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転生した古竜は人生を謳歌する  作者: くま
少女は競う
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116話 収拾

少しばかり用事が立て続いてしまい更新が遅れました。

次話、もとい三章最終話は一応完成しかけているので明日には投稿できそうです。


 竜対竜。その戦いは、リーリャの魔法がハンドグンドの力を上回る形で決した。

 リーリャの使用した『魔闘付与:二重手甲』の力が、ハンドグンドの半身を吹き飛ばしたのだ。


 地には、右腕と胸から下部分を失ったハンドグンドが空を見上げるように倒れている。

 そして、少しばかり遅れてリーリャが地上へと降り立った。

 竜のぶつかり合いにより周囲の地形は見るも無残な姿に変わっているが、この二人にとってそれはどうでもいい事だった。


「……おまえ、古竜だったのか?」


 最初に言葉を発したのはハンドグンド。

 その意思は、リーリャの力に向いていた。

 ハンドグンドは、先のぶつかり合いの時、確かにリーリャの力に竜を見たのだ。

 そして、リーリャはハンドグンドの問いに肯定する。別段隠すことでもないから。


「ああ、もう、二千年も前のことだが」


 リーリャ。それは今の名であり、その生は十二年前に始まった。

 だが、その前。竜であった最後の時は、実に二千年以上前のこととなる。


「だが、私はおまえに竜を見た。ならば、あの汚れも納得できる。……許せはしないけどな」

「それで、我が竜であることに何かあるのか?」


 リーリャが返した言葉に、少しばかりハンドグンドの歯切れが悪くなる。

 しかし、次第に鱗が剥がれ、小さくなっていく自分を見て、意を決したようにしゃべり始めた。


「花を、みた」

「花……?」

「花だ。俺が、あいつ以外に初めて見た生き物だ」


 次第に、ハンドグンドの目はリーリャではなく、空へと向けられる。

 それは、そこに人がいるように、そして、その人へと話しかけるように。


「きれいだった。だけど、残酷だった。なにせ、根から切り離されて磔にされていたから。それでも、生きていたから」


 途切れ途切れの言葉をリーリャは静かに聞く。


「あいつは、私の言葉を聞いて、すぐに花を取り下げたんだったな。だけど、あの花は私の頭に残り続けた」


 走馬灯。ハンドグンドの目は、すでにリーリャも空も映ることなく、ただ過去の景色を懐かしむように彩られていた。

 だが、次にその瞳が見た先にいたのは、リーリャであった。


「……これは、警告だ。気をつけるべきは魔竜の奴じゃない」

「なぬ?」


 言葉は突然、魔竜を指したものとなる。

 突然の警告に目を見開くリーリャが、その言葉を返そうと口を開くが、遅かった。

 既に、鱗の剥がれた竜は、灰のように崩れてしまったのだ。


『気をつけるべきは魔竜の奴ではない』


 その言葉を残して、ハンドグンドはこの世から姿を消した。



――――――――――



 ハンドグンドの死と時を同じくして、ハジメたちの戦いも終わりを迎えていた。


「あぁああああああ!!!!」


 最後の最後。全力の魔法をもってしてルティスを封じたハジメであったが、後先考えない魔法の弊害が今のハジメを襲っていた。

 現在、ハジメの魔力は底を尽いている。現在、魔力が切れたハジメは、極度の酔いの中、空を落下していた。

 ここで一つ問題がある。ハジメは魔力をすべて使いきってしまった。そのため、今のハジメは空中を落下する自らの体を保護することができないのだ。

 つまり、このまま地面に着地するとハジメは潰れたトマトになってしまうのだ。


 どうしようと、なった結果、ハジメは空の上にて叫ぶことで自らの存在をアピールすることにした。


 そして、その行動に導かれて、先程、ハジメを守るために奮戦した魔法使いの声が聞こえた。


「『ウィンドウ』」


 地面ギリギリにて、風のクッションを使いハジメは何とか形を保ったトマトのままで着地することができた。


「おい、ハジメ! さっき見てたけど大丈夫か!?」


 そこに駆け寄るのはクリウス。

 ルティスとの斬り合いの中でいくつもの傷を受けながらも、それでも奮戦して見せた屈強な剣士はクラスメイトの身を案じた。

 それもそのはずだ。何故なら、ハジメは最後、ルティスのカウンターによって致命傷ともいえる傷を負っていたはずなのだから。

 そんなハジメは、いま魔力切れからくる酔いにて地面にうずくまっている。

 だが、クリウスの問いには何とかこたえようと、懐からとあるものを取り出した。

 紐に括りつけられたそれは、半分以上が壊れたペンダントだ。そして、そのペンダントはクリウスたちにも見覚えのある物であった。


「まさか、大会の魔道具か!」

「その通り。準決勝の相手が降参のために捨てたペンダントが回収されてなかったみたいでな。さっき霧の中で剣の横に転がってたのを拾ったんだ」


 そう、準決勝にて、シャマが投げた魔道具のペンダントは、ハジメが大会にて整地した地面の下に埋まっていたのだ。

 そして、戦いの中、隕石や熱風などで地面が削れ、その姿を現した。それを偶然、ハジメが保険にと拾ったおかげでルティスのカウンターを致命傷にならずに受けきることができたのだ。


