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第六話 魔法陣は謎 ※

A.G.2870 ギネス二五九年

獣の月(六の月) 人の週の4日(三十四日※1)

古代神殿



 ついにユーリウスの生活に精霊魔法の訓練が加わる事になった。

 感慨無量と言って良いだろう。

 ユーリウスがようやくエリとメディナ、それぞれの使う魔法の系統が違う事に気付いた為である。

 それもこれも魔術や魔法では軸受け(ベアリング)の製造過程で躓いてしまったからだ。

 ユーリウスやメディナがどう頑張っても、ボールベアリングで必要となる真球率の高い金属球が作れず、メディナはあっさりとエリを頼った。

 頼られたエリもしばらくは眉を顰めたものだったが、一日ほど巨大と言うしかない呪文書らしき手書きの書物でなにやら調べ物をした後、サクッと大きさの違う小さな金属球を十種類ほど生み出してみせたのだ。

 中二病患者がそんな便利な魔法の存在を見逃すわけがない。

 その場でエリに弟子入りを宣言したのである。


 因みにこの世界には使用する魔力の種類によって幾つかの系統が存在している。

 まず第一に、体内の魔力(オド)だけを使う簡易魔術。

 ユーリウスが投げていた魔力玉がこれだ。

 第二に、体内の魔力(オド)と魔石や魔晶の魔素(マナ)を利用する魔術。

 この世界で一般的に言われる魔法や魔術と呼ばれるものである。

 第三に、第二に加えて周囲に偏在する魔素(マナ)を使う魔法。

 これが使えると魔道士とか魔女とかと呼ばれる存在となる。

 第四に、魔石や魔晶を含む様々な触媒を利用する事で体内の魔力(オド)を増大・活性化させて使う錬金術(この世界でも錬金術の目的は永遠の命であり、金はあくまでもその過程として得る)で、メディナは魔女であり錬金術師でもあるわけだ。

 そして第五の系統となる精霊術(精霊魔法とも呼ばれる)が存在しているのだが、第五の精霊魔法はマナもオドもほとんど使わない。精霊との交感によって精霊界エイドスとの経路(パス)を生み出し、精霊の力をこの世界に顕現させる技術なのである。

 そんな訳で説明臭くなってしまったが、ユーリウスの精霊術、精霊魔法訓練である。


「精霊魔法を使うにはまず、精霊界の精霊と交感しなくてはなりません。これには普通数ヶ月から数年の厳しい訓練が必要になります……が、なぜかユーリウスは既に精霊界との経路がつながっているため、精霊との交感には成功しているはず……なぜでしょう?」

「ユーリウスだし?」

「僕は変なの?」


 エリの疑問に対し、メディナとユーリウスが同時に首を傾げる。

 そもそもユーリウスは産まれた瞬間から精霊界との経路がつながっていたのだが、それについては今更である。

 あぁ、これでようやく自己紹介が可能になる。

 ユーリウスとの経路(パス)をもつ封じの聖女の残滓と、吾輩は魔王、の残滓である。

 まだ名前は無い。


「……取り敢えず問題は無さそうなのでユーリウスにはこの魔法陣を覚えてもらいます」

「魔法陣?」

「はい。光を生み出す一番簡単な魔法陣です。精霊には人の言葉は通じませんから、魔法陣や呪文の詠唱によって何がしたいのかを精霊に伝えなくてはならないのです」


 え? そうなの? 祐介的に言えば常時取り憑いてる感じなんだけど? それに魔法陣複雑過ぎじゃね? 意味わかんないんだけど? 魔法陣とか本当に必要なわけ?


「え? エリ? これを……本当に覚えるの……?」


 ユーリウスが呟くように尋ねる。

 気持ちはわかる。


「完全に記憶してください。そうすれば事前に魔法陣を用意しておく事も詠唱を行う事も必要なくなります。それから今は先生と呼ぶように」

「は、はい先生」


(いや、いくら転生者でもこれを記憶するって……幼児には無理だろ……?)


