表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/123

昔の夢

「おはようー!理奈ちゃん」

「蘭君、おはよう!」

俺たちはいつもの場所で挨拶をかわした。


「ねー理奈ちゃん、理奈ちゃんのお父さんて調理師の資格があるんだったよね?!」

俺は昨日思ったことを口にしてみた。

「うん、昔レストランで働いてたって!」

「そっか」

「それがどうかしたの?蘭君」

「いや・・ほら、瞳のお母さんがやってるお店さ、前はレストランだったって言ってたろ」

「うん、知り合いの人がやってたとか・・」

「そこでやれないかなあ?!レストラン」

「えっ?」

「理奈ちゃんのお父さんだよ」

「それは難しいよ。もう10年以上もブランクがあるんだから。それに当時はただの見習いって言ってたもん!」

「やっぱりダメかあ・・いいアイディアだと思ったんだけどなあ」


「おはよう蘭、理奈ちゃん」

「おはよう」

「おはよう」

瞳と一也だ。今朝はめずらしく途中で合流。

「瞳、瞳のお母さんの喫茶店さあ、まだどうするか決まってないんだろ?」

「うん、不動産屋さんには相談してるらしいけど。何で?」

「実はね・・」

理奈ちゃんが瞳と一也に説明してくれた。

「えっ!じゃあロシア行きは無くなったのね」

「うん!」

「よかったね!理奈」

「うん」・・でも今度は瞳が遠くへ行っちゃうんだよね。


「レストランかあ・・いい話じゃんか!なあ瞳」

「そうなればお母さんもひと安心だろうけど、でも理奈の話だと無理っぽいね」

「ちぇダメかあ」

「一也、もし理奈ちゃんのお父さんがレストランを始めたら、ただでハンバーグかなんか食べられると思ったんだろう!」

「えっ!・・それだけじゃないよ・・」

図星か!


「理奈、ダメもとで今度お父さんに聞いてみたら!」

「うーん・・話はしてみるけど・・」


そして学校の帰り道。

「理奈ちゃん、あまり深刻に考えないでね!今朝の話」

「うん、わかってる」

「じゃあね!」

「じゃあね!」


「ただいまあー」

「お帰り」

「おっ、理奈か」

「うん、ただいま」

「お帰り。お父さん、明日の朝早くに北海道に一度戻るよ。荷物とかあるからね」

「うん・・お父さん、こっちでの仕事はどうするつもり?」

「うん・・とりあえず、今までやってきたのと同じような仕事を探すつもりさ」

「そうだよね・・」

「どうかしたのかい?」

「瞳のところがロサンゼルスに引っ越すって話したでしょ。瞳のお母さん、お店を借りて喫茶店をやってるの」

「瞳も何回かご馳走になったのよね!」

「そうだったのか。でも瞳、それとお父さんの仕事と何か関係でも?」

「お父さんそこでレストランをやらないかなあと思って」

「えっ!?レストランだって」

「だってお父さん、調理師の資格持ってるんでしょ!」

「あるにはあるけど、大昔のことだよ。とてもとてもレストランだなんて・・」

「そうね、ちょっとブランクがありすぎるわね」お母さんの口調も、それは無理って言ってる感じ。

「それに経験もそれほどないからね」

「やっぱそうだよね・・」


私は自分の部屋に行き、蘭君にメールを送った。

「やっぱり無理みたい!」


そうよね、そんなに簡単にいくわけないよね!子供が考えるほどあまくはないってこと。

でもちょっと期待してた自分がいる。お父さんがレストランで働くこと・・それも事実だな。


翌朝

「やってみるかな!?」

「何をです?」

「昨日理奈が言ってたレストラン」

「えっ!」

「・・・」

「そんなに簡単なことではないですよ!」

「それはわかってるよ!」

「あなたあのレストランでどのくらい働いていた?」

「3年・・か・・な・・」

「たった3年でしょう」

「ダメかなあ?」

「さあ、どうでしょうね・・」

「じゃあ行ってくるよ」

「気をつけてね!」

「ああ」


まさかあのひと本気で!・・そんな予感がした。

つきあい始めた頃のあのひとは、料理人になることが夢だった。そのことをよく私に話してくれてたし、海外に修行に行くと本気で考えていたほどだ!しかし父親が猛反対だった。

そんな折、あのひとに目をかけてくれていた料理長が体調を崩し、レストランを退職。それを機にあのひとも、飲食の仕事から身を引いたのだった。

それが40歳を目前にした今、再びそのチャンスが訪れた!それを思えばあのひとの心が動くのもわかる。

私は何があってもあのひとについていく覚悟だ。しかし、理奈のことを思うと・・簡単にはうなずけない。


飛行機の中で私は考えていた。

さっき彼女に言ったことはまんざら嘘でもない。

料理人になる夢など、とうの昔に忘れてしまっていたが、ひょんなことで再び私の心に微かだがよみがえってきたのだ。

しかし、私には家族がある。そう簡単に夢など追いかけていいはずもない・・。


日曜日

「お母さん、お店の方どうなるか決まりそうなの?」

「うん、実はねお店を一度見てみたいって人がいてね」

「へー、そうなんだ」

「今日の午後来てくれるんだ」

「決まるといいね!」

「そうね。良さそうな人ならいいけどね」

「家の方も2~3、不動産屋さんに話が来てるって!」

「そっか!いよいよって感じだね・・」







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