元気です
私はいつものように2階の踊り場にいた。最近はこうして二人で登校している。途中、和久井君たちと合流することもあるけど・・。
あれ、おかしいなあ?!どっくに時間は過ぎてるのに・・。
何かあったのかな?仕方なく私はひとりで学校に向かった。いつも隣に蘭君がいるから、急にひとりになるとなんだか寂しいな。こんなときに限って誰とも会わず、結局学校まで一人きりだった!
おしゃべりする相手がいない寒~い朝。
「おはよう」
「おはよう、あれ?蘭は一緒じゃないの?」
「うん、待ってても来なかったんだよね?!」
「どうしたんだろうね・・」瞳も心配そうな顔つき。
そして横山先生が現れて、蘭は風邪で学校は休みだと教えてくれた。
えっ!蘭君が風邪・・。お見舞に行きたいけど、インフルエンザかもしれないから遠慮した方がいいと。そんなあ・・。
今日は部活にも気が入らず、なんかダラダラしちゃってる。
そして翌朝も蘭が踊り場に現れることはなく、私はまた一人ぼっちで学校に向かった。
横山先生によると、蘭君はやっぱりインフルエンザだったと!蘭君大丈夫かなあ・・。
「安藤さん、安藤さんは確か蘭と同じマンションよね!」
「はい!」
「悪いんだけどこれ届けてもらっていいかな」
「はい」
横山先生から、今日配られたプリントを渡された。
そうだ、このプリントと一緒に手紙も渡そうっと!
でも男子に手紙なんて書いたことないからなあ・・。
・・何枚書き直しただろうか。色々文面を考えて、書いてはやめて・・。
それでもなんとか一枚の手紙を書き上げた!
佐藤君へ
昨日今日と、学校休みだったけどからだの具合はいかがですか?今日、佐藤君がインフルエンザだと、横山先生ら聞きました。治るまでまだ何日かかかるね。佐藤君に会えないのはすごく寂しいけど、ゆっくり休んで早く元気になってね!
『△△△@□□□・・・』
私のアドレスです。
気が向いたら連絡ください。
理奈。
これってもしかしてラブレターってことになるのかな!?私は急に頬っぺたが熱くなった。
よし、これとこれを持って・・私はいつもの外階段を下りた。そして205号室。
この奥に蘭君がいる。私は思いきってインターホンを押した。
『ピンポン』
ドキドキ・ドキドキ!
「はい」
「こんにちわ、安藤です」
「はい」
翼は玄関のドアを開けた。
「こんにちわ、もしかして翼君?」
いつか蘭君に弟のことは聞いていた。
「そう。お姉さんは蘭の友達?」
「うん」
「どう?蘭君の様子は・・」
「布団で寝てるよ!」
「そっか!じゃあ翼君、これを蘭君に渡してくれるかな。お手紙なんだけど」
「あっ!ラブレターだ」
げっ!気付かれた!
「えっ!・・うん、まあそんなとこかな」
「わかった!」
「それからこっちは学校から!じゃあお願いね!」
「はい」
「バイバイ」
「バイバイ」
ふうっ!まさか9歳の子からラブレターなんて言葉を聞くとは思わなかった。ドキッとしちゃったけど、なんとか平静を装うことはできたろう。
「お母さんはラブレターなんて書いたことある?」
「どうしたの突然そんなこと・・」
「ただ聞いてみただけだけど」
「誰かいるの?ラブレターを出したい男の子が」
「ん・・」
「いるのね!」
「お父さんにも出したことあるの?」
「もちろんよ!昔は携帯なんてなかったから、結構書いたわよ」
「それで、なんて書いたの?」
「そんなの覚えてないわ。20年も前のことよ」
「そうよね・・」
「でもねお父さん、お母さんが出した手紙、ずっととってたのよ!お母さんもそうだけど、手紙ってなかなか処分出来ないものなのよ。書いたひとの気持ちがいっぱい詰まってるからね」
「うん」
私の初めて書いたラブレター、蘭君はどんな気持ちで読んでくれたのかなあ?
『プープー』
あっ!メールだ。もしかして・・。
そこには、よく似た男の子がマスクをして2人。
『元気です!』って笑ってた。
私も思わず笑顔になっていた!
『私も元気です!』・・送信。