「クリウス! ハジメさん! 談笑するのもいいけど手伝って!」


 ハジメの無事を確認したクリウスが、大変だったなとねぎらいの言葉をかけあっていたところで、冷や汗を垂らしたサリアスがハジメたちに声をかけてきた。

 必死の形相のサリアスは、上空を見る。それにつられ、二人も空を見上げてみれば、巨大な氷塊がハジメたち目掛けて落下してきていたのだ。


 その正体ははっきりしている。

 先ほど、上空にてハジメたちが必死になって立ち向かったルティスを封印している氷塊だ。

 だが、今その氷塊が自分たちに牙をむいてい迫ってきた。


 そして、三人にモアラを含め、なんとか氷塊を無事に地面に下ろしたのはまた別の話だ。



――――――――――



 混乱の中、司令塔となった生徒会に脅威は迫っていた。

 謎の人型の異形。あくまで、人のような要素を持ち合わせているだけで、その形は現生する生物を愚弄するように、様座な生物をめちゃくちゃにつなぎ合わせた姿をしたそれが、司令塔となっていた生徒会室に現れたのだ。


「な、なんでここに!?」


 生徒会に努める少女が悲鳴を上げる。

 人を守るために自分たちの護衛すらもとっぱらい避難民の元へと駆け付けさせたのが裏目に出たのだ。

 だからこそ、手薄になった生徒会室へと異形はたどり着くことができた。

 そして、その偉業は手についた鎌の様な部位を振り上げ、すぐ近くにいた女子生徒へと殺意を向けて振り下ろした。


「うるさい」


 ずぷり。小さな音が、やけによく響いた。

 大気が冷えるのを感じる。これは、水属性の氷系統の魔法を使った時特有の影響だ。

 そして、それは誰かが魔法を発動したということになる。

 その魔法は、氷の柱のように壁から生え、異形の頭と鎌の様な部位を貫いていた。


「ほら! まだ私たちの仕事は残ってるんだから、腰抜かしてないでさあ立った立った!」


 魔法を発動したのは、ほかでもない生徒会の副会長であるリラである。

 氷の柱。その柱は何処からともなく生えては、いまだ息のある異形を貫き、確実にその命を奪っていった。


 『氷柱』のリラ。『アイスポール』と呼ばれる、氷の柱をはやす魔法において、彼女の右に出る者はいない。

 そんなリラがいるからこそ、生徒会の警備は手薄であっても問題ないのだ。


「副会長! 貴族客の大方の避難が終わりました!」


 そして、同時に響いた吉報にリラは顔をほころばせた。



――――――――――



 貴族客の避難が終わった。つまりそれは、今までそちらに割かれていた人員のうち、何人かが自由に動くことができるということだ。

 そして、その人員とは、この学校において魔法を教える立場にいる教員たちである。


 ある場所にて。

 そこでは、異形相手になんとか耐えていた生徒たちであったが、彼らは二年生。つまり、魔法使いとしてはまだまだ未熟な立ち位置にいる生徒だ。

 故に、彼らは追い詰められていた。

 迫る異形。カチカチと口のような部分から音を鳴らし、触手のような腕を鞭のように振るった。それだけで、魔法使いの一人が大きなダメージを受けて後方へと吹き飛ぶ。

 少しずつ、少しずつ甚振る様に異形達は生徒たちを追い詰めていた。


 だが、それは終わる。

 

 一瞬にして、その場が明るくなった。

 これは、炎の明かり。真っ赤に燃え盛る炎の明かりだ。

 燃え盛る炎は、生徒たちを囲むように広がり、異形達を燃やした。


「よく燃えるじゃないか!」

「おい、学園の備品をあんまり燃やすなよ」

「おう、できる限り気をつけるよしよう!」

「まったく、こいつは……」


 そこに現れたのは、一年一組の担任である『炎陣』のガウィン。そして、同じく一年の四組の担任をする『土砂』のケール。


「それでは見せてやろう。この『炎陣』のガウィンの防衛術を!」


 炎はうねる。周りの備品を壊さないように控えめに。



 別の場所にても増援は駆けつけていた。


「やーっ!」


 此方は三年の生徒を守る様に、現れたソフィアが、異形相手に魔法を放っていた。

 しかし、相性が悪い。ソフィアが相手する異形はスピード型と言える脚力に特化したような相手だ。

 いかにソフィアの魔法が優れていようとも、当てられなければ意味がない。その通りに、ソフィアの放つ氷の礫はことごとく異形に躱されていた。

 少しばかり涙目になるソフィアであったが、次の瞬間、氷の礫は異形へと命中した。

 何故か、それは異形の全身が凍り付いたからだ。


 よく見れば、周囲の一帯が凍土のように凍り付いていた。


「はぁ、ソフィア。攻撃するときは、相手の足止めをしてから、ってなんか言ったらわかるのかしら」


 その現象を起こした張本人は、ソフィアに呆れたように声を上げながらその場に登場する。

 彼女の名はスフィア。ソフィアの実の姉にして、一年二組の担任を務める『氷海』のスフィアだ。


 そんな彼女の搭乗と同じくして、少しばかり離れたところから、妙に輝いている竜巻が見えた。


「せめて美しく散りなさい」


 風は靡き、竜巻に呑み込まれた異形達を切り裂く。

 一年三組担任。『煌風』のシーシルドは笑う。


 こうして、学園の各地にて、学園を襲った異形達は掃討されていった。





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