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ツバメ

「お父さん、私、お母さんと一緒にロシアに行くわ!」

「そう自分で決めたのか?」

「うん、私が自分で決めたこと!」

「わかった。こっちでの学校とかの手続きを早速しておくよ。理奈、ありがとう」

「うんん、私が楽しみにしてるのよ!ロシアで暮らすことを・・」


お父さんとの電話で、私は少しだけ嘘をついてた。少しだけやせ我慢をしてた。少しだけ声が震えてた。


「ねーお母さん、久しぶりに今日出掛けない?」

「いいわよ」

「本屋さんでロシア語の本とか、ロシアの暮らしとかって本を見てみたいの!」

「そうね!お母さんもロシアのことはまるでわからないわ」

「お母さんもなの?」

「お父さん、ロシア人とのハーフなのにね・・」

「フフフッ・・」


私とお母さんは身支度をして、11時に家を出た。

「ん?ちょっと肌寒いかな・・」

「平気平気!もう4月よお母さん」

「そっか」

「あっ!見てお母さん、ツバメだ」

「ホントね!ツバメたちもこれから子育ての季節なのね」

「うん」


少し行くと

「理奈、あれ翼くんじゃない!?」

「えっ!ホントだ・・翼くーん」

「あっ!理奈お姉さん」

「どうしたのこんなところで?」

「あれだよ!」

そう言って、翼くんは頭上を指差した。

「あっ!ツバメの巣だね」

「あのなかに卵があるんだよね!」

「うん、雛が大きく育って、無事に巣立ちが出来るといいね!」

「うん。お姉さん、ツバメって飛び方がカッコいいんだよ!・・ヒューってさ。僕もあんなふうに空が飛べたらなあ」

「私もそんなこと思ったことあるわ」

「僕名前が翼だろう。だから背中から翼が生えてくればいいんだけどな!」

「空かあ・・」

「じゃあ僕帰るねー、バイバイ」

「バイバイ」


「背中に翼が生えるなんて・・翼くんも将来、蘭君に負けないくらいステキな男性になるわね!」

「そうだね」

「よし、理奈行こうか」

「うん」

「まずはお昼ご飯を食べないと・・」

「今日は何にするのお母さん・・?」

「たまにはラーメンもいいかなあ」

「ラーメンね・・よし!それにしよう」


「ただいまー」

「おかえりー」

「蘭、今理奈お姉さんに会ったよ!」

「どこで?」

「ツバメの巣のところ!」

「はあっ?・・それってどこだ翼」

「前の道をちょっと行ったとこだよ」

「ふーん・・」


「あーお腹いっぱい!」

「かなり量が多かったね」

「ホント・・やっぱりラーメンは味噌に限るな!」

「お母さんも、お父さんに負けないくらいの道産子ね!」

「あら、理奈だって味噌だったじゃない!」

「まーね」

「よし、じゃあ本屋さんを覗いてみようか」

「うん」


「これなんかどうかなあ・・『ロシア語 初級編』」

「そうね、中はどうなってる?」

「ん・・結構難しそう」

「どれも同じようなものかしらね」

「うん」

「理奈、向こうに行ってからでも遅くないんじゃない。それに、お父さんはロシア語が上手なんだから」

「お父さんに教えてもらうのがベストかな!でも、挨拶ぐらいは覚えたいな・・」


「理奈、これ見て・・素敵な街並みだわ!まるでヨーロッパ」

「えっ?」

「ほらこの写真なんか特に・・」

「ホントね!もっと田舎まちを想像してたけど」

「ロシアなんて広大だから、そういうところも多いでしょうけど、お父さんが居るところは首都のモスクワだから、こんな感じのところが多いんじゃないかしらね」

「ふーん」

結局私たちはこの一冊だけ購入することにした。


それから色々お店をまわり、お母さんは私に春らしい洋服を買ってくれた!


俺は翼の言ってたツバメの巣を見に来ていた。すると後から翼もやって来た。

「蘭!」

「なんだ翼も来たのか!」

「どう?雛はいるみたい?」

「いや、あそこにちょっと見えてるのは親のツバメだ。雛はまだみたいだな。鳴き声もしないし」

「そっか・・あっ!ツバメがもう1匹来たよ」

すると今まで巣の中にいたツバメは、空高く飛び立っていった。そしてやって来たツバメが、今度は巣の中へ。


飛び立ったツバメは猛スピードで空を飛び、そして急旋回!

翼はそのツバメの姿をじっと見ている。

「カッコいいなあー」

「翼も空を飛んでみたいだろう」

「うん・・蘭も飛んでみたい?」

「そりゃあ飛んでみたいけど、人間には無理だよな」

「そうだね・・」

「翼、ツバメ飛行機って知ってるか?」

「うんん、知らない」

「紙飛行機だよ!今度折り方を教えてやるよ」

「うん」


すると

「蘭君!翼くん!」

「理奈ちゃん!」

「翼くん、またツバメを見てたの?」

「うん」

「こんにちは蘭君、翼くん」と理奈ちゃんのお母さん。

「こんにちは!」


「理奈ちゃん、買い物?」

「うん・・これ!」

理奈ちゃんは買ってきた本を俺に見せてくれた。

「ロシアの・・」

「ロシアってどんなとこかと思って」

「そうなんだ・・」


こうやってどんどん現実になっていってしまうんだろうな!理奈ちゃんのロシア行きは。受け止めなくちゃいけないことだってわかってるけど・・。


ツバメみたいな翼が俺もほしいよ!そしたらロシアなんてあっという間だもんな。だけど人間は足で歩くしかないんだよね。

あーあ、理奈ちゃん、やっぱり理奈ちゃんが行っちゃうのは寂しいよ・・。







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