ロシア
「ただいまー」
「おかえりなさい」
「蘭君のお父さんに送ってもらっちゃった!」
「あら、そうだったの!」
「はいお母さん!これ」
「あら、何かなあ・・」
「開けてみて!」
「うん・・わあ!綺麗。星の砂ね」
「うん、それ一目で気に入っちゃってさ」
「ありがとう理奈」
「蘭君もお母さんに星の砂を買ったのよ!ちょっとこれと柄が違うやつ」
「そう、蘭君のお母さんもきっと喜んでるわ」
「お父さんにもちゃんと買ってきたわよ!お守りになってるキーホルダー」
「お父さん喜ぶよ!」
そう言えば、蘭君はお父さんになに買ったのかな?翼くんには買ってるの見たけど・・。
「お父さんから何か連絡あった?」
「えっ!・・うんん、あれからはないわ」
「そう・・」
連絡がなかったと言うのは嘘だ。本当はあの人から昨夜電話があった。でも、その事は今は理奈には言えない。
「ん?お母さん、どうかしたの」
「うんん、なんでもないわよ。さあ着替えてらっしゃい」
「はーい」
私は自分の部屋に行き箱を開けた。蘭君と同じシーザーだ。
どこに置こうかなあ・・。
私は制服を着替えるのも忘れて、あそこに置いたり、ここに置いてみたり・・。結局本棚の上から二段目のスペースに置くことにした!
着替えてリビングに戻ると、すでに夕飯の用意が出来ていた。そこでも沖縄の話題で盛り上がり、なかなかご飯が進まないほど。
「お父さん、こっちにはどのくらいいるのかな?」
「どうかしらね・・新しい仕事も見つけないといけないから、あまり長くはいれないかな」
「・・やっぱり北海道で仕事探すんだ」
「えっ」
「ひょっとしたらこっちで仕事を探すのかなあって・・」
「理奈・・」
「しょうがないか!お父さん、根っからの道産子だもんね・・私もだけどね」
「道産子なんて言葉、よく知ってたわね」
「友達とはよく使ってたよ!」
「東北から北海道は、今夜から猛吹雪らしいわ!」
「寒いだろうね!沖縄なんて23度もあったのよ。そう考えると日本て広いよね・・」
「ホントそうね」
昨夜のあの人からの電話は・・。
「ロシアの知人が、熱心に俺を誘ってくれている。一緒にやらないかと・・」
「えっ!ロシア」
「ああ。今度は列車じゃなく船を造る」
「船を?」
「そうだ!ロシア政府は今後造船業に力を入れると言ってる。今がチャンスなんだ」
「それであなたはどうするつもりなの?」
「やってみようと思う!」
「やってみるって、私たちはどうなるの?」
「一緒に力を貸して欲しい」
もちろん即答は出来ないと言った。しかし、あの人の言葉は本気だ!
理奈に、理奈にはなんて言ったらいいの。
「お母さん・・?・・お母さん!」
「あっ!ごめん」
「どうかした?」
「うんん・・」
なにか心配なことでもあるの?お母さん。
「ただいまあ!」
「おかえりー!蘭、お土産はー?」
「おう、あるぞー!翼にはこれ」
「ありがとう!」
翼には、シーザーのかたちのチョコレート。
「母さんはこれ!」
「あら!何かしら」
「開けてみて」
「・・あっ!星の砂だあ。ありがとう。でも蘭、よくこんなもの買おうなんて思ったわね」
「理奈ちゃんのおすすめさ」
しまった!父さんのお土産が・・あの目はお土産を待ってる目だ!どうしよう・・。
仕方ない・・父さんはこれ!」
「父さんにもあるのか?」
待ってたくせに・・。
父さんには、理奈ちゃんと買ったクッキー!父さん、それみんなで食べようね!
俺は部屋に行き堤を開けた。
どこがいいかなあ・・?
よし!俺は迷わず、ベッドのヘッドボードにシーザーを置いた。理奈ちゃんはどこに置くのかなあ・・。
そしてその夜。
ブーブー
「蘭君、沖縄旅行お疲れさま!楽しかったね」
「うん。飛行機は最悪だったけど」
「蘭君、お父さんにお土産買ったの?」
「忘れてた!だからクッキーをあげたんだ」
「やっぱり買ってなかったのね」
「へへぇ~・・母さん、星の砂すごく喜んでた!」
「うちのお母さんもよ。ねー蘭君、シーザーもう飾った?」
「飾ったよ!」
「私本棚に置いたんだけど、蘭君は?」
「ベッドのところ!」
「そうなんだ。私迷ったんだけど、結局本棚にしちゃったんだよなあ・・ちょっと待ってて」
「どうしたの?」
「私も蘭君と同じところに置いたよ!」
それからしばらくメールは続き、時計はとっくに午前0時を過ぎちゃってました。