譲れないよ
「ただいまあー」
「お帰りー!どうだった試合は?」
「男子も女子も二回戦突破よ!」
「あら凄いじゃない」
「まあーね」
「そうだ!理奈にビッグニュースよ」
「なに?」
「お父さん、もうすぐこっちに来るわよ!」
「えっ!お父さんがあ」
「そうなの。理奈が出掛けるとすぐ、お父さんから電話があったのよ。今成田に着いたってね」
「そうなんだ」
お父さんが私たちに会いに来るなんて・・もしかして・・。
「何か急用かな?」
「電話では何も言ってなかったわ」
「私がお父さんに話をする前に全部決まっちゃったんじゃ・・」
「理奈・・」
「どうしようお母さん」
「心配ないわよ!言ったでしょ、お父さんも理奈の気持ちはよくわかってるって」
「でも・・」
「あっ、いけない!理奈、蘭君と翼君を呼んできてくれない。蘭君お母さんから電話があって・・」
私は急いで外階段を下りて蘭君と翼君のところへ・・。
しかし姿がない。
もしかして合鍵持ってたのかな・・。
『♪ピンポン』
・・ダメだ。どこ行っちゃったんだろう?
そして私は外階段を下りていった。すると
「あっ!お父さん」蘭君と翼君も一緒だ。
「あっ!理奈お姉さんだ」
「理奈ちゃん!」
「蘭君に翼君!」
私はお父さんたちを連れて家に戻った。お母さんは蘭君と翼君のために、冷たいカルピスを準備してくれていた。それをゴクゴクと飲む蘭君と翼君。なんかカワイイ!
「理奈たちは今日サッカーの試合だったんだろう。どうだった?」
「お姉さんも蘭も両方のチームが勝ったよ!」
「ほう!それはたいしたもんだな」
「まだ地区予選の1,2回戦ですから」
「それで勝ち抜けばもっと大きな試合に出場出来るんだね」
「はい」
「女子は強いけど、男子チームは弱いからなあ・・」
「黙れ翼」
「えっ?そうなのかい翼君・・」
「ねー蘭」・・・。
そして私はタイミングをみてお父さんに言った。勇気を出して!蘭君がいてくれるから大丈夫。
「あのねお父さん、私お父さんに話があるんだ」
「翼、お母さんまだか見てこようぜ」
「ん?・・うん」
蘭君は気をきかせてこの場をはなれようとしている。それでも構わず私は続けた。
「私この町でもう少し暮らしてみたい!」
「理奈・・」
「友達と勉強やサッカーがしたい!それに・・」
「それに?」
「・・蘭君から遠く離れてしまうのは嫌なの!」
これが私の本当の気持ち!
「うっ・・」
さすがに蘭君は驚いているみたい。
「それが理奈の本音ね」
「お母さん・・」
「あなたも気づいていたはずよね」
「ああ」
「お父さん・・ごめんなさい・・」
「謝ることはないよ理奈。お父さんももう一度考えてみるよ!一からね」
「うん」
「まだまだ子供だと思ってたけど、成長したな!理奈」
お父さん、本当にごめんなさい。私、お父さんのこと大好きよ!まだまだお父さんとお母さんに甘えたい中学二年生。けど、けど今回のことだけは・・譲れないよ。
『♪ピンポン』
「蘭君と翼君のお母さんかな・・」
そして、翼君が玄関に走り出した。