 人間には大人でも難しいと思う。


「よろしい。では始めてください」

「はい……」


(いやいや、マジで? 魔法陣って普通はもっと文字とか数字を書き込んであるんじゃないのか? ってよく考えたらこの世界の文字知らんかった。これがこの世界の文字なのか? つーか円形のQRコードみたいなんだけど?)

 

 確かにQRコードにみえなくもない。

 しかし、これが光を出す魔法陣とか言われても困る。やはり元が魔王と聖女なだけに精霊としては変なのだろうか?

 一応不完全ながらも封じの聖女の記憶はある程度残っているし、ユーリウスが見たり聞いたりした全ては、ユーリウスが記憶していない事も含めて全て記憶しているし、思い出したり考えた祐介の記憶についても記憶しているが、考えてみればエイドスにおける精霊としての記憶は皆無なのだ。

 それとも中二病患者との接触で何処か悪くなったのか?


「あ、あの、エ、先生、一番簡単な魔法陣がコレで、エリ先生は全部で幾つくらい覚えてるの?」

「『覚えてるのでしょうか?』ですよユーリウス。そうですね、私が封じの精霊であるモモから教わった魔法陣は全部で二〇〇〇個ほどですが、記憶しているのは基本の一〇個ほどです。魔法の行使はそれらを組み合わせて行います。では記憶できたら教えて下さい」


 と、ユーリウスの前に一枚の羊皮紙を置いて糸紡ぎの作業にもどってしまうエリ。


(――いやいやいやいや! 無理だろ?! どうやって覚えるのさこんなの?!)


 ユーリウス。諦めたらそこで試合は終了ですよ?

 ところで普通の精霊は交感して経路繋いだ後、一体どうやってコミニュケーションを行っているのだろう?


「なるべく早く覚えてくださいね?」

「は、はい!」

「先生はユーリウスが精霊魔法を使える様になる日を楽しみにしています」

「――はい……!」


 がんばれユーリウス。

 是非とも魔方陣の使い方を覚えてくれ。




※1 暦

この世界には二つの月と一つのリングが存在し、太陰暦と太陽暦に加えて大環暦が存在する。

高緯度地域のゲルマニアでは太陽暦の一種が使われているが、太陰暦の影響が強い。

赤道付近では、リングの影に入る時期が存在しているため大環暦が使われる。

また、高緯度地域ではリングの影にはならないものの、リングからの輻射光によって夏場については高緯度でも比較的照度が高く、冬場は更に照度が低くなるため寒さが厳しい。

肉眼でも10程の細い縞模様として、複数のリングが識別出来る。



太陽暦 (ゲルマニア)


1月 太陽   赤

2月 風    白 

3月 星    白 

4月 地    赤 

5月 木    白 

6月 獣    赤 

7月 海(水) 赤 

8月 火    白 

9月 雨    白

10月 霜(雪) 赤 

11月 雪(氷) 白 

12月 夜   赤


地の週 1~6 1 2 3 4 5 6

水の週 1~6 7 8 9 10 11 12

火の週 1~6 13 14 15 16 17 18

風の週 1~6 19 20 21 22 23 24

木の週 1~6 25 26 27 28 29 30

人の週 1~6 31 32 33 34 35 36 赤の月にある

神の週 1~2 37 38 太陽の月二日、夜の月一日


一週間は基本的にはフレイ(平日)の5日で1日をフレイア(休日)に捧げて6日になる。


一年は398.89日。

閏年が3~5年に一度。

白の月は30日間。赤の月は36日間になる。

夜の月は38日間(38日間で太陽の月に第0日ができる地域もある)


リングは赤道上で薄くて広くも無いが、地軸が10度ほど傾いているため、地上には比較的大きな影が出来る。


フレイと呼ばれる大きい月の公転周期は19.6日

フレイアと呼ばれる小さい月の公転周期は9.8日


フレイ(フライ)、フレイア(フライア)、二人の手首に繋がる羽衣がリング

フレイとフレイアは兄妹の豊穣神。





次の投稿は明日の朝七時になります。

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