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うまくいかない

「行ってきまーす!」

「蘭、いつもより10分早いわよ」

「いいのいいの・・」

理奈ちゃんより先に行って、外階段で待っててやるんだー!

俺は靴を履いて勢いよく飛び出した。


そして外階段への扉を開けた。

「おはようー蘭君!」

「あっ、理奈ちゃん・・」

「ヘヘェ!ちょっと早く出てきちゃった」

「そうなんだ・・」

「蘭君もいつもより早いよね」・・蘭君が今朝は10分早く現れること、私なんとなく知ってたもん!

「えっ、うん、まあ・・」

理奈ちゃんの方が上手でした!


ホントに理奈ちゃん、髪伸びたよなあ・・。それにすごくキレイに・・。

「ん?蘭君何考えてるの?」さっきからチラチラ私を見てるな。

「いや、特には何も・・」

「きのうね蘭君が夢に出てきたよ!」

「えっ!俺が理奈ちゃんの夢に」・・俺の夢にも理奈ちゃんが登場したんだぜ!

「うん!体育祭の徒競走で、蘭君が1等賞を取ったんだ」

私、おもいきり応援したんだよ。

「へー・・」

「蘭君、足速いもんね」

「そうでもないよ。だってメチャクチャ速いやついるからさ。俺はいつも2番か3番ってとこかな」

「そうなんだ・・」

「理奈ちゃんこそいつも1番なんじゃない!?」

「ん?どうかなあ」


そんな時、後ろから声がした。

「オーイ蘭、理奈ちゃん!」一也だ。

「おはよう和久井君」

「おはよう。二人とも今日はやけに早いじゃんか」

「ああ、たまにはね」

「あれ?今日は瞳と一緒じゃないの?」

「うん、迎えに行ったら先に行っててくれって」

「そう・・何かあったのかな?」

「訳は言ってなかったけど、寝坊じゃないか」

「・・・」瞳が寝坊するわけないよな。


学校に着き、特に意味のない雑談があちらこちらに・・。朝のHR まであと5分だというのに、瞳の姿はまだなかった。

そして俺がトイレに行こうと廊下に出たときだ。こっちに向かって歩いてくる二人。

一人は担任のミセス山岡、もう一人は・・瞳だ!

俺はトイレに行くのを諦め席についた。


『ガラガラ・・』

ミセス山岡と瞳が教室に入ってきた。ややざわつく教室。


「起立、礼・・」


そしてミセス山岡はゆっくりと喋り始めた。

「えー、急な話なんですが、田村さんが転校することになりました!お父さんの仕事の関係で・・」

「えー!」

「うそー!」


「えっ!瞳が転校だって」

「瞳が・・」

俺も理奈ちゃんもクラスのみんなも、信じられない!といった声をあげていた。

一也は・・口が開いたままフリーズだ!


瞳のお父さんといえば、かなり転勤の多い仕事をしてるんだっけな。これまで何回も職場が変わって、そのたびに単身赴任してたんだよな。それでもここ数年は、一緒に住んでたはずだけど、また転勤になっちゃったんだろうか?しかも今度は単身赴任ってのが無理だとか・・。


「じゃあ田村さん、みんなに説明してくれるかな」

「はい・・私の父の仕事はとても転勤が多くて、私が知ってるだけでも5~6回は転勤してます。そのたびに父は単身赴任をしてたんですけど、今回はかなり長い期間、5年とか10年とか帰ってこれないそうなんです。それで私たち家族も父と一緒にそちらに行くことになりました」


「それでどこなんだ引っ越し先は?」ほとんど涙目の一也が質問した。

「ロサンゼルス!」

「はぁ?」

「ロサンゼルス!?」

俺も思わずうなってしまった。

「うん」


「瞳、それでいつまでこっちにいられるの?」

「夏休みまで・・」

「そんなに急に・・」


そんなわけで今日のうちのクラスは、一日中ワイワイガヤガヤと、ちっとも落ち着きがなかった。


部活が終り、俺はいつもの場所で着替えを済ませた。そろそろ理奈ちゃんがやって来るはずだ。

「お待たせー蘭君!」

「さあ帰ろうか」

「うん。今日の曲なんだと思う?」

「ん・・たぶんコンドルは飛んで行くかな」

「私もそんな気がする」


♪ルルルル~ルル~・・♪

二人の勘は的中した。

蘭君と二人で聴くこの瞬間が私は何より大好きだけど、今日はなんだか悲しい音色・・。


「それにしても驚いたな!瞳のこと」

「うん!ホント驚いた」

「一也のやつしょんぼり帰ってったよ」

「瞳どんな気持ちだろうなあ・・?」

「ロサンゼルスかあ・・遠すぎるよなあ!」


「じゃあまた明日ね!後でメールするね」

「うん」


「ただいまー」

「お帰りー蘭」

「お帰りなさい」

「母さん、瞳が転校するんだってさ!」

「えっ!」

「どこだと思う?行先」

「さあ」

「ロサンゼルス!」

「ロサンゼルス!」マジで驚いてる母さん。


「お父さんの転勤で、5年とか10年そっちにいるんだって」

「それで家族一緒にってことかあ」

「そうらしいよ」

「こっちにはいつまで?」

「夏休みまでこっちにいるってさ」 「そう!あっという間だね」

「うん」


小学校からずっと一緒だったからなあ、なんかまだ信じられない。一也はなおさらだろうな。瞳のことが大好きなんだから・・。


理奈ちゃんがこっちにいられる可能性がでてきたら、今度は瞳が遠いところへ。

あーあ、なかなかうまくいかないや。








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