家ってお金ある?
「俺決めた!」
「いきなり何だよ一也?!」
「俺、絶対留学する!ロサンゼルス」
「だってさ瞳」
「勝手にしなさい!」ちょっとつれない瞳。
「うふふ」
「あっ理奈ちゃん今笑った!」
「えっ!うんん、笑ってなんかないよ」
「一也、それって一種の告白ってやつだよな」
まっ俺はお前より一足早く、理奈ちゃんに告白したけどな!
「何とでも言え!」
「ったく!単細胞・・」・・うひひっ、言われてやんの。
俺たち四人は久しぶりに下校が一緒だったが、この角で一也と瞳は左に曲がる。
「じゃあまた明日ね理奈」
「うん、バイバイ」
「じゃあな蘭」
「おう」
「一也のやつ、ありゃ本気だな!」
「瞳も邪険なふりしてたけど、内心は嬉しいはずよ」
「そんなもんかなあ」
「そんなもんよ!・・で蘭君はどうするの?」
「どうって何が?」
「この前、俺も行こうかなって言ってたじゃない」
「ん・・あれは冗談さ!一也ならともかく俺の頭じゃ逆立ちしても無理だよ」
「そんなことないと思うけどなあ・・」
「理奈ちゃんは行ってみたいの?外国とか」・・その時は一緒に連れてってって理奈ちゃん言ってたっけな!
「行ってみたい!できればそこで生活もしてみたい」
「ふーん」
そうかー・・理奈ちゃんとならいいかもなあ留学も。だけどなあ・・。
「ん~」
「蘭、何考えてるの?」
帰るなりリビングのイスに腰掛けため息をつく俺に、声を掛けてきたのは翼だ。
「青春時代には悩みはつきものってこと!」
「ん?何それ」
「この問題を語るには翼はまだ幼すぎるな!」
「・・何バカなこと言ってるの!?」
「あっ、母さんいたの・・」
「洗濯物をとりこんでたのよ」
「ふーん」
「それで青春の悩みとはなんなの?」
「俺留学しよっかなあ!」
「はあ?」
「留学だよ留学!外国で勉強するやつさ」
「それは母さんもわかるけど、誰が留学するって?」
「俺さ!」
「それは無理じゃない!ねーお母さん。だって蘭、頭わるいもん」
「うるさいぞ!翼」
「残念だけど蘭、翼の言う通りね!」
「これから猛勉強しても?」
「そうねー。それに留学なんてタダでは出来ないのよ。お金がいっぱいかかるわ!」
「えっそうなの!?」
「当たり前でしょ」・・ガアーン。
そんな俺は父さんの帰りを待った。
「ただいま」
「お帰りなさい!父さん」
「ん?珍しいな蘭か」
「父さん、単刀直入に聞くけど・・」
「何だ?」
「家ってお金ある?」
「ない!」
「くっ・・終わった・・」
俺の大いなる野望は、玄関を入ったばかりの父さんのたった一言で、見事なまでに砕け散ったのだった。
俺はとぼとぼと自分の部屋に退散するしかなかった。
「どうしたんだ?蘭のやつ」
「それがさ・・・」
今ごろ母さんから事情を聞いて、父さんも笑ってるんだろうなあ・・。
あーあ。