決意
「お邪魔しました」
「ごちそうさまでした!」
「いいえ・・またいらしてくださいね!」
「今度は是非うちで・・」
「そうですね!」
「じゃあね理奈ちゃん」
「バイバイ理奈お姉さん」
「じゃあね!蘭君、翼君」
「ふーっ!うまかったなあカニ」
「うん、美味しかったね!翼もお腹いっぱいでしょ」
「それにしてもあのウオッカはきいたなあ~」
「あなた飲みすぎたんじゃない?!」
「ちょっとだけな」
「蘭、元気ないね?」
「ん?」
「理奈ちゃんのことか?」
「うん」
「色々蘭に相談してくると思うけど、ちゃんと話を聞いてやることだな。まだまだお前たちは若いんだ!ここでどんな答えが出ようと、それは決して間違えじゃない。人の人生、あっちに転びこっちに転び成長するんだからさ。大事なのは気持ちだよ!」
「うん」
「さあ、もう一杯飲みなおすかなー」
「あなた、まだ飲むの!?」
「早く蘭と翼と一緒に酒が飲みたいなあ!」
「あら私は?」
「混ざりたいのか?」
「・・うん」
「どうする?蘭、翼」
「どうしょっかなあ~」
「どうしょっかなあ~」
「なんでそこで考えちゃうのよ・・」
それから父さんはビールを飲み始めた。
「蘭、翼、コップを持ってここにおいで!」
「えっ?」
「いいから・・」
「うん」
俺と蘭は言われた通り、コップを持ってお父さんのところへいった。するとお父さんはコップにビールをつぎはじめた!つぐといってもほんの一滴。
「じゃあ乾杯だ!」
「乾杯」
俺たち三人はコップを合わせた!そして一滴のビールを口に・・。
「うえっ!」
「まずっ!」
俺も翼も顔をしかめた。
私は部屋でひとり考えていた。するとドアをたたく音が、そのあとにお父さんの声がした。
「理奈、入っていいかい」
「うん」
「お父さん・・」
「理奈、ごめんね。楽しい時間のはずが、余計なことを話題にしてしまって」
「うんん、私なら平気よ」
「ならいいんだけど・・」
「お父さんはロシア語とか話せるの?」
「もちろんさ!」
「じゃあ今度教えて」
「えっ!」
「私一緒に行くよ!お父さんと」
「無理はしなくていいんだぞ」
「無理なんかしてない!私の本当の気持ちよ」
「そうか。それならお父さん嬉しいな」
「うん。お母さんにも話してくるね・・」
どうしてだろう?まだ心の整理もついていないくせに、ロシアに一緒に行くって言っちゃった・・。これは本当に私の本心なの?
理奈が無理をしていることはすぐにわかった!やっぱり単身で行こう。私はその時そう決めたのだった・・。
「お母さん、私ロシアに行くわ!」
「えっ!・・決めたの?」
「うん、決めた!」
「そう、わかったわ」
「そうと決まったらなんだかワクワクしてきたなあ・・」
「理奈ったら」
「蘭君にも連絡しておこーっと」
そう言って、私はまた部屋に戻った。すると、そこにはまだお父さんが・・。
「お父さん、どうしたの?」
「ああ、ごめんよ。もう寝るのか?」
「うんん、蘭君に今のこと報告しておこうと思ってさ!」
「そうか」
お父さんはそのまま部屋を出ていってしまった。
そして私は蘭君にメールをした。
「蘭君、私決めたよ・・・」
部屋に行くとスマホの着信ランプが点滅していた。理奈ちゃんからだ。
俺は意外とためらうことなくメールを開いた。
「蘭君、私決めたよ・・・」
それは、理奈ちゃんがロシアに行くことを決意したという内容だった。そして俺の体は一瞬凍りついた!
でも、理奈ちゃんが決めたことだ。俺はそれを受け入れるしかない。無理矢理にでも・・。
「わかった」
たったそれだけの文字を、俺は理奈ちゃんに返した。
理奈ちゃんは、遠い異国の人になってしまう。俺から離れて、遠い遠いところに・・。