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閑話 英雄王 01

閑話です。

本編に関わってくるのは随分と後の事になりますので、飛ばして頂いても問題ありません。

本編の投稿は予定通り明日の朝七時です。

閑話 ウルス 01


 その日、族長となった若き英雄カカドゥは、数百年ぶりに古の勇者の魂をその身に宿した。

 魔王を信仰する魔族との戦いに破れて国を追われ、流浪の末にこの地に辿り着いたと言う一族の開祖である。

 族長となったカカドゥが、その証である聖剣を手にした瞬間、声が聞こえてきたのだ。

 聖剣に宿っていた勇者であった。

 カカドゥはその身に宿した勇者と半月程も語らい、勇者の生きた時代と戦いを知る。

 勇者は魔王が封じられているという、遥か西方の大陸で産まれた。

 幾つもの大きな都市を擁する王国の王子だったと言う。

 勇者の戦いがどのようなものであったかは伝わっていないが、周辺の国々を平らげ、幾つもの迷宮を討伐し、遂には魔王が封じられていると言う巨大な迷宮にも挑んだのだという。

 そしてその迷宮こそが魔王の罠だった。

 勇者とその軍の精鋭達が魔王の迷宮に挑んでいる間に、潜んでいた魔族の軍が勇者の国を襲ったのだ。

 王国は崩壊し、勇者の軍勢は敗走した。

 多くの民が殺され、生き残った者達も全員が魔族の奴隷となってしまったと言う。

 何処までも深く広がる魔王の迷宮から勇者が戻った時には、全てが終わった後であった。

 密かに故国へ戻った勇者は、奴隷となっていた民を率いて魔族に反旗を翻したが届かず、敗残の逃亡者の群れとなって各地を彷徨う事になった。

 その苦難の道行については詳しい話が伝わっていないが、凍った北の海を越えてこの地に辿り着いた時、勇者に従う者は僅かに八人であったという。

 敗北した後でも勇者の元には数万の民と軍勢がいたはずで、それを思えば魔族の追撃とその道行の悲惨さが偲ばれるというものである。

 だが勇者は諦めなかった。

 この地で力を蓄えると決めたのだ。

 いつか失われた故郷の地へと一族を導き、魔王と魔族を討って世界を統一する為に。


 そう、幼い頃から聞かされていた伝説は本当だったのだ。

 こうしてカカドゥは自身の使命と運命を知った。

 なぜ一族は定住してはならないのか。

 なぜ一族は迷宮をつぶさなくてはならないのか。

 なぜ一族は魔王と戦わなくてはならないのか。

 そして最後に、自身が大族長(カガン)(≒王)になり、世界を統べる(ウルス)(≒王、王国)となるだろうと占った一族のお婆が最後の力を振り絞り、魔王の封印が弱くなっている事、その結果、いずれ西の王国で魔王の申し子が生まれるであろう事、このままでは魔王の封印が解けるだろう事等を教えてくれたのである。

 全てを知ったカカドゥは、母の如く慕っていたお婆の亡骸を前に、魔王の討伐と一族の帰還を誓った。

 そして、一族を上げての魔王討伐戦争に向けて走りだしたのである。

 時に新暦二八二七年、ギネス歴二一六年。

 魔王の申し子、魔王に呪われた王女、エリナリーゼ・アルメル・ブランザの産まれる丁度二十年前の事であった。

 


閑話ってやっぱり邪魔でしょうか?


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