でもきっと大丈夫
♪ラララ・ラララ・・♪
私は出掛ける準備をしながらお母さんに聞いてみた。
「ねー、お母さん、私の今の気分がどんなかわかる?」
「えっ?どうしたの急に」
「だってお母さん、私の鼻唄を聴くとわかるんでしょ!?」
「・・もちろんわかるはわよ!今日の理奈はすこぶる元気」
「ん・・すこぶるとまではいかないけど、なんか晴れやかって感じかなあ」
「ほお、何か良いことでもあった?」
「うん・・ねーお母さん、今日帰ったらお父さんに電話していいかな?」
「いいけど」
「私の本当の気持ちをお父さんに伝えたくてさ」
「そっか!やっと自分に素直になれたか・・」
「えっ?」
「私はあなたの母親よ!」
「もしかして、私の考えてることがわかるの?」
「うん!おそらくお父さんもね」
「えっ!お父さんも・・」
「じゃあ、行ってくるね!」
「お母さん、今日は応援に行けないけど」
「わかってる。でも平気よ!」
「・・そうか!蘭君が隣にいてくれるもんね」
「うん!」
「頑張ってよ」
「はーい!行って来まーす」
いよいよ5月、地区予選の初日!私は約束の時間に外階段に向かった。私の気持ちは、蘭君のお母さんの言葉で救われた感じ。それにお父さんもお母さんも、私のことをわかっていてくれた。それまで重かった私の気持ちは、なんとなくだけど開放されていた。
そして、外階段には蘭君の姿が。
「蘭君、おはよう!」
「おはよう!」
「珍しいね、蘭君が私より早いなんて」
「ん・・うん」
もしかして蘭君、私のこと心配してくれてるの?
「理奈ちゃん・・」
「ん?なに」
「いや・・」
「蘭君、私ね、お父さんにちゃんと自分の気持ちを伝えようと思うの!」
「えっ」
「私の本当の気持ちを・・」
「理奈ちゃんの本当の気持ち・・」
「そう!・・だから蘭君、私を応援してくれる?」
「応援?」
「私に勇気をください!」
ただ隣にいてくれればいい。
私がウジウジしたときは、背中をポンッと叩いて欲しい・・。
「理奈ちゃん・・」
「蘭!」
「理奈!」
和久井君と瞳だ。
蘭君と和久井君の後ろを、瞳と私は歩いていた。
今日の試合のことや、なんでもない世間話をしていると
「なんかさあ、今日の理奈元気ありありって感じ」
「えっ?」
「だって、さっきから話題をふってくるのは理奈ばっかりでさ。そんな理奈を見るの久しぶりだなあ」
「ごめん」
「違うよ!嬉しいの!そんな理奈の姿が」
「瞳・・」
会場に着くとコーチの指示で、私たちは更衣室に向かい、そこで瞳たちとも別れた。
そして蘭君はいつもの場所に・・。
着替えを済ませグラウンドに出ると、蘭君は翼君たちと話をしていた。私がその輪に加わるタイミングをはかっていると、男子に集合がかかり蘭君は行ってしまった。
「翼君!」
「あっ!理奈お姉さん」
「蘭君の応援ですか!?」
「翼がどうしてもって」
「だって今日を逃したらもうないかもしれないんだよ。その可能性大だもん」
「あら、どうしてなの翼君?」
「試合に負けちゃうってこと」
「そうかなあ。私は勝つと思うよ!」
「さーね・・」
「理奈ちゃん、もしかして・・」
「はい!今日帰ったらお父さんに電話するつもりです。私の本当の気持ち伝えるために」
「良かった」
「色々心配してもらって・・」
「うんん、私なんか何も・・」
すると
「あっ!ヤバイ・・あーああ」と翼君のため息。相手に先制されてしまったのだ。
しばらく膠着状態が続き、前半の残り時間もわずか。
「蘭、頑張れー!」翼君の声援。
その時だ
「あっ!みてみて!蘭にボールが来たよ」
「うん!・・蘭君」
私は夢中で胸の前に手を合わせた。
蘭君は華麗なドリプルで相手をかわしていく。そして・・蘭君、決めて!
「いけ!!蘭」
「蘭君!」
しかしボールは右ポストにわずかにはじかれ、ゴールラインをわってしまった。
「あーっ・・」
残念がる翼君。
そしてハーフタイムを告げるホイッスル。
でもきっと大丈夫!蘭君たちならきっと・・。