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大好き

俺たちは瞳のお母さんの店にいた。

「昨日の嵐ですっかり桜が散っちゃったね!」

「ホントだね」

店の窓からは、誰かの家の庭の大きな桜の木が1本見える。瞳の言う通り、殆ど花びらは散ってしまっている。

昨日は本当の春の嵐!雨風が強く、地面もまだびしょびしょだ。


「明日からまた学校だな」

俺はなんとなくそう言ってみた。

「ああ、なんか憂鬱・・」

「蘭たちは部活いつまで?」

「春の大会が終わるまでかな」

そうだ、5月にはもう地区大会が始まるんだ。

「今回も女子は、県大会までは楽勝だろうな!」

「だよね・・」

「あら、男子だってそうよ!」

「理奈、男子はいつも1回戦突破がやっとなのよ」

「そんなことないよね蘭君!」

「ん・・・」即答は難しいよ理奈ちゃん。


確かに男子の実力も、前に比べたらだいぶ上がってきて、この春休み中の練習も、かなり気合いは入ってたけど・・しかし、県大は無理だよね。


「じゃあ、明日学校で・・」

「バイバイー」


「蘭、明日から学校でしょ!制服クリーニングに出しておいたからね」

「うん」

「宿題とかはなかったの?」

母さんのその一言で、俺の脳は一気に覚醒した!

「あっ!そうだった」

「まさかまだ手をつけてないとか・・」

「・・・」その通りです。

「アホ!・・翼は、宿題終わってるの?」

「うん!」


ヤバイ!確かプリントが10枚ぐらいあったような気がするぞ・・。

俺は慌てて理奈ちゃんにメールを送った。

「理奈ちゃん、助けて!」

するとすぐに理奈ちゃんから返信が。

「何かあったの!?」

「プリント全然やってなかった!」

「プリントって宿題の?」

「うん」

「蘭君、プリント持ってすぐ来て!」

「はい」


「母さん、ちょっと出掛けてくる!」

「たくっもうー・・理奈ちゃん家でしょ!これ持っていきなさい」

「うん」

「蘭、頑張れよ!」と翼。

「じゃあ行ってくる」


俺は外階段をかけ上がった!

ピンポン

「蘭君、早く入って!」

「お邪魔しまーす」

「あら、蘭君いらっしゃい」

「すみません突然」

「どうしたの?」

「それが緊急事態で・・」

「えっ?」

「蘭君早く!」


俺は理奈ちゃんの部屋で、真新しいプリントを開いた。

「蘭君、もしかして今初めて開くのそれ?」

「はい・・」

「もうー蘭君!」さすがの理奈ちゃんも呆れ顔。

「・・あのこれ母さんから」

俺はアイスキャンディーを差し出した。

「早速始めましょう!」

「うん」

俺たちは、母さんがくれたアイスキャンディーを頬ばりながら、宿題に取り掛かった。と言っても、俺は理奈ちゃんのプリントを写すだけなんだけど・・。


俺がプリントを写している間、なんとなく理奈ちゃんはボーッとしている感じだった。

10枚もあったプリントだったが、さすがに写すだけなので1時間もかからずに無事終了!助かったー。


その時理奈ちゃんが口を開いた。

「蘭君、私・・お父さんのところに行こうと思う」

「えっ!」

「ロシアに行こうと思う」

「・・・」

ついに理奈ちゃんの口からそれを聞いてしまった!

「蘭君、ゴメンね・・」

「・・・」

俺は言葉が見つからない。


すると理奈ちゃんは言った。

「蘭君・・私のこと好き?」

その問いかけに、俺は不思議と驚くことはなかった。そして素直に

「・・好きだよ。大好き!」

「やっと聞けたな・・」

「理奈ちゃん・・」

「ロシアに行っても、ずっと蘭君のこと好きでいるね!」

「俺もさ!」


そして俺と理奈ちゃんは部屋を出た。

「あら蘭君、もう帰っちゃうの」

「はい、お邪魔しました」

「じゃあこれ持っていって!クッキーよ。翼くんと食べて」

「ありがとうございます」

「蘭君、そこまで送るわ」

「大丈夫!すぐ下だからさ」

「うん」

「じゃあ、また明日ね!理奈ちゃん」

俺はとにかくひとりになりたかった。理奈ちゃんのことを、ひとりで考えてみたかったから・・。


「ただいまー」

「おかえり」

「翼、クッキーもらったけど食べるかあ」

「うん!」

「あら、理奈ちゃんのお母さんから?」

「うん」


「それで宿題は終わったの?」

「終わった・・母さん、理奈ちゃん、お父さんのところに行くってさ!」

「・・そう」

「うん」

それ以上母さんはなにも言わなかった。


そしてその夜、理奈ちゃんからメールが届いた。

「私も蘭君が大好きよ!」

そのあとにハートマークが10個!


「俺もです!」・・返信。


理奈ちゃん、大好きです!



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