模様替え
沈黙を破って、理奈ちゃんが言った。
「ねー蘭君、蘭君の部屋って私と同じところ?」
「うん、同じ!」
「私の部屋見てみる?」
「えっ!」・・絶対見る!
「いいわよ!入っても・・」
「・・失礼しま~す」
感動の一瞬。女の子の部屋に入るなんてもちろん初めてだ!幼馴染みの瞳の部屋でさえ入ったことはない。
「実は昨日、ちょっと片付けたんだ。掃除機もかけて!」
「ふーん」
「今日はここでテスト勉強しようと思って・・」
「そうだったんだ」
「さすがに4人だと狭すぎるもんね!」
「うん」
机、本棚、ベッド、タンスの位置、カーテンの色、ベッドの上のミッキーとミニー・・俺は一瞬でそれらを頭に叩き込んだ!
「蘭君の部屋ってどんな感じ?例えば机の位置とか、ベッドの位置とか・・」
「机がここでベッドがここ。あと本棚がここで洋服ダンスがここ・・」
「そっか!」
「でもそれも今日までかな!」
「なに?」
「いや、何でもない」
家に帰ったら忙しいぞー・・。
「そろそろお母さんも帰ってくるはずだけどな」
「夕飯の買い物って言ってたね」
「うん」
「じゃあ、俺もそろそろ帰るよ」
「うん。階段まで一緒に行くね!」
「いいよ!寒いから」
「遠慮しない、遠慮しない!」優しい理奈ちゃん。
俺が靴を履いていると、突然玄関のドアが開いた。
「あら蘭君!もう帰るの?」理奈ちゃんのお母さんだ。
「はい。お邪魔しました」
「私、階段まで送ってくるね」
「じゃあ、失礼します」
俺は外階段の扉を開けた。
「じゃあ、また明日」
「うん・・あっ蘭君、後でメールするね」
「うん」
「ただいまー」
「おかえり」
俺は帰るなり自分の部屋に一直線!早速部屋の模様替えに取りかかった。頭の中に叩き込んだ風景を、この部屋で再現させるために・・。
「蘭、なにやってるの?」
「模様替えさ!机とかベッドの位置を替えるんだ」
「なんで?」
「気分転換さ!翼、ちょうどよかった。ベッドのそっちがわを持ち上げてくれ!・・いくぞ『せーの』」
「・・あっそうだ!理奈お姉さんが来てるよ」
「えっ?・・なんで早く言わないんだ」
俺は慌てて玄関に走った。
「あっ蘭君、ごめんね!これ渡すの忘れちゃって」
「ん?」
「プリンアラモード!翼君の分」
「わざわざありがとう・・おい!翼」
「なに?」翼がかけてきた。
「これ!翼にって」
「どうぞ翼くん!」
「ありがとう理奈お姉さん!」
「どういたしまして・・じゃあ、私戻るね」
「うん」
ありがとう理奈ちゃん。
「お母さん、お姉さんにこれもらっちゃった!」
「あら!ちゃんとお礼言った?」
「言ったさ!そうだお母さん、蘭が部屋で変なことやってるよ!」
「変なこと?」
「ベッドの位置を替えるんだって!」
「ん?」
「僕手伝わされちゃった・・」
部屋に戻り、俺は急いで作業を続けた!
「蘭、なにやってるの?」今度は母さんだ。
「見ればわかるだろう!」
「わかるけど・・」
「あっ母さん、机のそっちがわ持って!・・『せーの』・・サンキュー」
「ね!」
「うん、お母さんまで手伝わされちゃったわ!」
ははあ~、蘭のやつ・・。
ふう、これでよしっと!カーテンの色までは無理だよな・・。あとは掃除機をかけてと。
俺は掃除機を取りにリビングに行った。
「蘭、母さんわかっちゃったもんね!」
「ん?・・何が」
「急に部屋の模様替えを始めたわけ」
「ギクッ!」
「理奈ちゃんね!?」バレてる。
「・・関係ないよ、ただの気分転換!」
「そうかなあ~」
「そうです!」
結構ほこりがたまってるな!母さんちゃんと掃除してくれてるのか・・?まあ、俺がやらないといけないんだけどね。
よし、完了!
「ふう、疲れた」
「蘭、終わったの?」
「ああ」
「勉強もそのくらいガンガンやってくれるといいんだけど・・」
そこに父さんが帰ってきた。
翼が早速、俺の部屋の模様替えのことを報告。
「ほー、珍しいことをするなあ!」
「テスト勉強がはかどるように、気分転換しようと思ってね!」
「そうか。もうすぐ期末かあ!」
「うん」
「父さんも、自分の部屋の模様替えするの好きだったな!」
「そうなの?」
「まさに気分転換だ!」
「まあ、蘭の場合は他にあるんだよね~」
「なんだよ母さん・・」
「他に?」
「なにもないよ!それより、早く夕飯にしよう」
「ハイハイ・・あっそうだ!買い物の時、理奈ちゃんのお母さんに会ったわよ」
「えっ!」
「○○スーパーで!」
「そうなんだ・・」
「昨日のお礼を言われたわ」
「ふーん」
俺はあのことを母さんに聞いてみることにした。
「母さん!やっばり知ってるんじゃんか」
「何?」
「昨日俺が言ったことだよ」
「昨日・・?」
「俺と理奈ちゃんの同じものは何かって!」
「あーあ、その事ね」
「教えてよ!ずっと気になってるんだから」
「理奈ちゃんには聞いたの?」
「教えてくれなかった!母さんに聞けばわかるって」
「ふーん」
「教えてってば!」
「昨日、理奈ちゃんとドアの前で会ったときに、母さん言ったのよ『蘭は理奈ちゃんのことが大好きなのよ』って」
「えっ!・・なんでそんなこと言うのさ」
「だってホントのことでしょ!」
「ホントだよね!お母さん」
「それは父さんにもわかるぞ!」
ちぇ!翼も父さんも・・。
「その事が理奈ちゃんと俺が同じってこと・・?」
「蘭、まだわからないのか・・」
「ん?・・えっ!!」答えがわかっちゃった!!
「やっと理解したみたいね!」
「よかったな蘭!」
「お父さん、何がよかったの?」と翼。
「理奈お姉さんも、蘭のことが好きなんだってさ!」
「ああ、知ってるよそんなことぐらい!」
「・・フフフッ・・翼ったら」
「翼は全部お見通しか・・」
そして夜。
ブーブー・・あっ!理奈ちゃんだ。
「今日は4人の勉強会楽しかったね!ね、蘭君のお母さんって何歳なの?」
「もしかして、理奈ちゃんのお母さんからの質問?」
「そう、よくわかったね!」
「俺の母さんも、理奈ちゃんのお母さんの歳を知りたがってたから!理奈ちゃんのお母さんと同い年です」
「同じかあ・・ところで、あのことお母さんに教えてもらったの?」
「一応ね」
「なんか照れ臭いよね!」
「そうだね!」
「じゃあ、おやすみ『ハートマーク』」
「おやすみ『ハートマーク』」
理奈ちゃんを真似して『×2』にしようか迷ったけど、なんか超恥ずかしくて・・出来ませんでした。