表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/123

そんなんじゃ全然届かないよ

私はなんだか気持ちがウキウキしていた。原因はわかっている、蘭君だ!

私のために必死でゴールをねらってくれた蘭君。

それが叶わなくて、ちょっといじけた蘭君。

そのすべてが私の元気の素だ!!


そしていよいよ女子の試合が始まった。


開始早々、私はボールを受けとると、相手ゴールに向かって猛スピードのドリブルをしかけた!

不意をつかれたかたちの相手ディフェンスは、私の動きについてこれない。

「シュートまでいける」

私はゴールに一瞬目をやり、そのまま右足を思いきり振り抜いた!


放たれたボールは、ゴールキーパーの右手をかすめながらゴールネットを揺らした。あっという間の先制点だ!


皆の頑張りで、結局5対0でハーフタイムに。


「蘭君、見ててくれた?!」

「・・参りました」


「理奈お姉さんスゴーい!」

「翼君の応援のおかげかな」

「えっ?ぼくの声聞こえたの」

「もちろんよ」・・本当に聞こえてたよ!


「理奈、後半2ゴール決めて、ハットなんとかをやっちゃいなよ」

「ハットトリックだろう!」

「瞳も和久井くんも、そんなに簡単にいかないって」

「だって、敵は完全に戦意消失だぜ。意外と可能性大かもよ」・・その気になれば、今の私なら出来ちゃうかも!


私はふと蘭君に目をやった。

「蘭君どうしたの?なんだか顔がコワイ」何か考え事?

「理奈ちゃん、もしかして・・ロシア・・」

「えっ!蘭君気付いた?」

私の心の中を蘭君は知っているの!?

「やっぱりそうか」

「うん!そう決めたの」バレてたか・・ 。


そして、そのまま私はは再びピッチに戻っていった。


「理奈お姉さんガンバレー」

「理奈、ハットなんとか決めちゃえー!」

「理奈ちゃん行けー!」


後半もこちらのチームが完全に試合を支配し、3ゴールを奪った。

みんなも私の動きにつられて、すごいパフォーマンスの連続。完全にチームワークの勝利だ!

私のハットトリックはまたの機会に。


あれ?蘭君、私たちの勝利あまり喜んでくれてないの・・。

話をしても上の空だし、昼食の時も黙っちゃってたし。


「蘭、今度こそ決めてよ!」

翼君の応援も耳に入ってない感じ。


そして、男子の二回戦が始まった。


明らかにおかしい。

午前中のプレーとは明らかに別人の蘭君。全然動きにキレがない。いったいどうしちゃったの!?


「蘭のやつ全然いいとこないぜ!」

「そうね」

「蘭・・」

和久井くんも瞳もそして翼君までが、蘭君の異変に気づいている。


そんな蘭君をみて、私はいてもたってもいられない!

「私ちょっと行ってくる!」

「理奈、いくってどこにいくの?」

「本部席よ」

「はあっ?」


「必ずゴールを決める!そして、私に勇気を届ける」・・そう言ってくれたじゃない。

ゴールこそ奪えなかったけど、午前中のあの蘭君の必死なプレーのおかげで、私はこんなに元気いっぱいなのに。蘭君、蘭君・・。


「失礼します。ちょっとマイクを貸してください」

本部席に着いた私は、係りの人にそう告げるとマイクを握った!

『こらー蘭、私に勇気をくれるんじゃなかったの!そんなんじゃ全然届かないよ!』

そう大声で叫んだ私、蘭君から視線を外すことはなかった。


しばらくすると前半終了のホイッスルが響いていた。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