青銅は鉄より強し
ぽっと思い浮かんだものを書き起こしました!
珍しく全く設定を考えずに書きました
高らかな金と鎚の打つ音が陽炎の中に響く。
鐘が時を告げるように等間隔に、その熱を押し広げるように力強く鎚が振り下ろされる。
赤熱した青銅が叩き上げられ揺らめく輪郭から刃が生まれた。
再度刃が顔を焼く赤い炎の中に消え、ふいごが大きな影を揺らす。
「3、2、1.....」
素早く金床に焼いた青銅が置かれ同じように鎚の音に棚に掛けられた無数の剣が共鳴する。
しばらくたって、金床に一振りの深緑の両刃剣が出来上がった。一般的な青銅の鋳造ではなく、火と水を使って叩き上げられたものだ。
それを手にとりたった一つの窓から入る月明りに照らす。鍛冶を始めたのは早朝だったが既に二回目の夜を迎えていた。
カタリと見分を終えた剣を金床に戻す。そうして息をついたところだった。
「飯を食べろこの馬鹿者がぁぁっ!!」
「むぐぅっ!?」
首を強引に回され口にぼそぼそした白パンが突っ込まれる。
「それが丸一日放置した白パンの味よ!人の親切を無駄にしやがってぇー!」
目の前で地団駄を踏む分厚い片グローブとエプロンの少女にボケーっとした目を向けながら口を動かす。
「むぐむぐ....んぐ、おはよう、リース」
特に顔色を変えずに挨拶をするとリースは地団駄をやめ、表情を呆れたものに変える。
「......はぁ、何度言っても無駄か。おはようバル。さっさと風呂に入ってきなさい。マリッサとオーベルが次のクエストの話をしたいって来てるわよ」
「さっすが我がパーティーメンバー、俺の行動は筒抜けかー」
うんうんと頷きながら散乱した金属片や道具を片付ける。
「私が伝えといたのよ。こんな夜中に来てくれたんだから待たせない!片づけはやっといてあげるから早く行きなさい」
親指で出口をさすリースに目を白黒させる。
「金貨が空から降ってくるのか....?」
「殴るわよ」
「姉弟子ありがとういってきます!」
あろうことか今まで俺が使っていた鎚を持ち上げるリースに、俺は殴られてはたまらないと一目散に出口に駆け出す。
駆け出した外はすっかり月明りだけが周りを照らす夜になっていた。
いつも鍛冶を始めると二日から三日は工房にこもって寝食を忘れてしまうのは昔からの悪い癖だ。それを直そうという気は今のところないのだけれど。
まぁ、とりあえずはべとつく体を綺麗にしようと頭の手ぬぐいをほどきゆっくり手首を使って振り回しながら風呂場へと向かうのだった。