復讐 村長
※残酷な描写注意
直接的な残酷描写があります。
苦手な方はこの話を飛ばしてください。
本日2ページ更新です。
本編18話を読まれていない方は、そちらを先にお読みください。
「アスベルの馬鹿者めが、折角の儂らの計画が全てぱぁになるじゃろうが」
アスベルを置いて家に戻った村長は、昼間の光景をずっと思い出しながら何時間も一人愚痴っていた。
「さて、どうしたもんかのぉ」
アスベルにはこの村を出て貰う。
しかし、既に行ってしまった勇者とリスティが、アスベルを追放処分にしたことを知るよしも無い。
アスベルがこの村にいると二人……
特にアスベルに嫌悪を示したリスティが素直にこの村に戻ってくるとも思えない。
そうなればリスティと共に居ることを選んだ勇者がこの村に来ることもないだろう。
「アスベルの大馬鹿もんがっ!」
苛立ちを抑えきれず、アスベルへの怒りをまた口にする。
勇者をリスティで籠絡し、アスベルに向けた良縁をいくつも見つけてきたところまでは極めて順調であったのに。
村長は茶を飲み干し、持っていたコップを壊さんばかりにテーブルに叩きつけて置く。
まだ足りん。
この程度ではまだ足りん。
勇者さえおればこの村は、国一番…… いや、世界一の発展を遂げることもできるだろう。
そうなれば儂はその支配者として君臨出来る。
その為にも此度の失敗を帳消しにせねばならん。
どうすればいい。
考えるのだ。
……そうだ!
「リスティの母親じゃ。そうじゃそうじゃ儂としたことが、リスティの母親のことを忘れておったわ」
リスティの母親、アスティなら、いずれリスティと会い、同時に勇者とも会う。
「アスティに取り持って貰えばいいんじゃ」
さて、そうと決まれば。
「誰を使いに向かわせるのがいいかのぉ」
村人達の顔を一人一人浮かべていく。
アスティと仲の良いものがいい。
とすると……
からーん……
人選が決まりそうなとき、入り口の方で何かが倒れるような音がした。
「ん? なんじゃ?」
村長は入り口の扉を押さえる突っ支い棒をうまくかけそこねていたかと、入り口へと向かった。
入り口に付くと、確かに突っ支い棒が外れて床に転がっていた。
「いかんな、またやってしもうた。儂も年じゃのぉ」
たまにしっかりとかけ損ねて外れてしまうことがある。
それが最近増えて来た。
今度は突っ支い棒をしっかりとかけ、もう一度確かめてこれでよしと、部屋に戻ろうと振り返る。
そこにアスベルが立っていた。
「なっ! アスベルっ!?」
「よぉ、村長」
アスベルの目は完全に据わっている。
だが村長はそんな事をお構いなしに、彼を叱責した。
「人の家に勝手に入り込んで何をやっておるか、この馬鹿者! さっさと荷物を纏めてこの村を出んか!」
「……なんでだよ。なんでこんなことになってんだよ。なんで俺がこの村を出なきゃいけねぇんだ?」
アスベルは地の底から湧き上がるような低い声で村長に問いかける。
「わからんのか、この馬鹿者が。お前が全ての計画を台無しにしたんじゃ。この村の未来を賭けたな!」
「やっぱりてめぇか……」
そしてアスベルの顔が狂気に歪んでいく。
「なに?」
「やっぱりてめぇがリスティを勇者に売ったのか」
「何を馬鹿な事を言っておるか。お前も見たじゃろうが。リスティが自分から勇者に付いていったのを」
「うるせぇよ」
ひゅんっ
アスベルが普段、獲物の解体に使っている小刀を村長の眼前で振った。
途端、村長の鼻の付け根付近がすっぱりと切り裂かれた。
「なっ? っく…… うごぉぉぉ!」
村長は顔全体を切られたのでは無いかと思うほどの痛みに声を上げる。
「なんだぁ? その程度でそんな声を上げやがって。 これからされることに耐えられんのかぁ?」
鼻を右手で押さえる村長をアスベルは冷たく見下す。
「なにをするんじゃ、アスベル。親代わりの儂に対してこの罰当たりが!」
「あ? 親ぁ?」
ひゅんっ
べちゃっ…………
「があぁあああああ」
今度は右の耳が切り裂かれ、耳たぶが飛んだ。
「親代わり? それって親も同然って事ぉ?」
「あっ、当たり前じゃろうが! お前の親が二人とも死んで、その後、お前の面倒を見たのは儂じゃぞ!」
ひゅんっ
べちゃぁ……
「あがぁぁあああああああ」
右の耳が完全にそぎ落とされる。
「それが親代わりってか? 俺を利用する為だけだろ?」
「はぁ、はぁ、はぁ…… なにを…… いうか、貴様」
がっ!
