プチデート
俺と理奈ちゃんは、部活を終え帰り道を歩いていた。
「佐藤君」
「何?」
「あの・・」
「どうしたの・・?」
理奈ちゃんらしくないなあ。いつもは結構ずばっと言う方なんだけど。
「明日の日曜、何か予定ある?」
「明日、いや別にないけど」
ん?もしやデートの誘い!!
「明日、私とデートしてくれないかな・・」
「いいよ・・えっ!デート!!?」
俺は鼻血を必死にこらえた。
「デートっていっても、どこかブラブラしたりとか・・プチデートって感じで!」
「プチデート?」
いまいち理解不能な言葉だけど。
「どうかな?」
「うんいいよ!」
「ホント、やったあー!」
理奈ちゃんのはじける笑顔。
そしてマンションに着くと、理奈ちゃんは走って階段を上がっていった。
「後でメールするね!」
そう言い残して。
俺は知らぬ間にガッツポーズを決めていた・・。
イエーイ!
「ただいまー」
「お帰り」
俺は一直線に自分の部屋に行き、スマホをに全神経を集中させた!
「あれ?蘭は」
「部屋に入っちゃったよ!」
「いつも腹へったあーって言ってくるのにね」
「なんか顔が真剣だったよ」
「あら?何か学校であったのかしら・・」
「僕見てくるね!」
「蘭、どうしたの?」
「・・・」
翼は俺の部屋のドアを開けていた。
それでも俺はスマホから目をはなさなかった!
「お母さん、蘭やっぱり変だ!」
「何してたの?」
「携帯をにらんでた!すごく怖い顔で・・」
「まあ・・」
そして30分後、理奈ちゃんからのメールが届いた!
『まず、待ち合わせの時間と場所なんだけど、午前10時にいつもの場所でいいかな?』
いつもの場所とは、2階の踊り場のことだな!
『わかった』
『あとは、どこに行くかなんだけど・・佐藤君はどこか行きたいところあるかな?私はこっちに来たばかりだから、どこに行っても新鮮で楽しいと思うんだけど』
デートの場所かあ・・そう言われてもなあ・・。
「母さん!」
俺はキッチンに走った。
「何よ急に?!びっくりするじゃない」
「どこかいいところ知らない?」
「えっ?」
「デートだよ!デート!!」
「デート?」
「どこに行ったらいいのかなデートって?」
「ははあー、理奈ちゃんとだな・・」
「いいから早く教えてよ!どこかない?」
「△△公園なんていいんじゃない!色々施設も揃ってるし。蘭も何回か行ったことあるでしょう」
「△△公園ね・・わかった!」
「まったくあの息子ったら!」
俺は急いで理奈ちゃんにメールを送った。
『△△公園なんてどうかな!?色々遊べたりもするし』
『わかった。じゃあ△△公園で決まりね!・・明日天気どうかなあ?』
「母さん!明日の天気は?晴れ、雨」
「一日中いいお天気よ!」
『明日は一日中晴れ!』
そして夕食のとき・・。
「ん?蘭、にやけてるぞ顔が」父さんは言った。
「・・・」
「蘭は明日デートなんだよ!」と翼。
「デート!誰と?」
「上のお姉さん」
「ああ・・」
「いいなあ蘭だけ」
「翼もデートすればいい美雨ちゃんと」
「うん・・」
「じゃあ行ってくるね!」
「手袋もしていきなさいよ!」
「うん」
俺が靴を履いていると、父さんがやって来た。そして小遣いを渡してくれた。
「ありがとう。行ってくるね」
時刻は10時5分前だ。
踊り場に出る扉を開けると、上から階段を下りてくる理奈ちゃんがいた。
「おはよう!」
「おはよう佐藤君」
「電車に乗るよ!15分ぐらいかな」
「うん。電車に乗るなんて何年ぶりかなあ・・」
「乗ったことはあるの?」
「そりゃああるわよ!」
駅に着くと、俺はキップを2枚買った。
「はいこれ!」
「お金払うね」
「いいよ!実はね、来るときに父さんに軍資金もらったから」
「ありがとう」
あっ、理奈ちゃん手袋してないんだ・・。
電車では二人並んで座ったけど、なんか周りの人たちの視線が気になるというか・・俺は全然落ち着くことができないでいた。どうやら理奈ちゃんも同じみたい。
駅を出ると、もう、すぐ前に大きな公園が広がっている!
「結構人がいるのね!」
「日曜で天気もいいからかな」
俺たちは、アスレチックで遊んで、小動物コーナーでハムスターと遊んで、お昼は園内のハンバーガー屋さんで、ハンバーガーを注文した。
「確かこの先の池が釣り堀になってたと思うけど」
「釣り堀って魚釣りの・・」
「うん」
「やってみましょうか!?」
「安藤さん、釣りとか出来るの?」
「意外と上手よ!」
「よーし、どっちがたくさん釣れるか競争しようか!」
「いいわよ」
理奈ちゃんは手際よくエサを釣り針につけ、早速水の中に針を潜らせた。俺も負けじと針を放り投げた!
・・しかし、いっこうに魚が釣れる気配はない!
「ダメだなあ・・」
「釣れないねー」
「ホントに魚いるのか?」
その時理奈ちゃんが言った。
「あのさあ佐藤君」
「ん?」
「名前で呼んで!私のこと」
「えっ!」
「瞳みたいに・・」
「・・・」
「急にじゃなくていい、徐々にさ・・」
「うん」
結局、二人とも魚は1匹も釣れないまま・・。
しかし、俺にはそんなことはもはやどうでもいいこと!理奈ちゃんが名前で呼んでくれだって。うひょー!
「そろそろ帰ろうか」
「そうね、風も冷たくなってきたし」
「・・これ」
俺は手袋を理奈ちゃんに渡した。
「蘭君の手が冷たくなっちゃうよ!」
「えっ!・・」蘭君!?理奈ちゃんは確かにそう言った。
「2回目だね!」
「うん!」
最初はサッカーのミニゲームのとき。
そして俺たちは電車に乗った。
「・・理奈ちゃん」
「えっ!・・」
「今日はありがとう!」
「・・・」
「じゃあ、また明日ね」
「ああ」
また理奈ちゃんは駆け足で階段を上っていってしまった。
『プープー』
そのあとすぐに着信。理奈ちゃんだ!
名前で呼んでくれてありがとう!