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第十五話 精霊ってナニ?

A.G.2870 ギネス二五九年

雪(氷)の月(十 一の月) 水の週の一日(七日)

古代神殿



 大惨事の日から僅か数日で神殿の地下施設が稼働を始め、幾つかの新事実が判明していた。

 もちろんユーリウスにとっての新事実である。


土人形(ゴーレム)人造人間(ホムンクルス)は精霊の一種だったのか……!」


 そうなのだ。

 ゴーレムもホムンクルスも地上に封じられた精霊なのだと言っても間違いではない。

 精霊界に存在する意思を持った力の塊を精霊と呼ぶという前提があっての話ではある。

 精霊多過ぎ。

 精霊便利過ぎ。

 そんなユーリウスの声が聞こえた気がするが断固無視するべきである。


「まず造物主と呼ばれる製造者が必要な知識を精霊に与え、その精霊を地上に下ろして肉体となる土人形(ゴーレム)人造人間(ホムンクルス)に定着させる訳か……」

「まるで迷宮の魔物の様ですね」

「え? そうなん?」

「そうですよ。モモが言ってました」


 地下研究所の資料を調べているのはユーリウスとモモである。ユーリウスも既にある程度の文字の読み書きは出来る様になっていたが、件の資料は古い言葉と文字、それも大陸の過半を支配した古代王国の更に古語で書かれていた為、古語と呼ばれる古代王国文字の読み書きが出来るエリの助けが必須だったのである。

 もちろんエリにも古代王国以前の古語まではわからないのだが、ある程度の共通点は存在している為、わからない部分を想像で埋めていく形で読み進めていたのだ。

 読み進めては意味がわからなくなり、戻っては解釈を変え、再び進めてまたやり直すという、非常に手間のかかる作業ではあるのだが、途中でユーリウスが契約精霊(アニィ)に記憶と記録の更新を任せる事を思い付き、更には判明している語句を使った先読みで全文の翻訳作業まで行わせた為、一気に進んだのである。

 魔王並の潜在能力を持つ契約精霊(アニィ)の使い方としてはどうかと思わないでもない。


「これはメディナが残念がるでしょうね」

「どうして?」

土人形(ゴーレム)は魔法、人造人間(ホムンクルス)は錬金術の産物だと思われていたのに、どちらも精霊魔法が使えなければ作れないのですから」


 実際には違う。

 調べれば直ぐにわかる事ではあったが、地下研究所に保存されていたゴーレムの多くは、精霊魔法の介在無しで稼働する物であったし、ホムンクルスも同様だった。


「そうすると自動人形(オートマタ)はどうなってるんだろう?」

自動人形(オートマタ)は……この部分に書いてありますね。魔晶に記憶を刻む、と書いてあります」

「ん?」

「どうしましたかユーリウス?」

土人形(ゴーレム)に精霊を降ろす先も魔晶だったよね?」

「はい。そうですね」

「ねぇエリ? なら同じ方法で人造人間(ホムンクルス)も動くんじゃ?」


 それは正しい。


「そうですね。なぜそうしないんでしょう? それからユゥ、じゃあなかった、ユーリウス、この場では先生と呼びなさい」

「はい先生。えっと、そもそも土人形(ゴーレム)自動人形(オートマタ)人造人間(ホムンクルス)の違いは何だろう?」

土人形(ゴーレム)はマナの混じった泥や粘土で、自動人形(オートマタ)機械(からくり)です。人造人間(ホムンクルス)は生命創造の研究から生まれた人造生命です」

「いや、それは、そうなんだけど……?」

「そうなんだけど?」

「ゴーレムもオートマタも魔晶に精霊を、精霊の欠片を降ろして動く。ホムンクルスに魔晶は無いけど命を与える為には精霊が必要で、精霊にホムンクルスという体を受肉させる。もちろん、それだけじゃないけど、基本はコレだろ?」

「そうですね……? そういう意味では同じ様な存在なのかも?」


 もちろん違いはある。最大の違いは必要とされるマナの量だ。

 同じ能力を持ったゴーレムとオートマタを作った場合、オートマタは必要とするマナの量が極端に少なくて済むのである。

 代わりにオートマタの体を作るのは非常に高度な技術を必要とするし、完成した後で大きさを変える事は出来ない。

 ゴーレムであれば、投入するマナの量を変えるだけで簡単に大きさを変える事が出来る。

 ホムンクルスについて言えば、完成してしまえば魔石も魔晶も必要無いのだ。


「これは要研究だなぁ……いっそ一体づつ動かしてみようか……? 使い勝手が良いのはどれだろう? いや、動かすならやっぱりゴーレムからだよなぁ……?」


 と、不意にエリが小さく笑った。


「――なに?」

「ユゥが楽しそうで良かったと思ったのです」

「え? めっちゃ悩んでるけど?」

「そうですね。考え込んでます。でも楽しそうですよ?」

「もう、エリには敵わないよ……確かにちょっとは楽しかったけど。どうしてわかるの?」

「だって私はユーリウスの姉ですから」


 爆発しろ。ユーリウスはちゃんと先生と呼べ! エリも自分の台詞をいきなりわすれてるんじゃないっ!


「それじゃそろそろ夕食の準備です。ユゥは、あ、ユーリウスはどうしますか?」

「俺も手伝う」

「はい。良い子ですね。よろしくお願いします」

「はい。頑張ります」


 そうしてエリは、もう一度小さく笑った。






次の投稿は明日の朝七時になります。

実はモニターが壊れてしまって、微かに見える画面を確認しながらデータをネットのストレージに移し替えて、スマホで修正しながら投稿してます。

誤字脱字が増えていたらすいません。


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