アスベルが村長の胸ぐらを掴み、村長の眼前で言い放つ。
「親ってのは子供の幸せを一番に考えるもんじゃねぇのかよっ!!」
そして力任せに突き放した。
がしゃーん!!!!
パリーン、ガシャガシャガシャ、パリーン!!!
村長は背後にあった食器棚に突き飛ばされ、中から大量の食器がこぼれ落ちてきた。
ズバァ!
「あぎゃあぁあぁああああああああああああああああああ!!!!」
アスベルが長剣を振り、村長の両太ももが深く切り裂かれる。
もはや立ち上がることもできないだろう。
「てめぇが俺の幸せを願ってたか!? 願ってたのはてめぇ自身の幸せだろうがっ!?」
ざんっ!
「あ゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああああああぁああああ!!!」
歩み寄ってくるアスベルに止まって欲しそうに伸ばしていた両手の手首が今、切り落とされた。
「立ち止まってなんかやらねぇよ! 俺を見ろよ、この腐れじじぃ!!!」
村長の顔は恐怖に歪み、ただ頭を横に振る。
股間も尻も、恐怖に垂れ流された排泄物でぐちゃぐちゃだ。
「俺の幸せが何だったかてめぇにわかってんのかっ!?」
「りっ……りっ…… りすっ…… りすてぃ……」
歯をガチガチと鳴らしながら、村長はようやくアスベルが求めて止まなかったその名前を口にする。
ざんっ!
「う゛がぁああああああああああああああああああああ!!!」
村長の左腕が上腕部から切り落とされた。
「なら、てめぇがやったことはなんだぁああああああああああああああああああ!!!!!!!」
ざんっ!ざんっ!ざんっ!ざんっ!ざんっ!ざんっ!ざんっ!ざんっ!ざんっ!ざんっ!
顔が、腕が、足が、胴体が、音がするたび深く切り裂かれていく。
「ひゅっ、ひゅるし……ひゅるひへふれへ………」
もはや声もまともに出すこともできず、食器棚にもたれかかった状態のまま、ただ許しを請うだけの殆ど肉塊に近い見た目と化している血だらけの村長。
だが、それでアスベルの怒りは収まりはしない。
「さあ、もう終わりだ。このままほっといてもてめぇは死ぬだろうがよ。てめぇには俺の目の前で死んで貰わなきゃな」
アスベルは長剣を大きく構える。
「死ね」
ざんっっ!
どんっ……
村長の首が飛び、床に落ちた。
ぐちゃっ!
その首をアスベルは踏みつけた。
「地獄へ行け」
アスベルは冷たく言い放つ。
「俺も地獄へ行くだろうからよ。そんときまた殺してやるよ。待ってな」
そしてアスベルは何事も無かったかのように村長の家を後にした。
そして、もう日も落ちてきた薄闇の中、水の中に飛び込む音。
返り血を湖で流し落とす。
「ははっ、村長の返り血を洗った湖をお前らはこれから使うんだよな。はははっ」
待ってろ。
村長の死骸を見て、その恐怖を心に刻みつけて待っていろ。
次にここに戻ってくる時はお前らの番だ
勇者のお陰で豊かになった財力でせめてお強い警護でも雇ってろよ?
その警護ごと叩き潰してやるから。
より深い絶望に叩き落として死をくれてやる。
そして、アスベルは村から深い森の闇の中に立ち去っていった。




