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♪ラララ♪

♪ラララ・ラララ・・・

「・・理奈、やっぱり迷ってる?」

「えっ!」

「歌を聴けばわかるわよ・・」

「歌を・・?」


私は知らないうちに鼻唄を歌っていたみたいだ。私がこんな風に鼻唄を歌うときは、何か良いことがあって、心がウキウキする時に口をつくんだとか・・。私はわからなかったけど、いつだったかお母さんに、そんなことを指摘されたことがあった。

でも今日は違った。お母さんの言う通り、私は迷っていたんだ。


「理奈、今日部活は何時まで?」

「午前中だけ」

「お母さんちょっと出掛けるから、お昼、お弁当作っておくわね!」

「うん」


部活かあ・・最近はちっとも練習に身が入らないな。来月の終わりには、ロシアに行っちゃうんだし、地区予選が終わる頃には、私はもうここにはいないんだし・・。

何より大好きな蘭君とサヨナラだなんて・・。


そして外階段

「理奈ちゃん、おはよう!」

「おはよう」


蘭君と私は、学校に向かって歩き出していた。春風が気持ちいい朝なのに、私の気持ちはちっとも晴れない。

「理奈ちゃん、どうかしたの?」

心配そうに蘭君が聞いてきてくれた。

「うん、ちょっと頭が重たい感じで・・」

「えっ!・・大丈夫?」

「うん」

「今日は練習休んだ方がいいんじゃないか」

「・・・」

「俺、先生に言っとくからさ」

「うん」


結局私は、今日の練習を休むことにした。大丈夫って言うのに、蘭君は私をマンションの前まで送ってくれたのだった。


「ただいま」

「ん?理奈、どうしたの?」

「ちょっと頭が重たくて・・」

「あら!」

お母さんは、私のおでこに手をあてている。

「熱はないみたいだけど・・」

「うん」

「お母さん、出掛けるの止めようか!?」

「大丈夫よ!」

「そう・・」

「うん」

「じゃあ、何かあったら電話してね」

「うん、わかった」


お母さんは心配そうな顔つきのまま、玄関に向かった。

「なるべく早く帰るからね」

「うん。でも、本当に大丈夫だからね」


そして私は部屋にひとりぼっちだ。頭が重たいといっても、風邪をひいてる訳ではない。そんなことは私が一番わかってること。お母さん、それから蘭君、心配かけちゃってごめんね・・。


それからテレビをつけてみたり、音楽を聴いてみたりするけど、私の心と体は、ただボーッとしているだけ。


しばらくすると部屋のチャイムが鳴った。

ピンポン

ん?もしかして蘭君・・。

でも、蘭君はまだ練習の真っ最中のはず。

「はい、安藤です」

「あっ、理奈ちゃん!下の階の佐藤です」

「蘭君のお母さん!・・すぐ開けますね」


「こんにちは」

「こんにちは。あれ、理奈ちゃんはサッカーの練習じゃなかったの?」

「ええ、実は・・」

私は蘭君のお母さんに事情を説明した。


「あら!大丈夫?」

「ええ・・」

「・・それはきっと・・心の病・・かな?」

「えっ!?」

「昨夜、蘭から聞いたわ。ロシア行きのこと」

「そうでしたか」


「昨夜の蘭もね、なんだか元気がないのよね・・」

「蘭君が?」

「表面では元気を装ってるけど。理由は理奈ちゃんと一緒かな」

「私と一緒・・」

「うん。理奈ちゃん、自分の正直な気持ちをもう一度お父さんとお母さんに伝えてみたら!どうしても我慢しなくちゃいけないこともたくさんあるけど、今回のことはそんなこともないと思うな!無責任な言い方かもしれないけどそんな気がする」


蘭君のお母さんは、もらいものだけどと言って、まだ泥のついたたけのこを持ってきてくれたのだった。そして、私のことをすごく心配してくれた。


ありがとうございます、蘭君のお母さん。

そうよね!ひとりでくよくよしてても何も解決しない。

蘭君のお母さんの言うように、もう一度話してみよう!私の本当の気持ちを・・。








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