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転生した古竜は人生を謳歌する  作者: くま
少女の日常
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3話 朝の町は別世界


 少女は出かける。


「行ってきまーす」


「はいはい、行ってらっしゃい。暗くなる前には帰りなさいよ」


「はーい」


 リーリャは水汲みを終えた後朝ご飯を食べ終え、そのまま外へ出かけた。

 この行動は毎日のことなのでそこまで違和感を覚えないはずのリナなのだが、


「なんか妙に目が輝いていたわね」


 なぜかこの日だけ鋭くも何かを感じ取ったのであった。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 

 

「さぁ、まずはどこへ行こうか……」


 リーリャはあたりを見渡す。朝だからかまだ人通りは少ないが、それでもちらほらと人を見ることができる。

 道の真ん中を今にもスキップをしそうなほどの雰囲気で歩くリーリャ。

 その表情には人間になれたという喜びがにじみ出ていることだろう。


「うんうん。視点が低い!」


 竜であったころよりも低い視点にすら喜びを覚えるリーリャ。

 はたから見たら道端で歩くことにすら喜びを覚える幼女として見えている。もしこれが幼女ではなかったら完全に憲兵が呼ばれていたことだろう。

 そんな今にも鼻歌を歌いそうな気分でリーリャは街の散策を開始するのだった。



 


 こちら商業通り。

 町のメインストリートにできた様々な店が並んでいる通りで、リーリャの家であるパン屋から少し歩けばすぐにたどり着くことができる。まだ朝なのだが露店も含めいくつか品物を出している。

 おそらく売り込みは本格的に人通りが多くなってからなのだろうが、それでも商売を始めているあたりリーリャは感服する。


「やはり人間の根性は素晴らしいな。自己の利益のためとはいえ思いもよらぬ行動をしてくれる」


 しみじみと過去の思い出(人間観察記録)を脳裏に描きながら、商業通りを見て回る。


(確か世界樹のふもとの奴らは族内でしか動かないから商売とかに疎かったな。それに海や山に住んでる部族共も理知的な面が少なかった覚えがある。まああくまで目立った奴らがいたからそう覚えているだけという可能性もあるがな)


 と、人間の営みを観察していると。


「おう、パン屋のところの嬢ちゃんじゃねぇか」


「む?」


 リーリャに声がかけられる。ふり返ってみると丁度朝の品並べが終わり開店準備を整えたばかりであろう男が閉店と書かれた看板をひっくり返しに外に出てきたところだった。


(はて、誰だったか?)


 リーリャは即座にリーリャであったころに記憶を探る。すると記憶の片隅で何とか顔だけは思い出すことはできたが……。


「うむ、すまない。顔は思い出すことはできたが名前を思い出せなかった」


「お、おう。なんかすまねぇな」


 リーリャの予想外の対応にちょっと驚きながらも返事を返す男。その後頭をぼりぼりとかきむしってあ~そういえば、と何やらつぶやき、リーリャに向き直る。


「すまねぇ、確か嬢ちゃんの前で名前言った覚えなかったわ」


 なるほど、だから記憶になかったわけか、と納得するリーリャ。


「この店で武器売ってる、シーローンってんだよ。お前の父ちゃんとは小さい頃の付き合いでな。たまに包丁研いだりしてやってるんだ」


「ほう、お父さんのお得意様であったか。我からもこれからよろしく頼む」


「お、おう、よろしくな」


 最近の女の子はすごいな……、と感心しているシーローンにまたの、と言いリーリャはその場を離れた。


「ふんふん、我のことを知っている輩も多いみたいだな」


 まだ見ぬ知人に期待を寄せるリーリャであった。


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