お父さんの言葉
「ただいま!」
「あっ!お父さん。お帰りなさい」
「あなた、お帰りなさい」
「ああ、はいお土産だ!」
「ありがとう」
「無事整理はつきました?」
「うん、すべて終わった」
「お疲れさま!」
「それでこっちでの仕事の事なんだが・・」
「ん?お父さんもう仕事決まったの」
「うん、レストランをやろうと思う!」
「あなた!」
「えっ!レストランを」
「そうだ」
「でもどこで?それにお父さん、しばらく料理の仕事なんてしてなかったんでしょ」
「実は一人ではないんだ」
「・・川口さん!?」お母さんがつぶやいた。
「ん?知ってたのか」
「いえ、直接聞いたわけではないけど・・なんとなくそんな気がして」
「川口さんって?」
「ほら、瞳ちゃんのところに尋ねてきた男のひと」
「あっ!」
「川口さんとはレストランを辞めてからも、たまに連絡をとりあっていたんだ。しかし、だんだんと数が減り、ここ数年は連絡をとってなかったが、つい最近、私から連絡をしてみた」
「理奈のあの話がきっかけね!」
「ああ。すると驚いたことにこの隣の町のレストランで働いているという。これは運命だ!・・私はそんな直感めいたものがあった」
「まるで奇跡だわ!」
「理奈の言う通りこれは奇跡だ!」
「それであなたは、瞳ちゃんのところのお店のことを、川口さんに話したのね」
「うん。早速行ってみるということだった」
「それで決まりなの?」
「その後の川口さんの話だと、すごくいい感じの店だったと・・」
「じゃあ決まりだね!」
「恐らくな。しかし、お父さんはまた見習いからのスタートだけどな」
「やったね!お父さん」
「よかったわね!」
「ああ」
私はすぐに瞳にメールした。
瞳は驚き、すぐお母さんに知らせてくると言った。
そして蘭君にもメールを送った。
「蘭君、大ニュースだよ!私のお父さん、瞳のところのお店でレストランをやるって」
「えっ本当に!!」
瞳からの返信には、その川口さんがまたお母さんを訪ねてきて、是非ここでお店をやらせてほしいと言っていたという。
これで100パーセント決まりだ。
そして夕食のあと、お母さんが1冊の古びたアルバムを持ってきた。
「ほらこれよ!理奈」
そこにはあるお店の前で、笑顔の若い男女。
「あっ!お父さんとお母さん。わあー若いねー!!」
「当たり前よ。理奈がまだ生まれる前だもの」
「おー懐かしいなあ・・この後ろのレストランで働いてたんだぞお父さんとお母さん」
「ふーん」
「そして、こっちに写ってるのが川口さんだ」
「へー」
私は一枚一枚ページをめくっていった。そこには幸せ一杯のお父さんとお母さん、それに仲間たち!
青い空に深い緑、寒そうに肩を寄せあう写真もあった・・。
素敵な素敵な二人の思いで。
「なんかやけるなあー」
「何言ってるのよ」
「だってホントだもん!」
「それはどうも・・そうだ理奈、あの話お父さんにしてみたら」
「ん?」
「ほら、あれよ!」
「あーあ」
「何の話だい?」
「お父さん、留学するのってやっぱ難しいことかな?」
「留学・・理奈は留学がしたいのか?」
「したいというか・・憧れ」
「憧れかあ・・」
それからお父さんは、ネットで留学について色々と調べてくれた。
そして
「理奈の人生、お父さんもお母さんもできる限り応援してやるつもりだ!留学についても、理奈が本当にしたいと言うなら反対はしないよ。だけど、憧れだけではダメだ。わかるかい?」
「うん」
「理奈は今14歳だろう。視野を広くもって、色々なものを見たり体験したりして、たくさんのことを吸収するのが大事な時期だと思う。そしてまた自分に問いかけたとき、それでも留学がしたいんだ!と思ったらまた話し合おう」
「わかった!ありがとうお父さん」
「お父さんもお母さんも理奈の味方だ!」
「そうよ」
「うん!」
なんだか涙が出てきちゃったな。いつも私を見ていてくれるお父さんとお母さん。本当にありがとうね!