お父さんに会える
お母さんが新聞を見てる。あの朝と一緒だ!お父さんのことで何かあったのだろうか?
「お母さん!?」
「理奈、おはよう」
「もしかして、列車事故のことが載ってるの?」
「うん。お父さんの会社が事故の責任を認めたって!」
「そう・・でお父さんはどうなっちゃうの?」
「まだわからないけど、おじいちゃんのこともあるし、最後までその真相を追うと思う。そういう人だもん理奈のお父さんは・・」
「うん」
「ただ、会社の経営がどう傾くかちょっと心配ね」
「お父さん・・」
「大丈夫よ!理奈。お父さんを信じましょう」
「うん」
「・・理奈・・」
「ん?」
「うんん、何でもない・・」
何を言おうとしたの?お母さん。
「理奈、お弁当忘れないでね」
「うん、じゃあ行ってくるね!」
「頑張って」
今日は期末テスト最終日。
蘭君がいつもの場所、いつもの時刻にやって来た。
「おはよう」
「おはよう、蘭君、お弁当持ってきた?」
「ああ、ちゃんとあるよ!」
「今日から部活再開だもんね」
「うん・・そして来週は修学旅行!」
「そうね!」
そして教室へ・・。
すると蘭君の座るはずの席に和久井くんが・・。
「ん?一也、ここは俺の席だけど!」
「ああ、わりいわりい・・」
「お前何見てるんだそれ?」
「パンフレットさ!沖縄のな」
「もしかして、修学旅行の予習とか?」
私はあきれた感じで聞いた。
「ピンポン!さすが理奈ちゃん」
「アホだろうこいつ!」と瞳まで呆れてる。
「来週だぞ!修学旅行は。それに、そんなものどこから持ってきたんだよ?」
「旅行代理店。蘭も見るか?」
「いいよ!とにかくそこをどいてくれ」
「沖縄の青い海と白い波!どこまでも広がる青い空!あー、いいなあー・・」
「和久井!なにやってるの!?」
あっ!横山先生。今日はいつもより早い登場だ。
「うっ!」
「そんなものを学校に持ってきて・・没収します!」
「はい~~」
かわいそうな和久井くん。
「今日は期末テスト最終日です。最後まで気を抜かずベストを尽くすこと!」
「はーい」
「わかった!?和久井、それと蘭」
「はっ?何で俺も」
あーあ、蘭君まで注意されちゃった!
そして3日間の期末テストが終わった。
「蘭たちは部活だろう?」
「ああ!」
「頑張れよ!じゃあな」
「一也のやつ、お前もたまには部活に出ろ!」
「理奈も部活よね!」
「うん」
「じゃあ私も帰ろっと!お弁当もないしね」
「またね!」
「蘭君、お弁当どこで食べる?」
「ここで食べるけど」
「屋上行かない!」
「屋上?」
「今だけ開放してくれてるみたいよ。何人かお弁当を持って行ったみたいだから」
「じゃあ行こうか!」
「うん!」
今日はいい天気で、最高のお弁当日和だもんね!
屋上に行くと、既にお弁当を食べている人たちも。でも、さすがにカップルはいないな!
「この辺でいいかな・・」
「うん」
私たちがお弁当を広げていると、そこに意外な人物が・・。
「一緒にいいかな?」
横山先生だ!
「先生!」
「よいしょっと!いい天気だね」
「先生もお弁当ですか?」
「そうよ!私も部活の顧問だからね」
「テニスだよね!」
「ああ、そうでしたね!」
「二人とも美味しそうなお弁当ね!」
「先生、私前から気になってたんですけど」
「なに?」
「何で先生は蘭君のこと『蘭』って呼び捨てなんですか?」
「そのことか・・蘭が幼稚園の頃からかな、私たち家が隣同士だったのよ。それで、その頃から蘭って呼んでたの」
「そうだったんですか」
「それに、蘭のお母さんとも友達なのよ!」
「なるほど・・」
「それより安藤さん、お父さんとは連絡とれてるの?」
「私は全然・・」
「お母さんは?」
「お母さんも、こっちからは連絡をとってないみたいです」
「そう。早く一緒に住めるようになるといいわね!」
「はい」
「蘭、それまでしっかり安藤さんをガードしなさいよ!」・・先生。
「わかってま~す」
「よろしい!」
そして・・
10億円で事実をもみ消し!
当時の社員2名の殺害!
フラトコフ氏 関与認める!
○○社存続の危機!
翌日の新聞にはそんな文字が一面を埋め尽くしていた。
不意に電話が鳴った!
「俺だ」
「あなた」
「新聞やテレビで大々的にやってるから知ってると思うが・・」
「あなたは無事なの!?」
「ああ、俺は大丈夫だ」
「よかった」
「ここでの俺の役目はどうやら終わったみたいだ」
「じゃあ、お義父さんのことも?」
「ああ!」
「それで、これからどうするの?」
「とりあえず今の会社はやめようと思う」
「うん」
「これからのことは、理奈も交えて話し合いたい。近いうちにそっちに行くよ!」
「わかったわ!」
「じゃあ」
「くれぐれも気を付けてね」
「うん」
「ただいまー!あーくたびれた」
「理奈!お父さんがね、お父さんがこっちに来るって」
「えっ!ホントお母さん」
「うん、今日電話があったのよ!」
「お父さんが・・」
お父さんに会える。私の大好きなお父さんに!
私は自然と涙がこぼれた。
私は蘭君にすぐメールを入れた。
「今度お父さんに会えることになった!」
「ホント!」
「うん、今日お父さんから電話があったって!」
「よかったね!理奈ちゃん」
「うん!」
今夜はお父さんが夢に出てきそうだな・・。