4話 子供は生意気なぐらいがちょうどいい
「ハァ…ハァ……ほぉら……お嬢ちゃん飴ちゃんだよ」
「おお、これはすまない。ありがたく受け取ろう」
リーリャはハァハァと呼吸を荒げたサングラスの男から受け取った飴を頬張り、ころころと舌の上で遊ばせる。
(うむ、少し変な味がするが、この味が巷では流行っているのだろう。先の男に何味か聞いておけばよかったな。)
マンドラゴラか、クラッカーマロンか、などと味についての考察をしているリーリャだが、いつの間にか商業通りから離れていたことに気づく。
「む、ここは居住区か」
居住区、商業通りのある商業区の隣にある、住民の家がある区域だ。
基本的には商業区にある店を家にしていない人たちが住む場所で、リーリャは商業区で親が営業しているパン屋に住んでいる。
ふむふむ、ここも活気があっていいの、とリーリャがあたりを見回す。
時間は早朝過ぎて朝、遅くに起きてくる人も瞼を開けるころ合いだろう。丁度先ほど朝を知らす鐘が鳴ったばかりだ。
朝の光を浴びに外に出るもの、家の周りを掃除しに箒を持つものと言った行動をとる人間を見てリーリャはにっこりと笑う。
リーリャに気づいたのか箒を持った女性がリーリャに向かって手を振る。
リーリャは笑顔のまま女性に手を振り返す。
そんな行為にさらににへらとリーリャの顔が興奮に染まる。
真っ赤になった顔に女性は違和感を持つだろうが、子供だからと気にしないだろう。
まあそれはさておきリーリャと言えば。
バスッ!!!
「フゲッ!!」
リーリャの後頭部に衝撃が走る。
「あ……」
リーリャが後ろへと視線を送ると、三人の子供がやっべ……、という顔をしていた。
白髪の少女が一人、青色の短髪の少年が一人、同じく青色の長髪を後ろで結った髪型の少年が一人。
「ほぉ……」
三人を見回した後、リーリャは自分の近くに転がる革のボールに目が行く。
すぐに察することができた。あの三人がこのボールで遊んでいたところリーリャの頭に当たってしまったのだろうと。
「えっと、ごめんさい!」
すぐ口を開いたのは三人の子供の中で一人の少女だった。
第一声が謝罪ということもあってか、リーリャも許そうという気にはなれたが……。
「ふん、その程度もよけれないのか!」
三人組の一人、短髪の少年が空気をぶち壊した。えっ! っと驚いた感じで少女が短髪を見る。
しかしリーリャは違った。まるで面白いものを見つけたと言うようににんまりと笑ったのだ。
流石にこれには三人組も引いた。
「な、何がおかしいんだ……?」
短髪が怖いものを見るようにリーリャを見つめる。
ゆっくりと口を開くリーリャ。
「いやなに、今の我に始めて噛み付いてくるものが子供だとはな。まあ我はいまやただの幼子なのだから当たり前なのだろうがな……」
クツクツと笑いながら興奮からか素が出たリーリャは三人組に言い放った。
そんなリーリャに三人組全員がが少し恐怖を覚える。
「怖いくない……、お前なんか怖くないぞ!!!」
やはり子供ゆえか少しの恐怖で目に涙をためた短髪がそうリーリャに言い放った。
「なぜそんなに我が怖がらなければいけないのだ……?」
そんな反応に少し、いや意外と心的ダメージをくらったリーリャであった。