くほどのこともないぞ?」

「あのなあバル、俺たちはお前と違って専業の冒険者なんだぞ?クエストに行かなきゃ生活できないだろ。何回このやり取りをすれば気が済むんだ.....?」

目の前でわざとらしくやれやれとかぶりを振る赤髪の若男の足を無言で踏む。

「ちょっとバルやめてあげて。曲がりなりにもマッシュはパーティーリーダーなんだから。それに鍛冶に必要のないときにもクエストに参加してくれるって約束でしょ、違う?」

沈黙を保っていた少女が横から口を挟みマッシュを踏んでいた足を容赦なく机の下で蹴りつける。

「イテッ.....あー、そういえばそうだったかいえそうですごめんなさい」

はぐらかそうとしたが少女の手に青い輝きが宿ったのを見て即座にごめんなさいした。

「わかればよろしい。と言うわけでバル君を借りていきますね、リーゼさん」

「えぇ、どうぞご自由に!家にいても工房にこもってるか眠りこけてるかの屑野郎ですからね。じゃんじゃんクエストに連れてってくださいシャミイちゃん!何なら一か月くらいでもいいですよ!久しぶりに兄なしで家事ができます」

口をはさむ間もなく話が進んでいるけど、そもそも断るつもりはなくてただからかいたかっただけなんだ。

それが何で一か月も家を空けにゃならんのだ。

「さすがに一か月はいらないかな。バル君一緒にいて困ることしか起こさない」

「ひでぇ........今度から防具作ってやんねーぞ」

「.....私これでもバル君の作る品には尊敬してるんですよ?それを知らないで脅すなんてド畜生ですね」

作品が評価されるのは素直にうれしいのに喜べないのが辛い。それとさっきから何も言えないからってにらんでくるマッシュが怖い。

「わかったって......どうせ今回も討伐以来だろ?それも錆び鉄の」

「それがなんと今回は普通の鉄のクエだ!オーク10頭討伐のクエなのに報酬はいいわで取ってきたわけよ!相場を知らねえ依頼人もまだまだいるもんだなあ」

「きな臭すぎる却下だ。次のクエは」

久しぶりの大仕事とばかりに張りきった勢いを霧散させ、マッシュを一撃で沈黙へ追い込む。

「そうですよね。そう思って付近のいい錆び鉄クエを何個かとってきました」

俺たち冒険者が受けるクエストには効率よく依頼を達成できるようにクエストごとに難易度が設定されている。基本的に珍しい金属が上位に当てられ、身近な銅や青銅、白銅なんかは冒険者なりたての初心者が受ける井戸の調査や薬草採取なんかのクエストが当てはまる。

鉄は青銅の二つ上、いうなれば中堅どころのクエストだ。だがやはり同じ階級であっても依頼の条件次第で階級が上がるクエストがある。錆び鉄とはつまるところ、本来の階級は白銅だが何らかの理由で鉄に上がったクエストのことだ。

俺たちの冒険者としてのランクは鉄、つまり一つ上の鋼階級のクエストは受けれるのだがシャミイの意向で錆び鉄を中心にこなしているのだ。

「なんで場所近いの選んでんだよ....危ないじゃん」

「私もそう思ったんですけど錆び鉄は他にいいのがなくて。今回はおとなしく白銅をいくつか受けますか?」

「それはなんか嫌だ。その点に関してはマッシュに同意だ。腐っても俺たちは鉄級冒険者だぞ?下位ランクの依頼で生活してることがしれちゃあ作品の名声に関わる」

にやりとサムズアップしたマッシュと拳を突き合わせ固い決意をシャミイに示す。こういうアピールも大事だ、シャミイに全権を取られないためにも。

「しょうがない、今回はそのクエを受けよう。マッシュのやつも一緒にだ。ただし、事前調査に今日これから半日かけて入念に準備しよう。ちょっと待てマッシュまだ話は終わてない」

颯爽と身を翻し扉に向かった襟首を容赦なく引っ張る。おかしいな、この時期にカエルはいないはずなんだけど。

「まだなんにかあんのかよバル」

赤くなった首をさすりながら戻ってくるマッシュ。

「一通り終わったら剣を持ってまたうちに来い。明日の朝渡す」

「あぁ、わかったよ。いつも通り?」

「それでいいでしょう。私もいくつか余分に買いたしておきます」

「んじゃあ、明日の九時にボード前の定位置で」

話しが終わったのを確認してシャミイが席をたち出る。それに続いてマッシュも出ようとする。

が、急にバックステップを繰り出した。

「............」

「............」

微妙な間が開いたのち、そのまま何事もなかったかのようにマッシュが出て行った。

「よし、二度目はないと思ってるだろうから今度は二回目もひぱってやろう」

「ほんとバルにいってマッシュさん相手だと子供っぽいよね」

「ガキだからな、俺もあいつも。そりゃあもう毎日が戦いだぜ」

「はいはいそうですね。ほらにいも早く出る!砥石とかいろいろ買い足すものあるでしょ」

「さっすが我が妹。いつの間にかいなくなってると思ったら俺のために準備万端とはなぁ。愛される兄貴もつらいぜ」

「何言ってんの。シャミイさんが目配せしてくれたから仕方なく用意しただけなのに」

身も蓋もない妹の言葉に少し傷つく。

「.........うん、おとなしくいってくる」

そうしてしょんぼりした雰囲気を背負い市場に向かうのだった。

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