痛いっ!
ロシアかあ・・正直ピントこないな。あの人は父親がロシア人だから、ロシアにこだわる気持ちはわかるけど。
日本とは国家のあり方も違うし、当然生活様式も!そんな異国の地で3人でやっていけるのだろうか!?それに治安も・・どうしても不安ばかりが先にたってしまう。
3週間後、あの人はこっちにやって来る。
「お母さん、蘭君と翼くんとちょっと出掛けてくるね!」
「えっ?」
「公園でキャッチボールよ」
「うん」
ピンポン・・ん?誰かしら?
「はい」
「こんにちは!205号の佐藤です」
「あーあ、すぐ開けますね」
「すみません突然。今理奈ちゃんと会って、ご在宅だと聞いたもので」
「そうでしたか」
「あの、これイチゴです。主人の実家から送ってきたんですよ!」
「あら!・・よかったら上がりませんか」
「いいですか。じゃあちょっとだけ」
「いつも理奈が蘭君にお世話になっちゃって!」
「いえ、うちの蘭こそ・・」
「早速イチゴいただいちゃおうかしら・・うんーいいにおい!」
「沖縄旅行、だいぶ楽しかったみたいですね!」
「みたいですね!帰ってきてずっとその話でしたよ。あっそうそう、ご主人に帰り送ってもらったそうで・・」
「安藤さんのご主人はお一人で北海道に?」
「はい」
「そうですか・・理奈ちゃんたちも、いつかはまた北海道の方に戻っちゃうんですか?」
「はあ・・それが・・」
私は事情を説明した。
「えっ!ロシア!?」
「ええ」
「確かご主人のお父様がロシアの方とか」
「そうなんです。そこにこだわりがあるのかもしれません」
「蘭から、理奈ちゃんはもしかすると北海道に帰っちゃうかも知れないとは聞いてたんですけど、ロシアとは・・」
「私もまだ決心がつかなくて」
「無理もないですよ・・なるほど、そうだったんですか」
「この事はまだ子供たちには・・」
「わかってます」
「翼、お姉さんの球を受けてみろよ!」
「えっ?理奈お姉さんの・・」
「ああ」
「はい理奈ちゃん!父さんのグローブだけど」
「うん!」
「よーし、お姉さん、思いきり投げていいよ!」
「いくよー翼くん!・・それー」
理奈ちゃんは多分、半分ぐらいの力で翼に球を投げている。そして
「翼くん、どんどん強いのがいくわよ!」
「オー!」
「それー・・」
それでも6~7割の力だね!
「フウーッ、翼くんありがとう!」
「よーし翼、コーラでも買いにいこうか!」
「うん」
「理奈ちゃん、お疲れ!」
「翼くん、だいぶ速い球を投げるのね!」
「うん、俺もこの前そう思った」
「翼くん、ナイスピッチングよ!」
「理奈お姉さんもね」
「またやろうね!」
「うん!」
「翼、今のお姉さん、本気だしてないんだぞ!」
「えっ!そうなの」
「もっと、全然速い!」
「えー、見たいなあ!」
「見たいって、だれがその球を受けるのさ?」
「蘭に決まってるだろう!」
「フフフッ」
「嫌です」
この前は相当手が痛かったもんなあ。
「ねー理奈お姉さん、投げてみてよ!」
「うん」
「うんって・・」理奈ちゃん・・。
「蘭君、かわいい弟のため!一球だけね」
「じゃあ一球だけだぞ翼!」
「うん」
「じゃあ私、向こうから投げるね!」
俺は恐る恐るグローブをはめた。お願い理奈ちゃん、少しでいいから手加減してくれ!
「蘭君、座って!」
えっ!マジで投げる気だ!
あーもー、こうなったらやけくそだ!
俺はその場にしゃがみこみグローブを構えた。
「お姉さんいいよー!」
「いくよー蘭君!」
そう言って理奈ちゃんはピッチング動作を始めた。そして綺麗なピッチングフォームからその球は繰り出された!
『ビュー!』
来た!
『パシッ!』
「ウォー!すごい球だ」感激する翼。
「どう?翼くん」
「すごいよ!理奈お姉さん」
痛いっ・痛いっ・痛いっ・・早く手を冷やさないと!俺はコーラじゃなく、アイスクリームを買うことを心に決めた。もちろん手を冷やすために・・。