覚醒の血涙
タップしたあと、スマホに開かれたページは何と言うか「ザ・ファンタジー」なファンタジーファンタジーしているいかにも、厨二病なページだった。
こんなフェイクニュース、このサイトに掲載しても良いのか……。それにしても、左目痛いなぁ。端末の弄りすぎかな……
だいぶスクロールをし続け、(途中までは信じていたが)魔力、魔術という単語が出て来た時からそう思うようになっていった。もう、殆どEyes Curse Precious病に関係がない。
だが、情報リテラシー的にもモラル的にも此の儘通報は俺の何かが許さず、検索ページにEyes Curse Precious病とコピペして検索をかけた。数秒経ってから、開いたページに目を見張る。
『まるで魔術!化学では証明できないEyes Curse Precious病!』
『魔法の薬。良薬を越す薬の原石、Eyes Curse Precious病患者の瞳』
『別名、【畏怖瞳病】。魔法のEyes Curse Precious病に迫るるるっるるうるrっるう!』
眼科行こうかな……
丁度、左目、痛いしな……
そんな事を思って、隣を見る。
後、五分だからか、残り数問を切磋琢磨して解いている寺井の横顔が眼に入った。
その時、
ズキッ
いや、若しかしたらグシャッかも知れない。急に左の眼球が針でつつかれる様な痛みを感じた。余りの痛さに泣きそうになったので左手で左の目を押さえつける。だが、脳の方はいたって冷静だった。
やっば、やっぱり眼科行こ。
押さえつけると段々と痛みは引いて行くもので手を離す。其処で、目を見張り、目を疑った。
これは血……?という事は、血涙……?
確かに左手の掌の一部が紅く染まって居た。
一応、ポケットからハンカチを取り出し目に当てる。
此処まで来ると‘‘何時か’’眼科に行こうというニュアンスで言っていた言葉が‘‘今日、今すぐ’’眼科に行こうというニュアンスに変わってくる。
然もその後の左手の掌を見るとさらにそう思う。
普通、血液が酸化すると黒く濁るものの筈だが、紅い血涙の血液は黒に変色していなかった。
ラメが入った様にキラキラ輝る金色色に変色していたのだ。
余りの驚きに椅子から勢い其の儘立ち上がり、左掌を右目で凝視してしまう。恐らく、左目も同じように金色に変色しているだろう。そう思うと、確認したくなるのが人の性だと思う。先生は、急に立ち上がった俺を見て、なんて声をかけたらいいのか判らないと顔に書いて在る位困惑していた。無論、この教室に居る生徒の注目も今俺が浴びている。
「おー、鶴喰。お花でも摘みに行くのか?」
下から、間延びした声が聞こえてくる。
「あー、寺井。お手洗いに行って来る。」
これ幸いと、寺井の言葉に乗りそう発言して教室から出て行った。