お母さん、ありがとう
私はふと夜中に目をさました。部屋は真っ暗で物音もない。今何時だろう・・私は手を伸ばしスマホを探り、電源を入れた。
AM2:00・・あれ?メールが来てる。
蘭君・・ 「理奈ちゃん、まさか北海道に帰っちゃうんじゃないよね?」
昨日お父さんのことをメールしたからだ。蘭君心配してるのかな?どうしよう。こんな時間にメールしても起きてるはずないし、迷惑だよね。
私は、蘭君のメールが気になって仕方なかった!悪いとは思いつつメールを送った。
「お父さんがこっちに会いに来るだけで、私は北海道には帰らないよ!」
ブーブー・・あっ!
「安心しました!」
「蘭君、まだ起きてたの?」
「うん、なんか眠れなくてさ」
「ごめん、返事が遅くなって!」
「うんん、安心したら急に眠くなってきた」
「わかった。明日またメールするね!おやすみ」
「おやすみ」
私はそんなことちっとも考えていなかった!蘭君から聞いて初めて・・。もし、お父さんが北海道に戻って来いって言ったら、私はどうすればいいんだろう。家族がバラバラなんて不自然だ!私もお父さんとお母さんと3人で暮らしたい。でも・・・。
北海道に帰ることになったら、今みたいに蘭君とは会うことが出来なくなる。大好きな蘭君と会えないなんて、今の私には考えられない。蘭君と逢ってまだ2カ月もたってないけど、蘭君は私にとって、大きな大きな存在!・・。
今度は私が眠れなくなっちゃった。お水でも飲むか・・台所に行こうとすると、トイレから出てきたお母さんとバッタリ!
「あら理奈、どうしたの?」
「ちょっと喉が渇いて」
「そう。早く寝なさいよ」
「ねーお母さん!」
「なに?」
「私たち北海道に戻ることになるの?」
「えっ?」
「お父さんが帰ってこいって言ったら・・」
「その可能性もなくはないかな・・でもお父さんは、理奈の気持ちをちゃんと考えてくれてると思う!だからこっちに来て、今後のことを話し合おうって言ってるんだから」
「うん」
「理奈もやっとこっちの生活に慣れてきたところだし、それに好きな人もできて!・・ちゃんとお父さんもわかってるわよ」
「うん・・」
「お母さんもお水飲もうかな!」
「ちょっと電気つけていい?」
「うん」
「さっき蘭君からメールが来てて『北海道に帰っちゃうのか』って」
「そうだったの」
「それでちょっと心配になって・・」
「お母さんもできるだけ協力するわよ!こっちにいられるように」
「お母さん・・」
「だから心配しなくていいよ」
「うん、ありがとう」
「そうだ!来週はもう修学旅行だよね」
「うん!沖縄」
「いいなあー!お母さん、沖縄なんて行ったことないもん」
「だいぶ暖かいらしいよ!」
「そう。楽しんでおいでよ」
「うん」
「こんな風に夜中に起きてると、学生の頃を思い出すなあ・・」
「えっ?」
「お父さんとかお母さんの学生の頃は、インターネットとか携帯とか無かったでしょう。だからよくラジオの深夜放送なんか聴きながら試験勉強をしたものよ」
「ラジオ・・あまり聴かないなあ!」
「それで、流行りの歌だとかおぼえたり、番組宛にハガキを書いてみたりね。それがお母さんたちの青春時代」
「お母さん、それオーバーじゃない!」
「だってそうなんだもん!」
「ラジオが青春時代!?」
「そうよ!」
「フフフツ!時代を感じるね・・」
「仕方ないでしょ!理奈と私では20歳以上も年が違うんだから」
「10年一昔だから、20年だと二昔だね!」
「あーもう、歳のことは言わないで・・さあ寝ましょう」
「うん、おやすみ」
「おやすみ」
15分くらいかなあ・・お母さんと話して少し安心した。このままベッドに入れば、すぐに眠れそうだ!
お母さん、ありがとう。




