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プロローグ 2

A.G.2868 ギネス二五七年

地の月(四の月) 火の週の六日(十八日)

古代神殿


 番匠祐介は比較的優秀で真面目な好青年である。

 いや、であった。

 脱色したわけでも染めたわけでも無いのに淡い茶色の頭髪については幼い頃の投薬の所為であったが、よく言って楽天的な性格が悪い方に作用しているお陰か何処までもチャラい印象を与え、どう取り繕っても「真面目な好青年」には見えない。

 が、比較的自由な校風の私立高校に通い、某私立大学へエスカレーター式に入学可能な成績を納めるだけに留まらず、某大手の進学塾に通って都内の某私立・公立大学に進学可能なだけの成績を維持していたし、大学に進学した後もそこそこ優秀な成績を修める生徒で在り続けた。

 ついでに言えば、所謂リア充とかリア獣の一人に数えられる生徒でもあった。

 もしかしたら爆発しても良い存在なのかもしれない。

 が、見た目と性格はともかくこれだけ揃ってどうして「比較的」などという形容詞が付くのか?

 残念な事に、それはもう非常に残念な事に、彼はほぼ慢性の中二病を患っていたのである。

 異性と長続きしない理由はそこにあったのだろうが、当然ながら自身の現状には即座に気づく事が出来た。


「ヤベェ、もしかして俺って転生した?!」


 正解である。

 折角の恵まれた人生をドブに捨てるが如き夢を、これまで何度も脳裏が描いては気持ち悪がられていた祐介であったが、なんの説明も無いまま幼児に転生するなどと言う状況には泣きたくなってしまう。

 もちろん即座に泣いた祐介(幼児)であったが、とりあえず目は見えるし耳も聞こえている。

 完全な新生児ではないらしい事に気付いて考え込む。

 一体ここは何処だろう? と。

 目が見えると言っても遠くの物はぼんやりとして良く見えないし、匂いはするがそれが祐介の記憶と結びつかずに良くわからない。


(まてまて、それより俺はどうなったんだ? もしかして死んだ?! 転生してるってことは死んだんだろうけど! 死んだ記憶なんて全くないんだけど?!)


 漏らしては泣き、空腹になっては泣き、歪んだ視界の中で自身をユーリウスと呼ぶ者が二人いる事、一方が時折乳房を含ませてくれるものの乳は出ず、二人で交互に布切れの様な物で温くて濃い乳らしき物を飲ませてくれる事などとを理解しただけである。


(えーと、つまり俺は、お母さんの乳が出ないか、本当のお母さんではない二人の女性に育てられているわけだな? ちょっと神様? そろそろ白い不思議な空間に招待するとか夢のお告げとかで状況を説明してくれても良いんじゃね? つーかアレか? 何か技能スキルとか才能に目覚めた時点で適当な説明して終わりってパターンか? それとも今夜あたり土下座するロリ女神とかが出てくる? ねぇ? ちょっと? 誰かこの状況を説明してくれっ!!)


 残念ながらそんな都合の良い存在はいないのだ。

 そもそも多大な負担をもろともせずに育てて貰えている時点で、全ての幸運を使い果たしたレベルだと思うべきなのである。


(ちくしょー!! どうせ目覚めるならせめて三歳児くらいにしてくれ!! おっぱいはご褒美かもしれんが布切れに乳は拷問だろ!? アムネスティ出てこいやっ!! 神様お願いします!! 誰か! ……あぁ、今度は大きい方だ……。誰かっ! 誰か助けて下さいっ……!!)


 そんな訳で、ユーリウスと名付けられた幼児は、中二病の転生者、番匠祐介として目覚めたのである。

 




プロローグはこれで終わりです。

次の投稿は明日の朝7時に予約してあります。

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