超、超、超
いよいよ明日から春休みだ!
「蘭、小学校も今日終業式で翼も早く帰ってくるからね。お願いね!」
「うん」
「帰ったら絆創膏を替えるのよ」
「うん」
絆創膏とは、俺の右手親指に巻かれているもののこと。実は昨日、俺は名誉の負傷を負ったのだった。
俺は野菜ジュースを一気に飲み干した。
「行ってきまーす」
「気を付けてね」
その時俺には考えがあった!そう、理奈ちゃんと一緒にランチをするということだ。
扉を開けると、理奈ちゃんの笑顔!これだけで、俺の体はエネルギー満タンだ。
「おはよう蘭君」
「おはよう!」
「あれ?指ケガしたの」
気づくの早っ!
「これっ、大したことないよ!翼の宿題を手伝っててさ」
「宿題?」
「彫刻刀でね・・」
「そうなの・・大丈夫?」
「平気だよ!」
ちょっとヒリヒリするけどね。
歩きながら、俺は理奈ちゃんにランチのことを言うタイミングをはかっていた。そして・・
「あのさ・・」と俺。「あのさ・・」と理奈ちゃん。
二人同時に・・こんなことたまにあるよね。
「何蘭君?」
「うん・・実はさ、今日、お昼ご飯を一緒に食べたいなあ・・なんてさ」
「えっ!」
「ダメ?」
「ダメじゃない!私が今言いかけたのもその事よ」
「そうなの」
理奈ちゃんも同じことを考えてたんだ!なんか超嬉しい感じ・・。
「この前みたいに一緒にどうかなって」
「なんだそうだったのか・・」
「うん」
「翼もいるんだ!」
「大歓迎よ!」
「よかった」
「うちまたチャーハンなんだけど」
「うちも多分そうだろうな」
理奈ちゃんのお母さんが作るチャーハンは、ケチャップ風なんだよね!
教室に着くと一也がやって来た。
「蘭、今日なんか予定あるのか?」
「どうかしたのか一也?」
「今日も瞳のとこ行かないかなあと思ってさ!」
「えっ、またいくのか?卒業式の日に行ったばかりじゃんか。それに今日はダメなんだ!翼も今日早く帰ってくるから、家にいてやらないと・・」
それに理奈ちゃんとランチだからさ!
「そっか、じゃあ仕方ないか」
「わるいな一也!」
「理奈ちゃんは・・ダメだよな!俺ひとりで行くか」
「瞳も一緒なんでしょ!」
「そうだよ一也、そのままデートしちゃえよ!」
「えっ!」何照れてんだよ!
「何話してるの?」
噂をすれば・・。
「いや、なんでもないよ」
「一也のなんでもないは、何かあるってこと!」
「なんだそれ?」
「白状しなさいよ!」
さすがだね!瞳。
「蘭、部活ないときは連絡くれよな!」
「おう」
「理奈もね!」
「うん」
「じゃあね!蘭、理奈。ほら一也行くよ」
「じゃあな!」
「あっ一也!」
「ん?」
「頑張れよ!」
「おう!・・瞳、待てよー・・」
ああ、ああ、ホントに大丈夫か・・?
「理奈ちゃん、俺たちも帰ろうか!」
「うん」
理奈ちゃんと外階段で別れて、俺は自分の家に帰っていた。今日は理奈ちゃんがこっちに来てくれる。
テーブルの上には二つのお皿が!俺と翼のために、母さんが作っておいてくれたチャーハンだ!
「ただいまー」
「翼、おかえり!」
「あー腹減ったー・・あれ?蘭もまだ食べてないのチャーハン」
「うん」
「なんで?」
「なんでも!」
「なんで?」
「いいだろう・・」
しつこいぞ翼・・。
ピンポン!
「はい、佐藤です」
「あっ、翼くん!安藤です」
「理奈お姉さん!待って今開けるね」
理奈ちゃんだな。
「こんにちは翼くん!」
「お姉さん!・・どうしたの?」
「これ!一緒に食べようと思って」
「そうだったんだ・・」
「あっ!理奈ちゃん。どうぞ上がって」
俺は奥からそう叫んだ。
「お邪魔していい!?翼くん」
「うん!」
「お邪魔します」
「理奈ちゃん、そこの席どうぞ!」
「うん」
「それでか・・」なんだよ翼。
「翼くん、何が?」
「蘭がまだチャーハンを食べてなかったわけ」
「えっ?」
「いつもなら、帰ると着替える前にまずご飯だもんね!」
「そうなの」
「ねー蘭」
「余計なこと言うな!」
このおしゃべりが!
「そうだ翼、理奈ちゃんのチャーハンと半分こにしてもらったら!」
「ああ、私の方も食べてみる?翼くん」
「うん」
「うまいぞー!」保証する!
「リンゴもどうぞ!」
「ありがとう。これお姉さんがむいたの?」
「うん、ごめんね下手くそで!」
「そんなことないよ。蘭の方がもっと下手だもん!昨日は彫刻刀でケガするしさ」
「おっちょこちょいなのかな?!」
「そうなんだよねー」
「うわー!お姉さんのチャーハンめちゃくちゃ美味しい」
「そう、よかった」
理奈ちゃんは、とても嬉しそうにそう言った。
「蘭、僕これ食べたら友達のとこ行ってくるね!」
「ああ・・」
チャーハンを食べ終わると、翼は友達のところへ行ってしまった。
「どうしようか?理奈ちゃん」
二人きりだよ・・。
「私、蘭君のアルバム見たいな!」
「えっ?」
「ね!いいでしょ」
「うん」
「わー!かわいい!!これ蘭君よね」
「うん」
「こっちも・・隣は翼くん?」
「あっ、その写真は・・」
俺と翼のフルヌードじゃんか!
「ん?どうかした・・」
「いや、別に・・」
・・赤面・・。
「今度、私のも見せてあげるね!」
「えっ!理奈ちゃんの・・」
えー!理奈ちゃんのフル○ー○を。
「うん、もちろん洋服は着てますけどね!」
「そうだよね」
はあービックリした。
「私のアルバム、お父さんといっぱい写ってるよ!」
「そういえば、土曜日だよね!お父さんが来るの」
「うん!早く会いたいなあ。蘭君のことも紹介するね」
「うん」
バッチリ決めないとな!
「そうだこれ!」
「あっ!替えるの忘れてた」
理奈ちゃんが差し出してくれたのは、新しい絆創膏だ。
「見せて!替えてあげるよ」
「理奈ちゃんが?」
「うん」
超、超、超嬉し~い!!
理奈ちゃんはやさしく、俺の指から絆創膏を剥がし、新しいのに替えてくれた。理奈ちゃんの指が俺に触れるたびに、心臓はもうバクバク!
ありがとう!理奈ちゃん・・。